パラレルシリーズ
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カランカラン
ベルの音がして、扉を振り返れば、短い髪の男性が立っていた。
「よっ!」
そういって笑って片手を上げる。
「海燕さん、こんにちは。」
私はそう笑顔を返してから、カウンターに駆けていく。
「マスター、海燕さんいらっしゃいましたよ。」
なにやらお菓子を作っていたらしいマスターは私の声に、ん?と顔を上げる。
若草色のエプロンをして、髪をひとつにまとめたマスターは、そんじゃそこらのシェフ顔負けの料理の腕を持つ。
「お、海燕!
ちょうどいいところに来たな。
もうちょっと待ってろよ、今新作のケーキが完成しそうなんだ!」
「まじっすか!?」
眼を輝かせてカウンターに駆けてくる海燕さん。
マスターの料理の味を知った人なら誰一人としてこの誘惑には勝てないと思う。
「どんなケーキなんです?」
「チーズケーキなんだがな・・・。」
口は動かしながらも、手を止めることはない。
優しい笑顔でケーキを完成させていく。
私はその顔に見とれてしまう。
そのくらい、お菓子を作るマスターは素敵。
「ほら、出来た!」
コトリ
小さな音を立ててカウンターに座りこんで頬杖を突く私の前にお皿が置かれる。
「わぁっ!」
私は思わず声をあげた。
雪だるまの形をしたチーズケーキ。
顔と手はチョコレートだろう。
「かわいいっ・・・。
食べるのもったいないですよ、マスター。」
そう言う私にマスターは困ったように笑いかけた。
「ありがとう。
でも、味見してくれるかい?」
「俺がお前の分も食べてやるから気にすんな!!」
横に座った海燕さんがにやりと笑うので、慌ててケーキを守るように手で囲った。
「だめですっ!」
それからスプーンを手に取り、ごめんね、と心の中で謝りながら、雪だるまの胴体を小さくすくって口に運ぶ。
「うまいっ!」
「おいしいっ!」
同時にそう言ってマスターを見上げる私たちに、彼は少し照れたように微笑んだ。
「本当か?」
私は一生懸命首を縦に振った。
「こんなにおいしいもの、生まれて初めてですっ。」
そのセリフに、隣で海燕さんが噴き出した。
「お前、いっつもそれだな。
この前も同じこと言ってただろ?」
「この前だけじゃないさ、毎食だ。」
「まじっすか?」
どこか子供扱いする彼の言葉に、私は少しだけ拗ねる。
「だって・・・マスターの料理は世界一だもん。」
そう小さくつぶやけば、海燕さんは少しだけキョトンとして、それからニカッと笑って私の頭をわしゃわしゃとなでた。
「分かるぜ咲!
お前は先生が大好きだもんな!」
「はいっ。」
彼の笑顔につられて、私も笑顔になった。
「・・・こら海燕、咲の髪の毛がくしゃくしゃになってしまっただろう?」
どこか顔の赤いマスターが、私の隣にコーヒーを持って腰かけ、
髪を直すようにそっと頭をなでてくれた。
その優しい手が心地よくて、私はすっと目を閉じる。
「ホント、こいつ小動物みてぇだ。」
海燕さんのその言葉に慌てて眼を開いて振返る。
「またふくれてやんの。
小動物だけじゃなくてガキみてぇだな。」
「か・・・海燕さんなんて嫌いですっ!」
そう言ってからケーキを頬張る。
口いっぱいに柔らかさと甘さと香りが広がる。
「・・・やっぱりおいしい・・・。」
海燕さんの言葉なんかすぐ忘れちゃう。
「マスター、本当においしいです。」
私の言葉に、マスターはうんうんと嬉しそうに微笑んで頷いた。
おいしいあなたがだいすき
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