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大悪魔を召喚するはずだったのに!!








必死に走り続けていたら、崖下の見えづらいところに洞穴があった。
ライカくらいの小柄な女の子じゃなければ通りづらいこの穴ならしばらくはしのげるかもしれない。穴の周りは草木で覆われていて近づかなければこの穴に気づくこともない。
早速這いずって潜り込む。とりあえずは朝までここで過ごして今後のことも考える時間も休む時間が必要だった。
洞窟の中は入口と違って中は広い空洞だった。
カバンの中から小さなランタンを取り出す。一緒に持ってきていたマッチに火をつけて明かりを灯す。カバンで入り口を塞いで明かりがもれないようにした。




『私は、しんでしまうのよね…』



膝を抱えて座り込んでランタンを見つめる。
これから自分の身に起こることを考えながらやはりこのまま生きていくことは無理だと悟り、最期に自分は何をしたいのか考える。
仕方がなかった。ライカの心はこれ以上の絶望はしたくなかった。
替えのドレスを持ってきたかったが断念をすることになった厚手のブランケットを羽織って寒さから耐えた。こうしてみるとドレスを断念してよかったと思う。




『うん、わかったわ』



自分の中での考えがまとまった。立ち上がって拳を握った。爪が食い込む。
どうせ終わってしまうこの命。欲を満たしてとしても未練を残るだろう。生きているときにはできなかったことをした方が有意義かもしれない。
と、言うことでキョロキョロとあたりを見回した。
カバンの小さなポケットに入っていた鏡を軽く割る。破片が大きく割れ、そのひとつを手に取る。




『私、悪魔を召喚するわ!』



決意をして、破片で手のひらを切った。
切ったところから血が溢れてくる。その血を昔に読んだ悪魔召喚の本の記憶を頼りに魔法陣を描くことにした。
本来ならばそのような本は読むことはおろか所持することも禁じられていた。なぜその本が家の地下室にあったのかは反皇帝を疑われた家族の姿を見て納得した部分はある。今となってはその理由を両親へは聞けなくなってしまったが。
ゆっくりゆっくりと、滴る血で描いていく。
大きく描かなくてはならない為、かなりの時間を使う上に大量の血が必要になる。何度も何度も手のひらや指を切っては徐々に魔法陣を描いていく。
何度も何度も切った両手がボロボロになったが、朝を迎えた頃にようやく書き上げられる目処がたった。
あとは、1本線を書き足せば完成のはず。
ここまでして失敗したらそれはそれでわたしの人生なのだろう。大人しくクマか何かの食料になるしかない。



『さぁ、私でどれほどの悪魔が呼べるかしら』






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