大悪魔を召喚するはずだったのに!!
事の始まりは、朝。
けたたましい音とともに悲鳴や叫び声で起きた。
寝間着から着替えもせずに部屋を飛び出ると槍や剣を持った兵士たちが私を取り囲んだ。
突然の出来事に何をすることもできずにそのギラリと光る刃物たちを向けられながら無理矢理連行された。
いつもはのんびりと歩いている廊下を鋭く光る武器たちによって緊張しながら歩く。
応接室に運ばれると地面に突っ伏して倒れる両親の姿が見えた。
慌てて駆け寄ろうとすると兵士に腕を力づくで掴まれて両親を見下ろすようにソファに座る男の前に跪くように押さえつけられた。
『おと、うさま…おかあ、さま……』
「ふん、貴様がライカ・ウィンターソンか。貴様の両親は反皇帝派として悪事の助長をした。よって処刑対象となり連行をする」
『そんな…!!』
兵士に頭を掴まれると無理やり立たされ顔を苦痛に歪ませながら父親が運ばれていく。反抗をしたのか身体には血が出ている箇所があり、歩くたびに床に血痕がついた。
その後に続くように気絶した母親が引きずられるように部屋の外へと連行されて行った。
言葉を失う娘に声をかけることも目を合わせることもなく兵士の怒声と傷の痛みに呻く声が部屋の外から聞こえた。
取り残された私とリーダーらしき男。
状況が飲み込めず固まる私をよそに立ち上がってそのまま部屋を出ようとする。
部屋を出るときに初めて歩みを止めてこちらを見た。
「ライカ・ウィンターソン。貴様は国から追放する。死にたくなくば今夜中に国から出ることだな。家のものは持ち出すなよ。差し押さえのものだからな。じゃ、せいぜい頑張ることだな」
バタンと残酷に扉は閉まった。
そこからは覚えていない。多分、たくさん泣いて、現実に戻って売れそうなものと必需品を持って家を出たんだと思う。
頭が空っぽでどこを目指して歩いていたのかもわからない。
ただ、気付いたら夜になっていて、街を歩いていたところを兵士に見つかって追いかけられたんだと思う。
必死に走って見つかりにくそうな森へ入って、道なき道をドレスとヒールで走り続けて、冒頭に至った。
『もう、わけわかんない…』
私はライカ・ウィンターソン。
母国ウィラー王国で貴族の両親の元、一人娘として生まれた。
容姿端麗な母親と頭脳明晰な父の良いところだけを引き継いで生まれたためそれはそれは愛情深く育てられた。
毎日が幸せで欲しいもの全てを与えてもらい、友達にも恵まれた。欠点も後悔も何もないそんな充実した日々だった。
はずなのにその日常が1日にして崩れ去った。こんなにも人の日常は変わるものなんだと受け入れるには難しかった。
父親と母親が反皇帝派だったなんて夢にも思わなかった。
『……ぁ。』
.