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KYO

ifです。
最終回後、おまけ漫画前。
もし、あのおまけ漫画前に一回真田組がゆやの茶屋に来て狂と遭遇していたら…というか、書きたいとこだけ好き勝手書いた感じなんで笑って許せる方向けです。(笑)





「帰ってきたんだろ?」
 ゆや姉ちゃんの所に、とサスケは幸村に声を掛けた。
 壬生京四郎も会ったらしい。こういう噂は回りが早いし、みんなそれぞれに情報通なので、サスケの耳に入った時点で、かつての仲間たちのほとんどは知っていそうだ。

「会いたいね」
「でも幸村、お前もう会えないかもって言ってたじゃねーか」
「ゆやさんの所で、運が良ければ会えるかもしれないよ」
「運かよ」
 幸村が運なんて言うとは思わなかった。

「お土産たくさん持って行ってみようか♪」
「そうだな」
 また熊鍋もしてーな、と言うと、幸村が嬉しそうに笑った。

「聞いてみたいこともある」
「サスケが狂さんに? へぇ? どんなこと?」
「この3年間でゆや姉ちゃんに恋人が出来てたら、諦めたのかよって」
 朔夜には京四郎が始めからいた。だからかどうかは分からないが、本人に伝えたり伝わるような行動はしていないようだった。

「そっか。サスケは紫微垣を通して京四郎さんの記憶をみてるんだったね」
 幸村は一瞬キョトンといてから、大きなタレ目の目尻を更に垂らして微笑む。

「気になるの?」
「まぁ、ちょっとな」
 サスケもゆやの倖せを願っている。

「鬼眼の狂が素直に答えるとも思ってねぇけど」
 幸村なら、分かるかもしれない。

「うーん。それは狂さんにしか分からないけど……漢は大抵ズルイ生き物だよ!」
 そう言って、アハハハハ!と屈託なく楽しそうに笑う。

「?」
 幸村の言葉の意味が、サスケには分からなかった。




 


 ゆやは茶屋の開店準備で忙しそうだった。

「ごめんなさい。まだ散らかってて」
 家具や食器の整理をしていたのか、台所と部屋いっぱいに広がった物と物の間をすり抜けつつ、サスケ達を中に案内する。
 鬼眼の狂は、中で酒を飲んでいた。

「ほら。僕たち運がよかったね」
 幸村が笑顔で言う。
 そして、その笑顔の幸村は、広がった物達の中から何か見つけたようだった。

「そうだ!」
「どうした?」
 サスケが幸村に問うよりも、幸村が動き出す方が早かった。

「ゆやさんも一緒にちょっと一服しようよ。朔夜さんのお茶には負けるけど、お土産の饅頭に合うと思うから、僕が入れるよ。」
「え?」
 来客の幸村へのお茶を準備していたゆやの背中をサササササッと押して、幸村が台所に入る。

「狂さんはこのお酒」
 ハイ、とお猪口で渡された狂は、すぐにそれをグイっと一口で飲んでしまった。

「久しぶりだね。狂さん」
 狂が飲み干すのをしっかり確認していた幸村は、ゆやに茶を渡してから、彼の隣に陣取って話し始める。

「京四郎さんに聞いたけど、みんなの声が聞こえてたんだって? 僕らも狂さんに会いたかったし、聞きたいこともたくさんあるよ」
 ほら、ゆやさんも、と言われると、ゆやも座って幸村の渡した湯呑に口を付けた。

「生きてても会えないんじゃないかって思ったりもしてたしね」
 ね、と幸村がサスケに目配せしてくる。上機嫌だ。何かは分からないが、幸村がワクワクしているのがサスケには伝わってきた。

「もし……もしこの3年間でゆや姉ちゃんに恋人が出来てたら、諦めたのかよ?」
 どうせ適当にはぐらかされるだろうと返事を期待してはいなかったが、サスケは探るように尋ねてみた。

「無理だな」
 すんなりと狂の声がその場にいる皆の耳に届いた。

「!?」
「「!?」」
「即答!」
 おお!と嬉々として驚いている幸村と、狂が素直に返答したことに驚くサスケとゆやと、誰よりもその紅い眼を見開いて、自分の声と発言に驚いているような狂。彼は持っていた酒瓶とお猪口を落としてしまった。

「やっぱりそうだよね~!」
 両手を合わせて拍手しながら、幸村の嬉々とした声が響き渡る。

「幸村?」
 狂の眉間にこれでもかというほど深~い皺が寄っている。

「あは!ごめんね狂さん。さっきこんなものを見つけちゃって」 
 自白薬vと書いてある薬瓶を幸村は顔前に掲げる。

「!?」
「ええ?!」
「な?!」
「それは……阿国さんがこれもおまけですわvってくれたやつ……」
 棚の整理をしていたゆやが、どこに置こうかととりあえず阿国に貰った惚れ薬の横に置いていたものだ。

