ジェイド国
名前変換
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「嫌だね。」
無理もないと首をふる。
こっちとしても目立つのはよろしくない。
だからといって今の服のままでも馴染むとは言いがたい。
いかにも怪しい。
「とりあえずこのくらいでどう?」
ファイさんが濃紺のマントと帽子を見せる。
「あとはマフラーでも巻いて顔は下半分をなるべく隠してさ。
手袋もつければ見えないし。」
痛い沈黙が舞い降り、それを破ったのはその人のため息だった。
「出ていけ。」
おれたちは思わず固まる。
「着替えるのだから、外に出ませんか?」
姫がやんわりと言い、おれたちは目を瞬かせる。
「本当か?」
黒鋼さんが怖々聞くと急に服を脱ぎ出したから、おれたちは慌てて部屋を飛び出した。
「サクラちゃん、よくわかったね。」
疲れた顔をしてファイさんが笑った。
「姫は優しいから。
って、姫!?」
気づけば姫は外に出てきていない。
あの女と二人だと言うのだろうか?
「モコナも一緒だし、危害は加えないと思うよ。」
「ああ。
部屋で待とう。」
黒鋼さんがそういうので、おれたちは隣の部屋に入った。
「あいつは先の国でお前が潜っている湖が光って、こいつが慌てて駆け寄ったとき、待っていろといって飛び込んだ。」
ファイさんを見れば困った顔をしてうなずいている。
「こいつと同じ魂を持つ輩が同じ世界にいたんだろうと俺たちは考えている。
そしてそいつを護っていたのだろうな。」
黒鋼さんのいうことは分かるけれど、やっぱり意外だ。
あの人に、何か護りたいものがあるなんて。
「話を戻すけれど、サクラちゃんがあの人のことを分かるのはサクラちゃんが優しいのが理由ではないと思うんだよねぇ。
あ、優しくないと言う意味じゃなくてね。
サクラちゃんは優しくて人の気持ちに寄り添えるいい子だ。
でも、やけに懐いているように思うんだ。」
ファイさんのいうこともわかる。
確かに姫はあの人に懐いている。
不思議なくらいに。
「様子見・・・だな。」
黒鋼さんの呟きに、おれはひとつ頷いた。
「ここはこうするんだよ。」
襟を直してあげても、その人は黙っていた。
「私、あなたにいい名前を思い付いたの。」
「ずいぶんと勝手だな。」
その人が面白いとでも言いたげな声を出すから、思わず微笑んだ。
「うん。
咲。」
そっと名前を呼んで、ぴったりだとくすりと笑ってしまった。
咲はずいぶん驚いたような顔をした。
それからため息をついた。
「まぁ・・・そうなるよな。」
「ぴったりだもの。」
「そういう意味ではないんだが。」
「でも本当にぴったりだとモコナも思うよ!」
モコちゃんがぴょんと咲の頭に飛び乗った。
「不思議ね、あなたといると落ち着くの。」
少し高い所にある瞳を見上げる。
不思議だ。
「なんだか似ているね。」
何がとは言えないけれど、言うならばすべてが似ている気がした。
「そうだな。」
「今日は一緒の部屋に泊まってもいいかな?」
「あいつらが許せばな。」
「説得するよ!」
ガッツポーズをつくって見せれば、咲は淡く微笑んでくれた。