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大悪魔を召喚するはずだったのに!!







しばらく景色を眺めていると、アルカードがゆっくりとまだ移動し始めた。
ゆるゆると遠くの景色が変わっていくのをぼんやりと眺める。
アルカードが口を開く。




「…ちなみにお嬢さんはこれからどうするつもりですか?」


『そうね…いろんなところを行ってみたいわ。貴族の令嬢だった私はろくに屋敷から出たことなかったし、これを機にアルといろんなところに行ってみたいかな』


「おぉ、恐れ多くもこのアルカード、お嬢さんにご一緒させていただきましょう。マドモアゼル?」


『あら私バカにされているのかしら?』


「ははっ、さすがのお嬢さんにもわかってしまいましたか!」


『今すぐそのフードを引きちぎって差し上げましょうか』



「クスクス…見えますか?先程の場所がお嬢さんの住んでいたウィラー王国です。今見えるのが隣国のサーン王国。右下に見えるのがカミス王国。この3ヶ国はお嬢さんでも知っていますよね」




丁寧に説明をしてくれるアルカード。所々に毒が感じられるのは吸血鬼特有なのだと言い聞かせて説明どおりに景色を見下ろしていた。
吸血鬼に人間の感性も情報も興味ないはずなのにやけにこの世界のことを知っていることに少しだけ不思議に思っていたが今アルカードに聞く気は起こらなかった。




『えぇ、知っているわよ。貴族の令嬢には教養っていうものがあるんですもの。でもね、教養でも知らないものを私は知りたいわ。アル、人間では行けないようなところへは行けないかしら?』



「そんなところに行ったらすぐにお嬢さんは灰になりますよ」



『どんなところに私を連れていくつもりなのよ……』




景色を見るのにも少し酔ってきたところでアルカードを眺めることにした。人間の頃には関わりを持つことはなかった吸血鬼。昼間にも活動ができるんだなぁ、とか人間みたいだなぁとか簡素な感想しか出てこなかった。
視線を感じたのかアルカードもこっちを見て不思議そうにしていたが優しく微笑んだ。
フードをしていても金色の瞳が陽の光を反射してとても綺麗にキラキラ輝いていた。今まで見てきた宝石なんかよりもその瞳は美しく、惹き付けられる魅力があった。





『アルは…とても綺麗ね』


「なんです?急に照れてしまいます」


『全然そんなふうに見えないけど』


「お嬢さんの方が…眩しくて私には直視ができません」


『何度も目を合わせてるじゃない』


「ふふ、バレましたか」




クスクス笑うアルカードを不機嫌そうに見てはまた景色へと目線を移した。
すると視線の先で何かがキラリと光った。
光るものが多いな、とそちらに視線を向ける。




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