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吊り橋効果?








ふぅ、と息を吐いて最初の時のようにまずは部屋全体を把握することにした。
四分割してみると、一角にはいかにも仕掛けを解かないと開かなさそうな機械のようなもの。
もう一角には黒電話?その上には男が映っていたモニターもある。今はルール説明が表示されている。
もう一角はコインロッカーがいくつか並んでいて、
そして今自分が立っているこの一角には入ってきた扉と小さな棚。上には小さな可愛らしい装飾の箱が置かれている。



「…とりあえず、一通り見てみるか…」



手近な箱に手を伸ばす。持ち上げようと掴むもその箱は棚から離れなかった。
がっちりと棚にくっつけられてる。
どうやら他の謎を解いてからでないとこの箱には用事が無さそうだ。



「…次行くか」



扉に目をやるもどうせ開きやしない。
諦めて他の一角に目を向ける。
次はコインロッカーの方に歩み寄る。更衣室などで見るようなタイプの細長のロッカー。
女子の中でも身長が高いタイプの自分よりも少しだけ高い。
1、2、3……全部で7つほど並んでいる。
左から順に開けてみる。
1つ目はすんなりと開いた。中は空っぽだ。
2つ目も開いた。中はまた空。
3つ目に手をかける。



「…?!」



ガチャ、と開いたかと思ったら扉の方から重みを感じた。
ずるりと扉の隙間から中身が溢れるように出てきた。
それは、自分の肌によく似た色。むしろ肌。
中からは人間がでてきた。
ロッカーから出てきたそれは重力に逆らわずに地面に転がり動くことは無かった。



「え…え…?ほ、本物…?」


じり、と一歩二歩と下がる。
目を背けたくてもなぜか反らせない。初めて見る死体にどうすることもできない。



「……ど、どうしよう」



本当は触れたくもない。見たくもない。
けど、この状況ではこの死体にヒントが隠されていてもおかしくはない。そんなサイコパスなことを愉快犯ができないわけがない。
下げた足を前に出す。
いきなりグワッと起き上がるホラー展開を映し出す脳を振ってかき消す。
怖い。
無意識に全身がガクガクと震えだす。
手を伸ばせば届く距離まで近づいた。おそるおそる手を伸ばす。
長い髪の毛がいたるところに絡みついてより一層恐怖演出になっている。
バクバクバクと心臓がうるさく鳴り響く。
今すぐ逃げ出したい。



「……?」



近づいたことで違和感に気づいた。
髪の隙間から見える肌。恐怖心よりもこの違和感を確認したい気持ちが勝って手を伸ばして髪をはらう。
視界に映る自分の手が震えてこんな些細な動作でももたつく。



「………つ、作り物か……」



はらわれた髪から覗く顔は、人間味を感じない。
ふああ、と安堵の息を吐いて体中から力が抜ける。
怖かった。本当に怖かった。
安堵しても染みついた恐怖に手の震えも鳴り響く鼓動も止まらない。
この恐怖感こそが非現実的なことが起きてるんだと思い知らせてくる。



「はぁぁ…本当に、もう、限界…」



泣きそうになるのを堪えながらももう一度、その人形に手を伸ばす。
あんなに怖かったのに、この人形にも何か意味があるのでは、と思ってしまう自分にさえ怖いと思う。
伸ばした手でもう少し丁寧に髪をはらってみる。
首元まで露わになった人形と目が合う。




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