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大悪魔を召喚するはずだったのに!!







私の返事を聞いてアルカードは前と同じように抱きかかえて飛んだ。
また空中の旅が始まったが行きとは違って風を切るくらいのスピードで飛んでいる。
私に配慮しているのかマントに包まれており風はそんなに気にならない上に、密着するほど抱きしめられていて景色はおろかアルカードの顔も見づらい。
アルカードは前を向いたまま口を開く。





「お嬢さんは………生きていて楽しかったですか」



『…?…今はこんなことになってしまっているけれど、楽しいと思うわ』



「…どうして逃げ切る選択肢もあったのに私なんかと一緒にいるなどと考えたんですか」



『………なんででしょうね、どんな選択肢をしたって辛い運命しかない気がしたんだと思うわ』



「お嬢さんはーーーーーー」



『…アル?ごめんなんて言った?』



「…………」



『アル?』



「お嬢さん、私が殺して差し上げましょうか?」



『……な、なんで』





思わぬアルカードからの一言に身体が強張る。
最初の頃のような殺気は感じられないが、何も抵抗ができない状況や人間などアリを踏むかのように殺せる吸血鬼を目の前にしている恐怖心が湧き出た。
今まで優しく微笑んで共に時間を過ごしていたが相手は所詮、吸血鬼だったのだろうか。




『酷いわ…アルのおかげで私、昨日のことなんて忘れるくらい…』



「……」



『……契約者の意思に背くなんて許されないわ』




ハッと悪魔との契約について書かれた書物のことを思い出した。あの書物には契約者同士での違反行為があったときの代償についても書いてあったはず。
確か、確かあの項目にはこう書いてあった。




『"もし契約に背くことがあればその者が魔族の場合永久に封印される"』



「悪魔召喚の書物ですか」



『あなたは…魔族ではない…けれど、契約したからには何か代償はあるはずよ…!』




そう言うと同時に最初に出会ったあの森の中に着地をした。
着地したことに気付いた私はドンッとアルカードの胸元を押してよろめきながら離れた。
なぜか涙が溢れた。
ポロポロと溢れて止まらない。




『嫌よ…やめて……私はもう何も失いたくないの…』






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