ジェイド国
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目が覚めると眩しい視界にモコちゃんが見えた。
「サクラ、大丈夫?」
私は飛び起きる。
「咲は?」
「いないの。」
「やっぱり・・・」
「どういうこと?」
部屋に入ってきたファイさん、黒鋼さん、小狼くんが私を見る。
「咲が昨夜、窓から金色の髪のお姫様を見つけてたぶんついていったんです。
一緒に行こうと思ったんだけど、私眠くなっちゃって・・・
心配するなっていっていたけれど、何かあったのかもしれない。」
3人はどこか考え込んでいた。
「実はカイル先生が、子ども達を拐う咲を見たって言うんだ。」
ファイさんの言葉に私は驚く。
「そんなわけない。
意味もなく村の子どもを拐うなんて!」
「どうする?」
「探しにいこう。」
黒鋼さんの問いかけにモコちゃんが手をあげる。
「でも心配要らないっていったんだよね?」
「言ってましたけれど・・・」
「何か考えがあるのかもしれない。」
ファイさんの言うことはもっともだ。
確かにあの人は、口では言うだろう。
心配要らないと言ったはずだ、と。
「でも私は探しにいきたい。
これが小狼くんだったら?
黒鋼さんだったら?
ファイさんや、モコちゃんだったら?
きっとみんな行きます。
それに私の羽根があるかもしれない。」
沈黙が舞い降りた。
みんなが考えている。
他のみんなならば考えもせずに探しに行くはずだ。
だから、この沈黙が、身が切られるように辛かった。
逆にもし誰かが行方不明になれば、咲ならば黙って探しに飛び出していくに違いないのに。
「行きましょう。」
小狼くんの言葉に、私は胸を撫で下ろした。
「おい待て。」
飛ぶ金色の髪の姫を、追う。
姫はちらりと振り返った。
その心配げな瞳に、犯人は彼女ではないと確信する。
姫の前を歩く子ども達は皆虚ろな目をしていた。
「事情を話さんとわからない。」
『急がなければ、あの人が戻ってきてしまうんです。
だから・・・』
咄嗟に姫と子ども達の前にシールドを張り、自分は大きく飛び上がる。
身体を捻って背後の男を視界にとらえると同時に雷撃を放つ。
姫の前に張ったシールドに敵の放った攻撃が激突し、雪を撒き散らした。
激しい攻撃など慣れたもので、驚くことはない。
敵が避けた先を読み、続けざまに放つ。
派手な攻撃ができれは楽なのだが、ここで村のものに見つかってはどう足掻いても立場が悪い。
「愚かな。」
敵が笑った。
こう見えて、自分と互角とは行かないまでもなかなか強い魔力を持つ。
『逃げて!
この男は危ないわ!』
金色の髪の姫が叫ぶ。
敵が浮かべる不適な笑みに、次の瞬間、来るものはわかっていた。
逃げるには敵の声が聞こえないところまでいかなければならないし、そうすれば男を逃すことになる。
(無理をすることになるが、あの術を使うか。)
呪文を念じながら息を詰め、右手を離れたところにいる男の首もとに向けて魔力を集中させる。
男は目を見開いた。
手に温かな首の感触を感じた瞬間、一気に気道をきつく握る。
もちろん、男の首に手をかけたわけではない。
離れていながら相手の首を絞めるためには、相当の魔力を保持し、かつ相手よりも魔力が高く、そして。
(もう少し・・・)
己も無呼吸でいなければならない。
男は首を必死でかきむしりながら足掻いている。
こっちも脂汗が浮いてきた。
この術は体力も魔力もかなり削られる。
今のような、魔力を押さえ込まれているときには不向きな技だ。
男が震える手を姫と子ども達の方へと向けた。
今は首を絞めるのに集中するため、シールドを解除している。
(クソッ!)
男の指先から激しい炎が燃え上がり、みるみるうちに巨大化する。
子ども達へと向かう火玉を見て、首を絞めていた右手をおろしそのまま大きく払うように動かす。
そして詰めていた息を吸う。
「паветраны шчыт!!」
木立の背丈をを上回る巨大なシールドが子どもと火玉の間に現れた。
辺りが昼間のような明るさに包まれ、爆発音が木霊した。
爆発に曝され、あちこちが爛れた。
服も部分的に燃えてしまったが致し方ない。
今はそれよりも。
(微かに呪文が聞こえる・・・)
それは氷を操るもの。
懐かしく憎らしい、母国の言葉だ。
水蒸気の中、声に向かって氷の弓を放つ。
(面倒なことを!)
両手を大きく横に振り、竜巻を起こして水蒸気を振り払う。
同時に大きく飛び上がった。
足元に見えたのは、無数に生える氷の剣。
(全て溶かしてやる!)
合わせた両手に魔力を込め、急激に温度を上げて発火させる。
見上げてくる男が不適な笑みを浮かべ、口を動かした。
「愛している。」
体の動きが奪われる。
火だるまになって、地面へと落ちていく。
(愚かであったか。)
風に煽られた愛しい鎖が、胸を叩いた。