「お茶とお酒にこれを入れちゃった」
 ニッコリと笑う。

「ええーーー!?」」
 ちょっと待ってください!と叫ぶゆや。

「『効能:聞かれたことをなんでも正直に白状してしまいます』だって」
「それって……」
 ゆやも飲んでしまった。だから。

「私も!?」
 思わず口元を両手で押さえている。

「ちなみに、ゆやさんはいつから狂さんのこと好きだったの?」
「いつだろう? 阿国さんとか朔夜さんの話が出てきた頃から気になってはいたんだろうけど、はっきり自覚したのは信長が入った兄様が狂を殺そうとした時から?」
 少し頬を染めて恥ずかしそうに、胸元で両手の人差し指をくっつけ合いながら呟く。

「そうなんだ」
「~~~~!!!ヤダ!!」
 話してしまってから、イヤー!と頭を抱えて蹲っている。

「何となく気になる存在だったのが、確信に変わったと同時に状況が状況で口走っちゃったというかなんというか……」
「結構細かく話してくれるんだね。この自白薬」
「あ~~~~~~」
 真っ赤な顔で勝手に動く口を何とか止めたいようで、顔全体を手で覆って俯いている。

「幸村!」
 サスケは可哀想になってきた。

「狂さんは? いつからゆやさんのこと好きだったの?」
 気になるな~と笑いながら、視線を狂に移す。

「辰伶……」
「辰伶?」
 辰伶にキスされた時のことだろうか。

「朔夜と京四郎がイチャついててもモヤるってかひっぺがそうとは思わなかったが、辰伶のアレは……」
「許せなかった、と」
「その後の修行で村正に、あの時の京四郎にあって狂にないもの、と言われて」
「あの修行の間に自覚したって感じ?」
「……」
「じゃあ、自覚してたのは狂さんが先だったんだねー!!」
 鬼が般若の顔で幸村を睨んでいる。

「せっかくだから、ゆやさんも聞きたいことたくさん聞いてみれば?」
「え、そんな急に言われても……」
 羞恥と少しの知りたかったことが知れた嬉しさとに、身動きが取れず蹲っていたゆやが、好奇心に負けてうずうずと顔を上げた。

「えっと……」
 ちょっと思案しつつ。

「狂にとっての倖せって?」
 何?と尋ねたかった。

「……」
「狂さん、どうぞ」
「……」
「あれ?」
「……」
「あれれ?」
「……」
「あ、薬の効果は10分間です。だって」
 薬瓶に小さく書いてある。

「切れちゃったね」
「幸村テメェふざけんなよ」
 ドスのきいた低い声が、地獄の底から這うように響く。

「あは。怒っちゃった? ごめんね狂さん。でも、色男が偶には素直になるのもいいじゃない」
 チャキ、と天狼を鞘から抜く音がした。

 サスケはやれやれと肩を竦めている。
 ゆやはふぅと力が抜けたのか、その場にへたりと膝を抱えて座り込んだ。







「狂が普段聞かれても喋んないし強情だから……私まで恥ずかしい思いをしたじゃない」
よほど恥ずかしかったのか、まだ顔が真っ赤だ。
 自分に火の粉が降りかかる前は、嬉しそうにもしていたが。

「答えてやろうか」
「え?」
「何が倖せか」
 ゆやの腰に手を回し、引き寄せながらニィと口角を上げる。

「ズルイ」
 胸元に引き寄せられたゆやは、上目遣いで狂を睨む。
 その反応に狂の口元が緩む。
 そうだ。ズルイ。
 彼女の倖せを望みつつ、己が倖せを感じているのだから。







*****
杏さんのリクエスト「お互いにいつどのタイミングで好きになったのか、インタビューみたいな感じで答えないと出られない部屋に閉じ込められて白状しなくちゃいけない話」です。
書き出してみたら、閉じ込められてないし阿国さんの惚れ薬ならぬ自白薬になっちゃってすみません。笑
インタビュー形式も、誰をインタビュアーにしようってなったら、京四郎、村正あたりしか思いつかなくて、でもそれじゃいつものパターンすぎるな…そもそも誰が聞いても狂が素直に白状するとは思えないし、部屋から出れないとしても白状しなさそうな気がして…(強情だな鬼眼!)そんなこんなでこうなりました。
どっちもどのタイミングで好きになったのか、自覚したのか、分かんないから読み返してみてココだったりしてー!って私が何となく思ったところで書いてみました。
実際どこなんだろ?色んな人のここじゃない?って解釈聞いて回りたいです。
狂ゆや下さい。(口癖)



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