本編 ーthirdー
名前変換
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早朝の訓練の準備のため、倉庫へと向かった堂上と小牧。
「おい、あれ……」
堂上が指指す方には、ネイビーの部屋着が落ちている。
こんな寮の裏に、どうして落ちているのか。
しかもひどく泥で汚れている。
「洗濯物がとんだのかな?」
どこかで見覚えがある色あいだ。
小牧が近づいて服を拾い上げてみる。
「え……」
中から下着がでてきて、慌てて伏せた。
堂上も首をかしげる。
不意に近くの茂みの方に何かあるのに気づいて近づく。
「……これは」
制服だった。
それも、防衛部のものだ。
名前を探す。
「あー、こんなところまで飛んでいたんですね」
わざとらしい大きな声に、堂上と小牧は驚く。
流石に女性の下着を見たのだ。
不可抗力とは言え、気まずいものは気まずい。
しかし。
「おいチビ、お前のか」
堂上は低く尋ねた。
「ええ。
昨日窓のそばの洗濯機の上に荷物置いたまま、電話しに出たんです。
そのまま忘れて帰ってしまって」
いつも通りだ。
少し困った顔をして、咲は服をかき集める。
「……その割に汚れているな」
「昨日の訓練中、転んだんです」
「いや、転んでなどいない」
「堂上二正が戻られた後ですから、ご存じなくて当たり前です」
堂上は言葉に詰まる。
しかしすぐに手元の服を指さした。
「部屋着もだ」
「いろんな日がありますよ。
ちょっと部屋で笠原士長と飲んでて手を滑らしたんです」
「泥がついている」
「外に一晩あったんですから、当たり前です」
「いい加減にしろ、これはどういうことだ」
見えているのだ。
これは明らかに嫌がらせ。
笠原が数日前に泣いていた理由だ。
それは分かっている。
分かっているのに。
「もしかして下着見たんですか?」
「話をそらすな!」
思わず堂上が怒鳴る。
堂上、と小牧がその肩に手を乗せた。
その裏にある思いは、咲は分かっているつもりだった。
「……大丈夫です」
分かっているつもりだからこそ、小さく笑う。
「笠原士長は、もう大丈夫ですから」
彼女が無理に笑っていることくらい分かる。
彼女が言っている言葉の裏に隠れていることも。
(俺が今問い詰めている理由は、笠原が気になっているからだと思っているのか?
その上自分が標的になったから、笠原にはあまり被害はないとでもいいたいのか!?)
堂上は咲を睨む。
思わず拳を握りしめた。
「余計な世話を焼くな!
笠原はお前に助けられんでも解決する力のあるやつだ!」
そして堂上は足早に立ち去った。
残された咲はといえば、どこか放心したようになっている。
小牧はため息をついた。
「私……ただの、自分勝」
「違うよ」
咲の細い肩を、小牧優しく掴んだ。
向かい合わせになるように立ち、彼女の両肩を掴んで視線を合わせる。
そして安心させるように困った笑顔を向けた。
「毬江ちゃんの気持ちが分かる気がするよ。
あの子、いつも君のそういうところ、心配しているんだ」
咲は何の反応もできず、戸惑ったように視線を彷徨わせた。
「堂上はさ、笠原さんの心配をして、空太刀さんに聞いたんじゃないよ。
君は知らないかもしれないけど、俺達は君が小学生のころから図書館に来ていたのを知ってるから、勝手に心配しちゃったりするんだ。
誰でもない、君自身のことをね」
しばらくの間があった。
「……知ってますよ」
咲はぽつりとつぶやいた。
「私の図書カード、作ってくれたのは、研修中の小牧二正と堂上二正でしたから」
小牧は少しだけ驚いた顔をする。
「覚えていたんだ」
「そっちこそ」
「だって、俺達も初めてカード作った相手だったから」
それから2人は顔を見合わせて小さく笑った。
今度は、本当の笑顔を見せて。
「堂上にしてみたら笠原さんはもちろん大切かもしれないけど、君のことも妹みたいに思ってるんじゃないかな。
もちろん、俺もだけどね」
咲は零れるほどに目を見開いた。
「……そんな」
「そんな顔されると困るな」
小牧は照れたように頭を掻いた。
「堂上に、後で謝っておきなよ」
「……はい」
優しい上司
