企画 ー雛祭りー
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「私は行かないよ織姫」
「せっかくの雛祭りパーティーだよ、紹介したい人もいて」
「おや、井上サンに咲サン」
通用口から出てきたのは1番会いたくない人
、店長だ。
「あっ黒崎君!」
花が飛ぶような織姫の声に振り返り、写真で見た青年に会釈すると、相手も返した。
「私は差し入れを持ってきただけだ、帰る」
「ねぇお願い!」
織姫のお願い攻撃に溜息をつき、これが最後だと心の中で言い訳をして頷く。歓声を上げて飛び跳ねる彼女に微笑みを向けた黒崎は、私に歩み寄った。
「差し入れありがとうございます、持ちます」
「有難う」
高校生には見えない逞しい手に重荷を預ける。織姫は彼に料理の説明をしながら足取り軽く店へ入って行った。解放された私の手は、妙に寒い。
海外での仕事を縫って織姫の保護者面をしてきたが、中途半端な関係が生む寂しさは心を弱くする。織姫には信頼できる仲間が出来た。もう私は必要ない。これを最後の帰国にするつもりだ。
「強く優しいな、彼等は」
「実に」
「毎年桃の節句には織姫が健やかに育ち災厄に見舞われぬよう祈ってきたんだ」
扇子で鼻から下を隠す店長に、寄る辺ない胸の内を見透かされそうで目を側めた。
「貴女、霊圧上がってきていますね。彼らの影響かと」
「野暮な事言うな。黒崎の力はどうだ?」
「話を逸らさないで下さい」
「罪悪感か使命感か知らないがその全ては彼等に向けろ」
扇子をぱちんと畳み、彼は珍しく私を正面から見据えた。居心地が悪い。
「己の心はある程度制御も出来るでしょうが、他人の心はなかなかそうはいかない」
「人をけしかけ目的の為に遣う死神様は流石だな」
「皮肉で誤魔化さないでください。腕に3日以内に虚に受けた傷があるでしょう」
「だから?死神にこの脆く短い人命の何が分かる。罪悪感があるなら織姫達を」
ふと彼の空気が変わり、思わず見上げた瞳の気迫に息を飲む。カランと進む下駄に、私のヒールはカツンと後退する。
「祈り?気休めだろ。怒り?隙ができるぞ。逃げるな、孤独は弱い」
下駄がコンクリートを強く叩くと同時に腕を捕られた。その突き刺さる強さから逃れることが、できない。
「アタシは人間である貴女と生きる覚悟は疾うにできている」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
テーマは【雛祭り】。
【 whimsy room 】の銀木セイ様との『創作力を上げよう企画』の第三弾です。
(銀木さまのお話のページは こちら )
節分及びバレンタイン企画と同様、今後はこのお話に条件を付けて交換し、お互いが自分なりに相手の作品を書き換えていく予定です。
「せっかくの雛祭りパーティーだよ、紹介したい人もいて」
「おや、井上サンに咲サン」
通用口から出てきたのは1番会いたくない人
、店長だ。
「あっ黒崎君!」
花が飛ぶような織姫の声に振り返り、写真で見た青年に会釈すると、相手も返した。
「私は差し入れを持ってきただけだ、帰る」
「ねぇお願い!」
織姫のお願い攻撃に溜息をつき、これが最後だと心の中で言い訳をして頷く。歓声を上げて飛び跳ねる彼女に微笑みを向けた黒崎は、私に歩み寄った。
「差し入れありがとうございます、持ちます」
「有難う」
高校生には見えない逞しい手に重荷を預ける。織姫は彼に料理の説明をしながら足取り軽く店へ入って行った。解放された私の手は、妙に寒い。
海外での仕事を縫って織姫の保護者面をしてきたが、中途半端な関係が生む寂しさは心を弱くする。織姫には信頼できる仲間が出来た。もう私は必要ない。これを最後の帰国にするつもりだ。
「強く優しいな、彼等は」
「実に」
「毎年桃の節句には織姫が健やかに育ち災厄に見舞われぬよう祈ってきたんだ」
扇子で鼻から下を隠す店長に、寄る辺ない胸の内を見透かされそうで目を側めた。
「貴女、霊圧上がってきていますね。彼らの影響かと」
「野暮な事言うな。黒崎の力はどうだ?」
「話を逸らさないで下さい」
「罪悪感か使命感か知らないがその全ては彼等に向けろ」
扇子をぱちんと畳み、彼は珍しく私を正面から見据えた。居心地が悪い。
「己の心はある程度制御も出来るでしょうが、他人の心はなかなかそうはいかない」
「人をけしかけ目的の為に遣う死神様は流石だな」
「皮肉で誤魔化さないでください。腕に3日以内に虚に受けた傷があるでしょう」
「だから?死神にこの脆く短い人命の何が分かる。罪悪感があるなら織姫達を」
ふと彼の空気が変わり、思わず見上げた瞳の気迫に息を飲む。カランと進む下駄に、私のヒールはカツンと後退する。
「祈り?気休めだろ。怒り?隙ができるぞ。逃げるな、孤独は弱い」
下駄がコンクリートを強く叩くと同時に腕を捕られた。その突き刺さる強さから逃れることが、できない。
「アタシは人間である貴女と生きる覚悟は疾うにできている」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
テーマは【雛祭り】。
【 whimsy room 】の銀木セイ様との『創作力を上げよう企画』の第三弾です。
(銀木さまのお話のページは こちら )
節分及びバレンタイン企画と同様、今後はこのお話に条件を付けて交換し、お互いが自分なりに相手の作品を書き換えていく予定です。