紗羅ノ国
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旅の話に花が咲く。
この国から出たことのない俺にとっては、全てが新鮮だった。
国の話に花が咲く。
咲は伝説に興味があるのだと、各地の逸話や昔話を聞きたがった。
店長は俺達の楽しそうな様子を横目で見て、食後に薄緑色の餅を出してくれた。
丸いそれは、縁起の良い甘味。
それを食べた咲の満足げな顔を、俺は偽りだとは思えなかった。
(こいつは、夜叉王に何かしようって企んじゃいねぇ。
ただ仲間と生きたいと思っているだけの、旅人だ。)
自分も払うと言い募る咲をなんとか宥めて支払いを終え、店を出るとすっかり暗くなっていた。
夜叉国は日没から4時間してから月が昇り始め、それが出兵の合図となる。
(少し商店街の店を覗いてから帰ろうか。
こいつには珍しいものもたくさんあるだろうし。)
隣をちらりと見れば、咲は何か考えているようだ。
「どうした?
ほら、あの辺りの店でも寄って帰ろうぜ。」
「・・・帰りましょう。」
きっぱりとした答えに首を傾げる。
「武器の手入れもしたいですし、また今度お願いします。」
穏やかに見える微笑み。
理由も決しておかしいわけではない。
だが、どこか違和感があった。
何がと表現することはできない。
俺の勘違いかもしれない。
でも本能が何かを訴える。
「・・・あのさ、ええっと・・・」
その正体をどう暴けばいいのか迷い、言葉に詰まった時、咲の細い手が俺の腕をつかんで走り出した。
「うおっ!!!」
風を切る音がして、俺の頭上を苦無が飛んで行く。
夕食時の大通りが騒然となった。
「なんだよ、どうして俺達狙われてんだ!?」
「黙って走ってください。
ここはあまりに人が多い。」
確かに、俺達を狙っているとはいえ、いつその苦無が市民を傷つけるか分かったものじゃない。
「こっちだ!」
俺は引かれていた腕を逆に掴んで引き、裏路地へと連れ込む。
町中の路地は小さい頃から駆け回っており、自分の庭のようになっている。
右に左に敵から逃れながら人の少ない方へととにかく走る。
(だがあの苦無・・・月忍 の者だ。)
月忍 、それはこの夜魔ノ国の名家、夜魔五家が指揮権を持つ闇の軍。
汚れ仕事を一手に引き受ける忍の一族だ。
(なぜ奴らが俺達を狙う・・・?)
その答えは、ただ一つだった。
積み上がった荷を飛び越え、さらに細い路地へと飛び込む。
咲は遅れることなくついてきていた。
「ここを抜ければ郊外に出る。
刀を振り回すことだって可能だ。
とにかくそこまで逃げねぇと!」
そう言った次の瞬間、激しい爆発音が響いた。
(嵌められた!?)
この国から出たことのない俺にとっては、全てが新鮮だった。
国の話に花が咲く。
咲は伝説に興味があるのだと、各地の逸話や昔話を聞きたがった。
店長は俺達の楽しそうな様子を横目で見て、食後に薄緑色の餅を出してくれた。
丸いそれは、縁起の良い甘味。
それを食べた咲の満足げな顔を、俺は偽りだとは思えなかった。
(こいつは、夜叉王に何かしようって企んじゃいねぇ。
ただ仲間と生きたいと思っているだけの、旅人だ。)
自分も払うと言い募る咲をなんとか宥めて支払いを終え、店を出るとすっかり暗くなっていた。
夜叉国は日没から4時間してから月が昇り始め、それが出兵の合図となる。
(少し商店街の店を覗いてから帰ろうか。
こいつには珍しいものもたくさんあるだろうし。)
隣をちらりと見れば、咲は何か考えているようだ。
「どうした?
ほら、あの辺りの店でも寄って帰ろうぜ。」
「・・・帰りましょう。」
きっぱりとした答えに首を傾げる。
「武器の手入れもしたいですし、また今度お願いします。」
穏やかに見える微笑み。
理由も決しておかしいわけではない。
だが、どこか違和感があった。
何がと表現することはできない。
俺の勘違いかもしれない。
でも本能が何かを訴える。
「・・・あのさ、ええっと・・・」
その正体をどう暴けばいいのか迷い、言葉に詰まった時、咲の細い手が俺の腕をつかんで走り出した。
「うおっ!!!」
風を切る音がして、俺の頭上を苦無が飛んで行く。
夕食時の大通りが騒然となった。
「なんだよ、どうして俺達狙われてんだ!?」
「黙って走ってください。
ここはあまりに人が多い。」
確かに、俺達を狙っているとはいえ、いつその苦無が市民を傷つけるか分かったものじゃない。
「こっちだ!」
俺は引かれていた腕を逆に掴んで引き、裏路地へと連れ込む。
町中の路地は小さい頃から駆け回っており、自分の庭のようになっている。
右に左に敵から逃れながら人の少ない方へととにかく走る。
(だがあの苦無・・・
汚れ仕事を一手に引き受ける忍の一族だ。
(なぜ奴らが俺達を狙う・・・?)
その答えは、ただ一つだった。
積み上がった荷を飛び越え、さらに細い路地へと飛び込む。
咲は遅れることなくついてきていた。
「ここを抜ければ郊外に出る。
刀を振り回すことだって可能だ。
とにかくそこまで逃げねぇと!」
そう言った次の瞬間、激しい爆発音が響いた。
(嵌められた!?)