紗羅ノ国
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
晴れていく煙が見える。
座り込んでいる自分に、手がある、足がある。
「あれ、生きてる・・・」
はっと振り返るとそこに俺を守るように立つ細い背中。
そしてその向こうに。
「今の爆破で傷一つない、だと・・・?」
屋根の上で目を見開いているのは、俺と夜魔五家の男、それも。
「瑠璃貴 ・・・なんでこんなことを!!」
兄と慕った男だった。
彼は苦虫を噛み潰したような顔で俺を見下ろした。
「この貧困化する夜魔で、五家も不要だというのが、夜久 様のご判断だ。
先代亡き後、お前以外に当主として適任がいない 那伽 家は、お前が居なければ没落の一途を辿るだろう。
其奴と共にお前を殺し、四家となる。
それがこの計画の結末であった。
死体さえ残らない程の爆発だったはずだが……残念だ」
絞り出された声に言葉を失う。
夜久様は夜魔五家の中でも最も古く権威ある家であり、病床の王に代わり今の国政を担っている。
彼の命令は、絶対だ。
例え同じ五家の者であっても、反対は許されない。
「龍王」
咲の静かな声に目を向ける。
「自分の国の行く末は、その国の者が責任を持つべきです。
選んでください。
相討ち覚悟で自分1人で、片を付けるか。
兄と慕ったあの男の手柄のために殺されるか。
それとも、私の手を借りてーー彼らを殺すか」
そこには誰かが死ぬという筋書きしか存在しない。
たとえ俺が瑠璃貴を殺せたとしても、これだけの月忍に囲まれて、逃げ遂せることは難しいだろう。
たとえ逃げたとしてももう、帰る場所はない。
自分はもう、この国から滅ぼされる事が決まっているのだ。
国民の税を貴族は食い物にしてきた。
長引く戦乱が、国民を圧迫する。
加えて天候不順により農作物の出来が今年は悪く、このままでは税の徴収もままならない。
ならば策を打たねばならない、例えば農耕の発展のために徴収した税の一部を投じてはどうかと、そう夜久様に進言してきたのは俺だ。
彼はいつもそういう俺を冷たい目で見下ろしていた。
「俺が死んで、それで何もかわらねぇ。
この国は疲弊している。
悔しいが上は腐ってる。
でも俺は、この国を捨てたくない。
王の……」
数年前父を亡くし、血を引くものが自分1人となった時、王は言った。
ー龍王、人の痛みの分かる子だ。
そして正しき道を見据える目を持つ。
その若さで五家を継ぐのは重荷故に退くと言うのなら私は止めはしないが、私はお前にこの国の未来を救う手助けをしてほしいと思うよー
「王のお心に応えると決めた」
辺りに爆破を聞きつけて人が集まってきていた。
継当てだらけの衣服、痩せ細った体、鋭い眼光、これがこの国民の姿だ。
腹を空かせ、疲弊している。
このままでは、国は戦ではなく、内側から滅びる。
俺は、咲の提示した選択肢にはない、新たな道を選ぶ為に、壊れかけた建物の屋根に飛び上がった。
「みんな聞いてくれ!」
座り込んでいる自分に、手がある、足がある。
「あれ、生きてる・・・」
はっと振り返るとそこに俺を守るように立つ細い背中。
そしてその向こうに。
「今の爆破で傷一つない、だと・・・?」
屋根の上で目を見開いているのは、俺と夜魔五家の男、それも。
「
兄と慕った男だった。
彼は苦虫を噛み潰したような顔で俺を見下ろした。
「この貧困化する夜魔で、五家も不要だというのが、
先代亡き後、お前以外に当主として適任がいない
其奴と共にお前を殺し、四家となる。
それがこの計画の結末であった。
死体さえ残らない程の爆発だったはずだが……残念だ」
絞り出された声に言葉を失う。
夜久様は夜魔五家の中でも最も古く権威ある家であり、病床の王に代わり今の国政を担っている。
彼の命令は、絶対だ。
例え同じ五家の者であっても、反対は許されない。
「龍王」
咲の静かな声に目を向ける。
「自分の国の行く末は、その国の者が責任を持つべきです。
選んでください。
相討ち覚悟で自分1人で、片を付けるか。
兄と慕ったあの男の手柄のために殺されるか。
それとも、私の手を借りてーー彼らを殺すか」
そこには誰かが死ぬという筋書きしか存在しない。
たとえ俺が瑠璃貴を殺せたとしても、これだけの月忍に囲まれて、逃げ遂せることは難しいだろう。
たとえ逃げたとしてももう、帰る場所はない。
自分はもう、この国から滅ぼされる事が決まっているのだ。
国民の税を貴族は食い物にしてきた。
長引く戦乱が、国民を圧迫する。
加えて天候不順により農作物の出来が今年は悪く、このままでは税の徴収もままならない。
ならば策を打たねばならない、例えば農耕の発展のために徴収した税の一部を投じてはどうかと、そう夜久様に進言してきたのは俺だ。
彼はいつもそういう俺を冷たい目で見下ろしていた。
「俺が死んで、それで何もかわらねぇ。
この国は疲弊している。
悔しいが上は腐ってる。
でも俺は、この国を捨てたくない。
王の……」
数年前父を亡くし、血を引くものが自分1人となった時、王は言った。
ー龍王、人の痛みの分かる子だ。
そして正しき道を見据える目を持つ。
その若さで五家を継ぐのは重荷故に退くと言うのなら私は止めはしないが、私はお前にこの国の未来を救う手助けをしてほしいと思うよー
「王のお心に応えると決めた」
辺りに爆破を聞きつけて人が集まってきていた。
継当てだらけの衣服、痩せ細った体、鋭い眼光、これがこの国民の姿だ。
腹を空かせ、疲弊している。
このままでは、国は戦ではなく、内側から滅びる。
俺は、咲の提示した選択肢にはない、新たな道を選ぶ為に、壊れかけた建物の屋根に飛び上がった。
「みんな聞いてくれ!」
8/8ページ