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君の名前をもう一度。






ペンを手に取り、作文用紙にペンを走らせる。





あれから10年の月日が経ちました。
大輝くんの高校最後の文化祭は梨子の弔いも兼ねてたくさんの思い出写真を飾った様々なレクリエーションが催し物となっていました。
文化祭をやり終えた後はクラスのみんなで黙祷をして、梨子の最高の笑顔の写真を卒業までクラスに飾ってくれていたそうです。
大輝くんも高校を卒業後、サラリーマンとして働き、今では出世をして大きい仕事を任せられる期待のエースとなっています。
社内で女の子に人気があるそうですが、私との結婚指輪を常に付けてくれていて、帰宅が仕事以外で遅くなることはそうそうありません。
大輝くんが働き始めて3年が経った私の誕生日に大輝くんがプロポーズをしてくれました。
働き始めてからお金を貯金して私のことを想って指輪を選び、過去最高に幸せな1日だったと思います。
梨子の誕生日の日に大輝くんがプランニングしてくれた挙式場で愛を誓いました。小規模でほとんど身内しか呼ばない小さな結婚式でしたがそれでも私たちの笑顔は絶えませんでした。
お母さんもお仕事を続けて発作を起こすことも減り、大輝くんのお母さんとたまに一緒に出掛けるようになり、どんどん快復しています。
大輝くんのご両親とも仲良くしています。いろいろとお世話になることがあり感謝しきれません。
そして、結婚してから2年が経ったとき。



「お母しゃん!おとーしゃんかえってきちゃう!」


『ん、ごめんね。いそごっか』



大輝くんとの子供が生まれました。可愛い女の子です。
どこか小さい頃の梨子に似ている素直なしっかり者の子供に「梨笑(りえ)」と名付けました。私達ふたりが大好きだった女の子の笑顔のようにみんなから愛されますように、と意味を込めました。


ペンをそっと置く。
あの頃を忘れないために。あの子は確かにこの世界に存在していて私の記憶の中に残っていて、人生を支えてくれた。
それを残すために、私はこの人生を本として記すことにしました。

幸せだった。
不幸だった。
辛かった。
死にたくなった。
涙が止まらなかった。
けれど、立ち止まらずに乗り越えられた。
最愛の人がいつも手を引いてくれたから。

そんな私の人生を、知ってもらいたいです。
この本を手に取っていただいて、ここまで読んでくださってありがとうございました。
あなたの人生に、大切な人はいますか?
その大切な人を、傷つけてはいませんか?
明日、その大切な人を失った時、後悔しませんか?




「璃子!梨笑!ただいま!」


「おとーしゃん!おかえり!ご飯にしゅる?おふろにしゅる?それとも梨笑にしゅる?」


「こらこらどこでそんな言葉を覚えたんだ、んー梨笑ちゃんにしようかなぁあ」



玄関に大輝くんを出迎えに行った梨笑を抱っこしてリビングへと入ってきた大輝くん。私と目が合うと幸せそうにいつも見てくれる。

その視線をいつまでも私も見つめ返していたい。


そう思うんです。






FIN.
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