阪神国
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夜、屋根の上に、彼女がいた。
じっと座る背中は、どこかさびしげに見えるのは気のせいだろうか。
「試してみたいことがあるんだ。」
夜風がオレの髪を流すけれど、彼女の髪は深いフードの下なので、なびくことは無い。
替わりにフードが僅かに揺らいだ。
「なんだよ。
てめぇも人体実験か?」
鼻で笑う彼女の言葉に、目を瞬かせる。
「も、って言うことは、昔もそうだったってこと?」
「ああ。
てめぇにそっくりな男達だったよ。
オレをこんなにしてくれたのはな。」
その言葉に、オレは目を見開く。
「君のいた世界の、オレ・・・たち・・・?」
彼女は立ち上がり振り返った。
深いフードの下は月光の逆光になり、昼間よりも一層暗く、まるでそこに闇があるかのように思えて、背筋が寒くなった。
初めてだった。
彼女の殺気を浴びたのは。
モヒカン男に対しても、黒たんに対しても、誰にも出さなかった殺気が、オレを刺す。
彼女が一歩ずつオレに近づいてくる。
「ああ。
だからお前が特に嫌いでね。」
男はオレの前まで歩いてくると、ぼそりと言った。
「気を許さないことだな。
いつでも殺しかねない。」
“愛している”と言えば、彼女は魔女さんのところと同じように倒れるのか、試そうと思ったのに、そんなことできなかった。
したら本当に彼女は殺すかもしれない。
身体が動かない。
呼吸が苦しい。
身体が、震える。
(殺されるっ!!!!)
彼女の指先がつっと喉仏に乗った。
「気をつけることだ。
それから・・・お前、ファイじゃなくてユゥイのほうだろ。」
呼吸が止まった。
「何を隠してるのかしらねぇが、そんな必死な顔するなよ。
暴いて晒してやりたくなるじゃねぇか。」
深くかぶったフードの下で、彼女はにやりと笑っただろう。
気づけば彼女の背中はとうにオレの後ろにあって、力なく力なく座りこんでしまった。
オレも今まで幾度となく殺気を浴びた。
でも、これほどのものは、初めてだ。
俯く鼻先から、汗が滴り落ちる。
「そーだ、せっかくだからもう一個、教えてやるよ。」
楽しげな声に背筋が凍る。
言われることの予想は何となくついた。
ついたからこそ、恐くなった。
「てめぇ、羽根持ってたな?」
声も出ないオレを置いて、彼女は去っていった。
この旅はどうやら、前途多難のようだ。