紗羅ノ国
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「いらっしゃい!」
おっちゃんの声に手を挙げて応える。
「お、友達かい?」
「ああ。
今日のおすすめは?」
「もちろん気まぐれ定食だ!」
気安い店長の腕は確かで、気まぐれ定食はいつ食べても旨い。
だが今日は異国の人を連れている以上、オリジナル料理がよく出てくる気まぐれ定食を選ぶわけにはいかない。
「あはは、了解。
一応メニュー見せてもらうな。」
ちらりと隣を盗み見ると、咲は興味深げに店内を見回していた。
しばらくしてこの国の郷土料理である煮物を一品と、癖のない炒め物が出された。
相手が口布に手をかける。
俺はなるべく意識しないようにその横顔をちらりと盗み見た。
「申し訳ないのですが。」
静かな声に、何気ない風を装って咲を見る。
「なんだ?」
「私は寿命を縮めるような呪 が掛けられており、全身に刺青が施されています。
他者に影響はありませんが、見ていて気持ちの良いものではありません。
それでもよろしいですか?」
それは予想外の言葉だった。
潜入のための口布だと思っていただけに、本人に見せたくないような事情があるとは考えもしなかったのだ。
「そうなのか!?
それは大変だな・・・
でも俺はそんなん気にしねーよ!」
そう言って笑顔を見せた。
予想外のことではあるが、相手の言うことが全て正しいとも限らない。
「ありがとうございます。」
咲は微かに目元を微笑ませてからゆっくりと口布を取った。
その下には女と見紛うような端正な顔があり、そしてその顔には黒い刺青が這っている。
まるで蔦の様で、咲の中に何かを抑え込むかのように見えた。
寿命を縮めると言っていたが、その蔦一本一本は何処か優しく見えるから不思議だ。
聞きたいことは沢山ある。
だが、触れるべき話題ではないことは確かだ。
「・・・これ、食ってみろよ。
あんまり癖が無いと思うんだけどな。」
そう言って煮物を皿に取り分けて渡してやる。
咲は少しだけ驚いた顔をして、やはり微かに目元を緩ませた。
その安堵の表情に、心の奥がじくりと痛む。
(寿命が縮む呪をかけられるとはどういうことだろう。
恨まれら何かをしたからそんな呪をかけられたか?
何かの代償か?
それとも罰されたのか?
いずれにせよ、それがこいつの心につっかえているんだろうな。)
料理を口に運び、溢れるように笑う。
「美味しいです。」
戦場の鬼神を忘れさせるその表情に、胸は重い。
(だめだ、こいつの全てが真である とは限らない。
冷静に分析しなければ。)
どれほど言い聞かせても、咲を信じたいという気持ちを踏み潰すのは骨が折れそうだと思った。
おっちゃんの声に手を挙げて応える。
「お、友達かい?」
「ああ。
今日のおすすめは?」
「もちろん気まぐれ定食だ!」
気安い店長の腕は確かで、気まぐれ定食はいつ食べても旨い。
だが今日は異国の人を連れている以上、オリジナル料理がよく出てくる気まぐれ定食を選ぶわけにはいかない。
「あはは、了解。
一応メニュー見せてもらうな。」
ちらりと隣を盗み見ると、咲は興味深げに店内を見回していた。
しばらくしてこの国の郷土料理である煮物を一品と、癖のない炒め物が出された。
相手が口布に手をかける。
俺はなるべく意識しないようにその横顔をちらりと盗み見た。
「申し訳ないのですが。」
静かな声に、何気ない風を装って咲を見る。
「なんだ?」
「私は寿命を縮めるような
他者に影響はありませんが、見ていて気持ちの良いものではありません。
それでもよろしいですか?」
それは予想外の言葉だった。
潜入のための口布だと思っていただけに、本人に見せたくないような事情があるとは考えもしなかったのだ。
「そうなのか!?
それは大変だな・・・
でも俺はそんなん気にしねーよ!」
そう言って笑顔を見せた。
予想外のことではあるが、相手の言うことが全て正しいとも限らない。
「ありがとうございます。」
咲は微かに目元を微笑ませてからゆっくりと口布を取った。
その下には女と見紛うような端正な顔があり、そしてその顔には黒い刺青が這っている。
まるで蔦の様で、咲の中に何かを抑え込むかのように見えた。
寿命を縮めると言っていたが、その蔦一本一本は何処か優しく見えるから不思議だ。
聞きたいことは沢山ある。
だが、触れるべき話題ではないことは確かだ。
「・・・これ、食ってみろよ。
あんまり癖が無いと思うんだけどな。」
そう言って煮物を皿に取り分けて渡してやる。
咲は少しだけ驚いた顔をして、やはり微かに目元を緩ませた。
その安堵の表情に、心の奥がじくりと痛む。
(寿命が縮む呪をかけられるとはどういうことだろう。
恨まれら何かをしたからそんな呪をかけられたか?
何かの代償か?
それとも罰されたのか?
いずれにせよ、それがこいつの心につっかえているんだろうな。)
料理を口に運び、溢れるように笑う。
「美味しいです。」
戦場の鬼神を忘れさせるその表情に、胸は重い。
(だめだ、こいつの全てが
冷静に分析しなければ。)
どれほど言い聞かせても、咲を信じたいという気持ちを踏み潰すのは骨が折れそうだと思った。