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大悪魔を召喚するはずだったのに!!







湖にはしゃぐライカの姿を見ながら銀をぶち込まれた肩を治療する。
銀を取り除くのは面倒くさかったが、今更こんなものに苦戦することはなかった。前に襲われた処女が抵抗して口の中に銀のスプーンを突っ込んできたときのほうが治療に手こずったな。
そんなことを考えていると急に膝を枕代わりにするとか言い出し仕方なく魂でしかない人間の足に頭を乗せた。
こんなにも人間味が溢れているのにただの魂だなんて信じられなかった。



「お嬢さんは、もう、死んでしまっているんです」




自分に言い聞かせるように話す。なぜか肩なんかよりも胸がとても痛くなった。当人でも人間でもない自分がこんなにも苦しくなるのかがわからなかった。
やはりライカにはこの言葉は届かなかった。







ライカが寝息を立て始めたとき、起き上がって眷属のコウモリを呼んだ。
まだ日が出ているからフラフラと辛そうに飛んでくるコウモリを鷲掴んだ。
ふぅ、とコウモリに息を吹きかける。



「……くぁぁ、なんですか君主様…まだ寝ている時間ですよ…」



『今すぐこの女の遺体に結界を張ってこい』



「この女って………人間じゃあないですか」



『この女は俺の玩具だ。いいからとっとと働け』



「……はぁぁ…早く仕事を終わらせに帰ってきてくださいねぇ」





コウモリを通して駒に指示を出す。
こんなことをしている自分自身を疑う。何にこんなにも情を奪われたのかが皆目検討もつかないがなぜか、寝顔を見て抱き寄せている自分がいた。
隣で無防備にしているのがとても愛らしくも思えた。
ずっと一緒にいられないのは分かっているのにずっと一緒にいたいとも思える。
この胸の鼓動もきっとライカだからこそ。

だからこそ俺はこれからライカを殺すしかない。

人間の世界に天国というものが本当にあるのならそこでライカは幸せになるべきだと思ってしまえた。




「何人も……人間は殺してきてんのになぁ………」



自分の手を見て血に染まった手を思い出す。
今まで望むものはなんでも手に入れられた。
はずなのに、本当に望むものは手に入らないなんて考えたこともなかった。
ぐっと拳を握りしめて覚悟を決めたところでライカがもぞもぞと動き出した。
眠そうにしているライカをみつめて抱きしめたい衝動を抑える。
だがやはり吸血鬼として我慢は似合わない。やはり抱きしめよう。






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