ばいばい
『ん……』
まぶしい光に目が覚める。
いつの間にやら朝を迎えていたらしい。
起き上がると隣から盛大ないびきが聞こえる。この声は海流だ。この状況でよく寝れていたな、と思う。女子2人もぐっすりと眠っている。
ぼんやりする頭で携帯を確認するとまだ朝の7時だった。
大きいあくびをして身体を伸ばす。
昨日の夜のことが頭をよぎったが、寝起きの頭ではあの時の恐怖感は夢であったんじゃないか、と思えてきた。
キッチンで顔を洗ってついでに歯も磨く。ぼーっと鏡に映る自分を見ながら歯ブラシを動かして水を含んで吐き出す。
一通り流し終えて顔を上げる。自分の顔が鏡に映る。
『…ん?うわぁあああ!』
自分の顔を確認すると同時に先ほど鏡に映っていなかったものが映っていた。
それはあの少女がたたずんでいた。驚いて振り返りながら洗面台にくっつく。
寝起きの頭は覚醒して、心臓が破裂するんじゃないかというくらいに脈打ってるのがわかる。少女は変わらずただただ佇んでいる。
「…ァ」
『ま、またお前かよ…』
本当にうわさに聞くレベルの神出鬼没具合に心臓が持ちそうにない。
少女は昨日と同じく危害は加えてこなさそうな様子なのでとりあえず、咳ばらいをして会話を試みる。
いつもの金縛りのような体の硬直はない。何かあれば逃げれそうな状態なので少しは無茶ができそうではある。
『なんか、お前の方から意思疎通はできないのかよ…』
「…ウグ…ァ…アア…」
『声出せないんだろ、文字もかけねーのか。…はぁ、俺の質問に首振るくらいか…』
「…ア…アゥ…」
何が言いたいのかわからない。
質問形式で何かしら首を縦に振らせて何が言いたいのかを絞っていくしかない。
『えーと…お前は俺に恨みがあんのか?』
少女が首を横に振る。
『俺の周りのやつらに恨みがあんのか?』
少女は首を横に振る。
『俺になにかしてほしいとか?』
少女は首を縦に振った。
『いや、なんで俺なんだよ……。えーと、遊んでほしいんか?』
少女は首を横に振った。
『何か買ってほしいとか』
少女は首を横に振った。
『どこかに連れてってほしいとか?』
少女が首を縦に振った。
『…?連れてってほしい…?それこそなんで俺になんだよ…』
「ァグ……」
遊馬が悩んでいると突然また少女が苦しみだしてあっという間にとけて消えてしまった。
時間制限でもあるのかというくらいに唐突に。
少女が消えたことに驚きつつも、少女の求むものがなんなのかがさっぱりわからなかった。
本当にどこの誰かもわからない少女がなぜ俺の前に現れ、俺にしか見えず、俺に求めてくるのか。何もわからない。
緊張の糸が切れてソファに腰かける。
朝からどっと疲れた。
「ふぁああ~…あれここどこ…」
『俺ん家だよ』
「ああ~そっか遊馬の家に泊ったんだっけ…」
桜子が目覚めたのか起き上がる。隣でまだ寝ている繭を起こしてぐいーっと伸びをしている。
起こされた繭はまだ眠たそうに目をこすって起き上がろうとはしない。
海流を蹴り起こして冷蔵庫の残りで適当に朝食を出す。
3人がご飯を食べている間に昨日の夜、そして先ほどあったことを話した。
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