現在の連載では主人公同士が関わることはありませんが、今後関わりが出てくるため、各々の主人公で名前変換ができるようにしてあります。
夢を諦めきれない私
名前変換※注意
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あたりの温度が数度下がったような錯覚に陥る。
まるで、何かが出そうな様な。
ふと襖が開けられる音がする。
鍵を閉めたはずなのにおかしい、と気づいたのは彼が現れてからだった。
「・・・ねぇあんた。」
暗い中に浮かび上がる赤い髪。
かわいい容貌の割に鋭い目つき。
白い肌に赤い髪の泉鏡花は、尾崎の門下でひとつ、まことしやかなうわさがあった。
泉鏡花は魂依
それはこの月明かりに映し出される姿を見ると納得してしまう。
どこか、この世のものでない空気があるのだ。
「誰が僕を呼んでいるって?」
腕を組み、きりりと睨みつけている様子に、男は笑った。
誰にもばれないように手配したはずだったというのに、邪魔をしてくれる、と。
障子に何かが身をひるがえしたような影が映ったが、どうせ店の外の柳だろうと自分に言い聞かせる。
なんとも気持ちが悪い。
「・・・ずいぶん早いお帰りだ。」
男は溜息をついて、はだけさせた女ー花の胸元から手を離す。
「馬鹿にするな。」
部屋に入る泉に、男は立ち上がる。
男のほうが背が高く、泉は見上げる形になるが、それに怖気づく様子もない。
ガタガタと、障子や襖が音を立てる。
「この子は・・・君のお気に入りだったかな?」
「睡眠薬でも飲ませたな。
捕まりたくなかったらさっさと消えろ。
僕も門下からそんな不届き者を出したくはない。」
質問を完全に無視した泉の言葉に、男は肩をすくめる。
「君のほうがそうしたと、塗り替えることは難しくはないがね。」
「あんたには財力があるかもしれない。
だがそれだけだ。」
開いていないはずの窓から風が吹き込み、男と泉の髪を揺らす。
それに動じることのない目の前の少年。
「・・・恐ろしい子だ。」
男は目を細め、一言そういうとゆったりと部屋から出て行った。
それを見届けると泉はため息をつき、花に歩みよる。
「あられもない姿でよくもまぁこれだけ寝られるもんだ。」
暗い部屋で障子越しの月光に浮かび上がる白い肌。
大きくはだけられた襟からはかなりきわどいラインまで胸が見えている。
泉はどうしようかと考えながら、でも無意識にその胸元に目が吸い寄せられていた。
そうとは知らず、ゆっくりと寝がえりを打つ花。
胸元は隠されたが、今度は足元がはだけ、こちらもきわどいラインまでめくれてしまう。
泉は今度はそちらに目を奪われ、しばらくしてからもう一度溜息をついた。
「・・・川上は本当に女なんじゃないの?」
それから花の傍らに膝をつき、横に向いた体を仰向けに戻す。
肌の白さに目を細める。
そうっと襟に手をのばし、ゆっくりとただしていく。
時折触れる肌に、ほんのりと頬を赤らめた。
一通り着付けを終えると、疲れを感じ、ごろんと隣に寝転ぶ。
人に触れるのは久しぶりだけれど、不思議と嫌ではなかった。
ふと腕にぬくもりを感じ、ぎょっと目を見開くと、花が泉の腕に抱きついている。
「は、離せ!
このグズっ!」
やわらかな感触に耳まで赤く染まる。
だが、次の瞬間、泉の動きは止まった。
「・・・ねぇ、さん。」
幸せそうな寝顔。
泉はじっと、その顔を見つめた。
それからぽつりとこぼした。
「馬鹿だな、あんたたち。」
「鏡花ちゃん?」
俺が手紙に書かれた通り女装をし、指定された部屋に来ると、赤い髪が部屋の真ん中で寝ていた。
声に気付いたのか、体を起して眠そうに眼をこすっている。
一体どうして俺をこんなところに呼びつけたのだろうか。
「・・・これ、どうにかしてくれる?」
寝ぼけた声に、鏡花ちゃんの向こうを見れば、#花 #が気持ちよさそうに眠っていた。
一つきりの布団、寝る男女。
思い当たることなんてひとつだ。
「お前まさか」
「んなわけないだろ!」
思わず出た冷たい声を否定するように、鏡花ちゃんが叫んだ。
「あんたが目を離すからこういうことになるんだろ?」
つらつらとこのいきさつを聞かされ、俺は彼女を見やる。
幸せそうな寝顔は、そんなひどい目にあったことを匂わせることはない。
そりゃそうだ。
睡眠薬で眠らされている間のことなのだから。
だがこの頬が、涙にぬれるところだった。
「いい加減、言ったらどう?
あんたが男だっていうのを隠しているから、目を離す時間が長くなる。」
もっともな話だ、と思う。
このままでは、いざというときに俺の手が届かない。
俺は鏡花ちゃんの隣を通り過ぎ、花を抱き上げる。
愛おしい腕の中の重みとぬくもり。
「礼を言うよ。」
「今度何か奢ってよね。」
「ああ。」
部屋を後にする。
あとは置屋に帰るだけだ。
二人きりの、あの部屋に。
何も知らぬお前と
