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第三章







コツ…コツ…



王宮へ出向くと国王陛下の側近であるカリファー卿が直々に出迎えてくれた。軽い挨拶を交わして国王陛下が待つ部屋へと案内される。
てっきり外でティフォンを待機させると思いきやティフォンも中へと案内され、私の少し後ろについてきている。



「こちらでございます。ベラ第三王女様」


『ありがとう』


「国王陛下、ベラ様が参られました」


中から返事はない。
だが、カリファー卿は静かに扉を開いた。意を決して中へと足を踏み入れる。
中へ一歩足を踏み入れてドレスを指で軽く上げて一礼をする。



『ご挨拶申し上げます母なる国ティア王国の瞬く太陽国王陛下様。瞬く王妃陛下様』


「…三ツ星ベラ第三王女。席へお掛けなさい」


『失礼いたします』


「…あなたが第三王女の執事ね」


「ご挨拶申し上げます母なる国ティア王国の瞬く太陽国王陛下様。瞬く王妃陛下様。クライアン家がティフォンと申します」



先程から王妃ばかりが喋っている。扇子で顔が隠れているために表情が読み取れない上に国王陛下が喋らない限りは国王陛下の方は見れない。大人しく席に腰かけて凛とした表情で王妃の方をみた。



「…見ない間にずいぶんとご立派になって母として嬉しい限りです」


『おふたりおかげです。いつもありがとうございます』


「最近耳にする噂も…何かの間違いであれば良いんですけど」


『…今日はそのことで参りました』


「何か弁明がありますのね」



王妃の鋭い目がこちらに向けられ威圧感に負けそうだった。
まるで蛇がカエルを睨むように虎が兎を狩る時のように。
これからいう言葉をひとつでも間違えてしまえばきっとこの蛇に、虎に狩られて終わってしまうだろう。



『私の使用人は幼少期より、私の邸宅を去りました。私の世話はすべてティフォンに任され今まで不自由なく過ごしておりました』


「…不自由なく?」


『はい、私には使用人がいなくともティフォンだけで十分だったのです。もちろん私につけてくださった家庭教師もマナー講師も先生方も感謝しております』


「…そう、それほど有能なのね彼は」


『私の噂は私の配慮不足でした。王族の名に傷を付けてしまったこと、誠に申し訳ございません。これから挽回する機会を貰えたらと思います』


「…挽回だと?」



ビクッと身体を震わせる。ダメだ、動揺を見せてはいけない。
私の言葉に国王陛下が反応を示した。やはりこの言葉に国王陛下が反応するとティフォンと予測したのは間違いではなかった。
ここにきて初めて国王陛下と目を合わせる。威厳の意味を擬人化したような出で立ちと王妃以上の威圧感。一言発しただけでこの場の空気が一変した。
緊張の糸がピンと張られ首元に刃物を当てられてるかのように身動きが取れなかった。



『はい…噂を立ててしまうくらいに私は嫁ぐにはまだ未熟すぎます。ですが、王族に生まれた身としては国に貢献をしたいと考えております』


「…具体的に述べよ」


『私に、領地をおひとつください』


「っ…何を生意気な口を…!」


「王妃、黙っとれ。続きを聞こう」


『…与えてくださった領地を私が18になるまで…3年で功績を出します。もしこれが成し遂げられたら私にひとつ自由をください』


「…ふん、その自由とやらは聞かんでやろう。成し遂げられなかった場合はどうするつもりだ」


『私を国外へ追放、あるいは対立国との和平の贄として使っていただいて構いません』


「……意味を分かっていっておるのか」


『はい、その覚悟で今日ここへ参りました』


「…そこまで言うなら許可しよう」


『ありがとうございます国王陛下様』


「さて、話はここまでに食事にしよう」



国王陛下がカリファー卿に視線を向けるとカリファー卿が扉を開け待機していた侍従たちが続々と料理を運んできた。
流石は王宮の一流シェフの作る料理は見た目から完璧に作られていた。
正直緊張で食事も喉を通らない上に一流シェフの食事の美味しさもわからなかった。



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