第三章
『ううううぅう~…訳わかんないよ~……』
「お嬢様、一度休憩しましょう。スッキリとする紅茶をお持ちします」
『…ありがとう』
1日目の夜。今までの勉強内容と全く異なる経済学は理解が追いつかなかった。ただでさえ学園で学ぶような知識にも追いつけていない私には到底理解できるものではない。エリザが普通の勉強もしながらこんなことまで勉強してきたことに恐れさえ感じる。
『エリザがこのことを知ったらまーた怒られるんだろうなぁ…』
「ふふ、ご友人様はお嬢様のことを心から心配されています」
『…それはすごく嬉しいんだけどね…』
「お嬢様、紅茶ができました。これを飲んでもう少し頑張りましょう」
ティフォンが私の前に紅茶を出す。それを手に取って一口飲む。
少し渋めの強いフルーツティーがこんがらがった頭の中を少しだけスッキリさせる。
ほっと一息吐いて凝り固まった体を伸ばしてほぐす。
『さて、続きやろっか』
「休憩は大丈夫ですか?」
『紅茶飲みながらでもいい?』
「お嬢様がそれでよろしいなら私は大丈夫ですが…冷めてしまいます…」
『不思議とティフォンの紅茶は冷めてもおいしいのよ?』
「そ、そうですか?」
『誰よりもティフォンの紅茶を飲んでる私が言ってるのよ』
「ふふ、失礼いたしました。」
まだまだベラとティフォンのお勉強は続く。
そして…
とうとう国王陛下との謁見の日になった。
「お嬢様、本日はこちらのドレスはいかがでしょうか?」
『…うわぁ!すごい…こんなドレスあったんだ…』
「ふふ、実はこの日のために元々あったドレスをアレンジしてみたんです」
『え?!ティフォンが?嘘、きれい……私このドレス好き…』
「お嬢様の好みに合ったのならよかったです」
『と、いうか私の好みを完璧に把握したうえでのアレンジだよね』
「お嬢様のためですから」
私の言葉に否定することなく涼しい顔で答えるティフォン。
ティフォンに手伝ってもらってドレスを着る。ティフォンにアレンジされたドレスは私をより引き立て、ティフォンがいかに私のことを理解しているのかが見て取れるくらいに完璧な仕上がりだった。
ドレスに合わせた小物類もティフォンが調達し、王女らしく小さいながらも細かい装飾の精巧さがすごいティアラも乗せてくれた。
『ゎぁ…こんな私、初めて…』
「お嬢様が無事に今回を乗り越えられて…本当に街の経営をできるようになったらその資金でドレスを新調しましょう。私は主様の好みに合わせて選びます」
『ええ、お願い。ティフォンになら安心して任せられる』
「はい、お嬢様。髪型はこちらでどうでしょう」
『うん、ティアラの主張を崩さずにきれいにまとめられてる。やっぱりティフォンってすごいね』
「お嬢様、今日は頑張ってください。応援しております」
『が、頑張る…今日のためにたくさん努力したし、ティフォンに呆れられたくないもの』
互いに顔を合わせて笑いあう。ティフォンとだからこんなにも元気をもらえる。勇気がもらえる。頑張ってみようと思える。
人生に欠けてはならないもの、それがティフォンなのだから。
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