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大悪魔を召喚するはずだったのに!!







『アル、あれなん…』



バンッ



私が不思議に思って指を差した瞬間に周りに大きな音が響いた。
その直後、直感で分かった。これは銃声で先程の光はスコープが陽の光に反射した光。
反射的にアルカードの方を振り返ると肩に銃弾が当たったらしく血が流れていた。



『アル……!』


「これはこれは身の程知らずもいたものですね」




アルカードが笑って片手を私から離して銃弾が飛んできたほうに手のひらを向けた。数秒が経過してその方角からここからでも聞こえるくらいの断末魔が聞こえてきた。何人も、何人も。
私が恐る恐るそちらの方を見ようとしたとき、アルカードは離していた手を私の頭に乗せて自分の方へと引き寄せた。
だが、少しだけ見えた。緑に茂った草木の中に似つかわしくない赤いものが。
きっとアルカードがここから相手に反撃をしたのだろう。
改めて、アルカードが人間じゃないことを再認識させられた。




「お気を悪くされたなら申し訳ありません。お怪我はないですか?」


『そ、それよりもアルが…!』



肩に触れようとする私の手をアルカードが止める。
痛そうな素振りもなく、笑顔でこちらを見つめるアルカードに何も言えなくなって傷口を見る。
血は赤色なんだ、とか銃という物理的な物でも怪我をするんだ、とか非現実的なものを現実のものかのように考えてしまう。
不安そうにする私の頭を優しく撫でて口を開いた。



「お嬢さんが私にくださった血液があるのでこれくらいすぐに塞がりますよ。ご心配には及びません。……おそらく吸血鬼や魔族を狩っているハンターに見つかってしまったようですね」




ヴァンパイアハンター、どこかの書物で見た気がする。先祖代々受け継いで人間に脅威をもたらす吸血鬼を主に狩りをしている種族。各地を回って吸血鬼の情報があるところで活動をしていると記されていた記憶がある。
いつまでも不安そうな顔をする私の頭を撫で続けてあやすようにそう言ったアルカード。
ふたりは近くの木々が茂った森の近くへと降下した。





『わあ、あそこのキラキラしている湖はなにかしら』


「あそこは精霊の湖です。普通の人間ではたどり着けない聖域みたいなものです」


『聖域……。湖だけ七色のように見えるわ……とても綺麗…人が立ち入らないのならあそこで少し休みましょう』





距離が近くなるにつれて湖はその姿を変えていく。
キラキラ光っていたものが、オーロラのように幻想的に、そして鏡のように世界を映す。
ずっと見ていても飽きないと言えるような美しい湖だった。
聖域と言われるだけはある。




『私もアルも聖域に入っても大丈夫なの?』



「私は魔族とはまた違うものなので入れますよ。精霊達は歓迎しませんけど。人間に対しては友好的なので気に入られればきっと姿を見せてくれますよ」



『アルは…多分みんなが思ってる悪い吸血鬼ではないと思うわ』




そう言って微笑む私をアルカードは湖の近くに降ろすと一目散に湖へと駆け寄った。
すごいすごいとはしゃぐ私は湖のふちに腰を下ろしてその光り輝く水面を見つめる。
ゆらゆらたゆたう水面は何にも縛られない自由を表しているようでなんだか見ていて安心する。
手をそっと湖へ入れる。冷たくて気持ちがいい。少しだけすくって見ると透き通って自分の手が見えるくらいに綺麗で澄んだ水だった。
すくった水を口に近づけて一口飲む。
今まで飲んできた水とは比べ物にならないくらい口当たりも味も良かった。



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