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吊り橋効果?






どれほどの時間が経ったかは時計がないのでわからないが、天井を見ながらパズルをした結果、なんとか完成させることができた。
天井の模様と絵柄を確認しながらスライドパズルも同時に解くというのがなかなか苦戦した。



「…あとは最後のこれをはめて……」



最後のピースを正方形の右下にスライドさせる。
すると、カチッと今まで鳴らなかった音が同時に聞こえた。
試しにパズルがあった台を持ち上げてみると箱のようにそれは持ち上げられた。
開け放って中を確認すると中にはまた正方形の枠組みと様々な形のブロックがあった。
ポケットに突っ込んでいたものを取り出す。
それは私が持っていたブロックとよく似ている。



「…”ブロックを使って正方形を綺麗に埋めてみろ”」



箱の蓋部分のところにそんな張り紙があった。
つまりこの正方形の枠組みのなかに複数個のブロックを使って正方形を作る、と。
ここにきて犯人側からの初めての存在に接触したけれど、愉快犯の可能性も出てきた。
今この私の状況のどこかから見ているのだろうか…。部屋を見渡した感じ監視カメラのようなものはなくて少し安心していたのに。



「…はぁ、とりあえずこれをどうにかしよう」



先程のパズルでも集中力と気力を持っていかれたのにもう一度頑張らないといけないのに少しだけ気が滅入る。ゲームをしていたときも休憩をはさみながらしていたのに。
この状況では犯人側から何をされるかわからないから早く脱出しないといけない。
とりあえずはめられそうなブロックをひとつひとつはめていく。
棚の中に入っていたブロックは普通の四角形のものだったのに箱の中にはいっているブロックは複雑な形のものが多かった。
一度ではやはりそう上手くはできなかった。
全部取り出して最初からはめ始める。
その作業の繰り返し…………。














「で………できた……」


カチッ
震える手で最後のブロックをはめると、音がなった。
おそるおそる蓋をあける。
すると、鍵が入っていた。
鍵を開ける場所は1か所。乱暴に鍵を握ってその場所へと走る。
棚の中段、鍵穴にねじこむように差し込んで回す。



ガララ


意気込みと反してすんなりと鍵は開けられ、片方の扉を横に引くと中には紙切れが入っていた。
2つ折りにされているのを手に取って中を見る。



「"これから地獄を見るのとここで死んで天国へいけることをいのるか?"」



ここにきて脅しなのかなんなのか。
ヒントですらないその紙を放り投げて反対側の扉を開く。
が、しかしそちらの方は空っぽだった。



「は………?え、これだけ?南京錠のナンバーは?」



奥までくまなく探してもなにもない。
あるのは捨てた紙のみ。
なら、これがヒント?
もう一度紙を拾い上げる。たった一行の文章のみ。
じーっと文章を右へ左へ見ながら考える。



「……なんで"祈る"がひらがななんだろ。地獄は漢字で書いてるのに。書けなかったのかな」



ふと感じた疑問。
何の変哲もないただの疑問。とりあえず思いつくのはそれくらい。
文章の意味も意図もわからない。



「……南京錠の数字……数字?」



ピン、と何かがひらめいた感覚。
文章をもう一度見返す。



「"地獄"って"459"……つまり数字にも置き換えられる…ってことは…"天国"も"1059"……数字にできる…!ただ…4桁の数字だから…1059の方かな…」



南京錠付きの箱のところへ行って試しにくるくると数字を合わせてみる。
数字を合わせて引っ張っても南京錠は動かなかった。
さすがにそんな安易じゃないか。



「……数字を全部足すとかかな…1518…………っだめだ、開かない」



うーん、と考える。
縋るようにもう一度紙切れを見る。
じーっとそれを見つめながら頭をフル回転させる。



「天国…地獄………いのるはひらがな……でも"見"るも"死"も漢字だわ…みる……3る……?ってことは"死"も4になる……」



ふらりと南京錠の方に近づいて手に取る。
カチカチカチ……と並び替える。



「15……2…5………」


パチ



「あ、開いた……」



南京錠が外れた。
半ば捨てるように南京錠を放り投げて箱を開く。
重い蓋を開けるのに苦労しながら開け放つと中を確認した。



「か…カードキーだ…!」


馬鹿でかい箱にも関わらずカードキーが1枚置いてあるだけだった。カードキーを手に取って思わず観察する。至って普通のカードキー。
ともかくこれでこの部屋から出ることができる。
ここから出た先が外であることを祈りながらドアの前に移動する。
ドアの横にあるカードキーをかざす機械。
ごくりと生唾を飲んでからかざす。



ピッ


ピー



2回の電子音のあとにガチャ、と鍵が開いた音がした。ノブに手をかけて扉を開く。
待ち焦がれた外の世界。
ではなく、長い廊下がそこには広がっていた。
落胆しながら部屋の外に犯人がいることも警戒しながら廊下を進む。
自然と心拍数が上がる。静かな廊下に心臓の音がうるさく響いている感覚。



「ここはどこなのよ……」



壁伝いに少しずつ廊下を進むとようやくこの廊下の終わりが見えてきた。
終わりが見えたことに足が早くなる。行き着いた先にはまた扉があった。
今度はカードキーなどはなく普通の扉。鍵も見当たらない。
震える手でノブに手をかけるとなんの抵抗もなくノブは動き、扉が開かれた。
ゆっくりと扉を押し開けて中を慎重に確認すると、先程と同じような部屋が見えた。



「……何この部屋…」



見渡しながら部屋の中に入ると、閉じられた扉からガチャリ、と嫌な音が聞こえた。
反射的に振り返ってもう一度扉のノブに手をかける。



「は?!え、うそ?!開け…!開いてよ…!」



自動ロックには見えなかったのに扉はビクともしなかった。動かないのがわかっているのに何度も何度ものガチャガチャと開けようとするも変わらず。
舌打ちをしながら改めて部屋の中を見る。
また謎解きがありそうな棚や箱。今回はモニターがあるのが気になる。
あとは、壁の一部にある上下の階に移動するであろうリフト。



「…また脱出ゲーム…?」



ため息を吐くようにそう言って眉をしかめる。
恐怖よりも怒りの方がこみ上げてきて髪をガシガシと掻きむしる。
すると、薄暗かった部屋に光がともった。



「今度はなにさ…」



光の方に目を向けるとモニターが点いている。
真っ白な画面に顔をしかめると一瞬にして暗い画面に変わった。部屋がまた少し暗くなる。



―やぁっとお目覚めかい?23番の子猫ちゃん?



突然の第三者の声にビクッと身体が震えて周りを見渡す。
どこかから声がするものも、その声は肉声というよりは機械を通したような声だった。
こちらを見られている。
その事実にまた恐怖が募る。思わず言い返す。



「だ、誰?!もうお遊びは十分でしょう?!家に帰して!!!」



―お遊びは十分?っははは!笑わせないでよまったく。むしろこれからが楽しいってのに



「はあ?もうこっちは十分よ。楽しませてもらったわ。ってかあんた誰よ」



―あんまり偉そうな態度してると…ここに閉じこめることもできるんだからな?



最初の楽観的な声色と打って変わってドスのきいた脅しに思わず言葉を飲み込む。
私が大人しくなったことに一息笑ってまた声の調子が戻った。




―はははは!!それでいい!物分かりが良い女は俺みたいな男におもちゃのように使われるのがお似合いだぜ





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