阪神国
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一瞬だった。
オレ達に喧嘩を打ってきたモヒカン男の巧断が木端微塵に吹き飛んだのは。
「大丈夫ですか!」
「救急車を早く!」
「今の攻撃は!?」
「やつの巧断はどこだ?」
モヒカン男の仲間達が騒いでいる。
「ふざけんな。
自分みたいなのに巧断がつくかよ!
実力だ実力!」
その声に振り返れば、2日前から行方をくらましていた女がいた。
どこかで事件を起こしていないかと心配していたのだが、ニュースやシンブンに報道されていないから大丈夫だと空ちゃんに説明された。
あの深いフードの下で、彼女はきっと、笑っているのだろう。
モヒカン男は気絶してしまっているし、周りの人もひどくあわてている。
「悔しかったら殺しにきてみろ!
ウスノロが!!!」
彼女はずっと、こうしてきたのだろうか。
人を傷つけ、それを楽しみ、嘲笑い・・・。
そしてオレ達と旅をしていくのだろうか。
(・・・嫌な感じ。)
でも、彼女は今、間違いなくオレ達を助けた。
気まぐれかもしれないけれど。
「そういう言い方はないと思います。」
凛とした声があたりに響いた。
小狼君だ。
「殺されたいのか?
チビ!」
「やめろ。
あいつは本当にやりかねない。」
珍しく黒たんが庇った。
まぁそれもそうだろう。
「でも、やっていいことと悪いことがある。
確かに喧嘩を売ってきたのはあの人だけれど、あんなにひどい目に遭わせる必要はない。
あんな言い方をする必要も。」
「ほぉ。」
小狼君は目を見開いた。
目の前で彼女の剣と化した手と、黒たんが巧断の力で出した刀が激しい音を立てて衝突した。
黒様は小狼君を守るために間に割って入ってくれたのだ。
一瞬だったのに、よく止められたなと思う。
でも彼女は黒様を見てはいない。
「じゃあ殺されても文句はいえねぇよな?
ひどい目には遭わせないでくれるんだろ?」
深いフードを被ってはいるが、彼女の視線の先にいるのは小狼君だ。
「てめぇも邪魔すんな。」
ついでに、といった感じで、目の前の黒たんを一瞥する。
黒たんの方はかなりの殺気を放っている。
「今本気で殺る気だったろ?」
吐き捨てるように黒たんが言う。
「低能め。
本気なら今頃てめぇごと木端微塵だウスノロ。」
こんなに深くフードをかぶっているのだ。
きっと前は大して見えていない。
ということは気配だけでこれだけ戦えるということ。
実力は尋常じゃない。
でも。
(本気なら・・・?)
つまり彼女には殺す気がないということ。
ずいぶんと激しい気性に見せて、危害を加えるつもりは実はないのかもしれない。
でもあの黒たんが本気と間違うような理由は、きっと彼女が殺気を出さずに攻撃をするからだ。
さっきのモヒカン男にもそう。
「飽きた。
帰る。
嵐さんのお菓子食べる。」
「え・・・。」
置いてけぼりの小狼君が目を瞬かせた。
もともとは彼とトラブルになったはずなのに、彼女は一瞥もせずにあっさりと帰って行ったからだ。
「なんなんだ、あいつ・・・ええっと・・・。」
そこでふと、オレ達はまだ彼女の名前を知らないことに気がついた。