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大悪魔を召喚するはずだったのに!!


ーそして現在に戻る








「今更…こんな、死体を見て……魂が死を受け入れたんですね…」



『ぐす…ずび……』



「お嬢さんは本当に…愚かな人間ですよ……」




泣きじゃくる私の手をアルカードが握る。
ぐしゃぐしゃになった顔でアルカードを見ると綺麗な顔から一筋の涙が伝った。
何かを伝えたそうに、何かを訴えるように、その瞳には力強さが感じられる。だが、すぐにでも壊れてしまいそうなその儚い瞳。
その瞳に見つめられているとアルカードが消えてしまいそうで目を反らす。
すると、視線の先のアルカードに握られている私の手に違和感を感じた。
先程までいつも見ていた自分の手であったはずなのにその指先はあらぬ方向に折れ曲がり、白い手は赤く腫れ所々がどす黒く変色していた。

まるで、先程見た自分の死体のように。



『……ひっ?!』


咄嗟に手を引っ込める。
アルカードから隠すように自分の手を包み込んで身体を丸めた。
死を自覚した自分の姿が死体の姿になっている。
だとしたら、私の身体は見るも耐えない姿になっているだろう。



『見ないで……!』


「お嬢さん…」


『お願い…見ないで…見ないで…見ないで……』




アルカードにこんな醜い姿を見られたくなくて必死に隠す。どこもかしこもボロボロな身体は今にもバラバラになりそうなのに。
涙が止まらない私の頭にアルカードは手を乗せて以前と変わらずに優しく撫でる。今ではその優しさをもつらい。




『……私、もっとアルと一緒にいたいよ………』



「……」



『今までも…幸せな人生だったけど…アルカードと見た世界はもっともっと楽しかったんだよ…』



「私もですよお嬢さん」



『人間って…ほんとに弱いんだね…』



「…だからこそ良いって言っていたじゃないですか」


『……へへ…死んでからそれが嫌だなんて……』




ふわっと身体が浮く。浮いた身体はアルカードの腕へと乗せられ顔が近くなる。バッと手で覆い隠そうとするが折れた腕はもはや言うことを聞かなかった。
死の自覚。
アルカードを見る。アルカードもこちらを見ていた。




「ライカ、貴方がこの世界からいなくなろうと魂はまた生まれ変わります。私ならそれを見つけられる。見つけてみせます」



『……』



「虫とかだったらどうします?」



『良い雰囲気をぶち壊さないでよ…もう』



「ふふ、でも本当ですよ。何年、何百年先になるかわかりませんが、私はライカを見つけてみせます」



『…ありがとう』



「では、その時まで……おやすみライカ」



『…大好きよアル』




それだけ言い残してライカは腕の中から消えた。
虚無感に包まれるアルカードだが、ライカの死体を動物などに掘り返されないよう深くに埋めて自分の世界へと帰った。
自分の中ではこの退屈な世界のおもちゃの1つでしかなかった人間だが、この日をもって改革していく。




「我が眷属たちよ。この時をもって我が吸血鬼は人間との共存の道を歩むこととする!人間は定期的に規定量の血液を我々に提供すること。我々はウィラー王国の治安を守ることから始める!意義があるものは我が話を聞こう」




生まれ変わったライカを迎えるためにも何十年、何百年と歳を重ねよう。人間との新しい道を教えてくれたライカという希望を持って生きていく。



だからまた召喚でもなんでもしてくれライカ。必ず迎えに行くから。




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