阪神国
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大きな爆発音に、窓の外を見る。
遠くにある阪神城から煙が上がっているのが見えた。
微かにファイさん達の巧断の気配がする。
戦っているのだろう。
お留守番をしていた彼女とは、いつの間にか言葉が通じなくなってしまった。
不安そうなそぶりは全く見せることはなかったし、寂しそうにもしなかった。
置いていかれたとは思わないのだろうかと、不思議に思った。
でももしかしたら、彼女はそんなことにはもう慣れっこなのかもしれない。
いろんなものを背負っているのは、一緒にいてまだ1週間くらいだけれど、私も何となく感じたから。
私が不安に思っているのが伝わってしまったのかもしれない。
彼女は屋根の上にひょいっと出ると、フードをはずしてニヤッと笑い、阪神城を指差した。
気のせいか、前よりも顔色が悪い。
それを尋ねる前に、彼女は親指を立てて、再びフードを深くかぶる。
行くつもりなんだろう。
「お気をつけて。」
そう言えば彼女は背中を向けて、屋根伝いに走っていった。
彼女は他の旅の仲間と打ち解けることはなかった。
ずっと独りでいたし、夜になるとふらりと出掛けて行ってしまって、3人部屋といってもほとんど黒鋼さんとファイさんしか使っていなかった。
二人に気を遣っていたのかもしれない。
ご飯になると帰ってきて、むしゃむしゃと食べた。
「いただきます」と「ごちそうさま」を教えたけれど、一向に言う気配はない。
それでも三食きちんと食べているからには、気に入ってくれたのだろう。
旅人達は、きっともうすぐ次の世界へと旅立っていく。
そんな予感がした。
打ち解けられぬまま、彼女も次の世界へと行くのだろう。
蒼い空に昇る煙。
彼女に怪我がないことを、嵐は願った。