本編 ーthirdー
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日増しにエスカレートする嫌がらせ。
食事もお風呂も業務部が先。
防衛部の地位が一番低く、殊に特殊部隊となればそれは歴然。
しかも、今までの防衛部への嫌がらせもひどくなっていると聞く。
(独りで乗り越えてやるんだから)
広い食堂。
笠原の周りには、誰もいない。
独りだ。
元から特殊部隊は咲が入るまで女は1人。
男ばかりの中に1人でいるのは慣れていた。
慣れていたのだ。
(絶対、独りで乗り越えて見せる)
不意に隣の椅子が引かれ、もの思いにふけっていた笠原は驚く。
手に持っていた水の入ったコップを相手の方に倒してしまい、慌てて立ち上がった。
「あっごめん!
……って、どうして!!」
その顔を見て、思わず自分の声が明るくなる。
「笠原士長がもの思いにふけるなんて、らしくありませんね」
「咲!」
「布巾、もらってきます」
笑顔に抱きつきたくなるのを抑え、ひとつ頷いた。
「なんで?」
机を拭き終えて一息ついたところで、笠原が尋ねた。
「要請を受けたんです。
留守番だったはずのうちの班も」
小声で咲が肩を窄めながら返事をする。
「食べ終わったらいろいろ教えてください。
ここ、よく分からないこと多くて」
笠原はこの子にも被害が及ぶのかと、眉間にしわを寄せながら、頷いた。
話は部屋に帰ってからだと、2人は急いで食事を取る。
「2人に増えたのね、暑苦しいわ」
後の方の席から聞こえてくる悪口に、笠原は拳を握りしめる。
「堂上二正よりマシですけどね」
小声で咲が笠原に耳打ちをし、その言葉に笠原は思わず笑ってしまった。
茨木にきてから笑ったのなんて久しぶりな気がして、らしくないな、と思ってしまう。
(元気だけが取り柄みたいなものだもの)
食事を片づけて部屋に戻ると、荷物が増えている。
「私と相部屋なんです、すみません」
困ったような咲に、笠原は首をぶんぶんと振って、抱きついた。
「嬉しいよ咲!」
「防衛部の方たちにとっては、ちょっと痛手かもしれませんけれど。
2人に増えると嫌がらせがエスカレートしそうですし」
苦笑して見せる。
「それにしても、なんて言うか……
今時中学生でももう少しましじゃないかと思いますよ。
子供っぽい」
ため息をつく姿は、未成年とは思えない。
持ってきた荷物を着々と解体していく。
この口ぶりからだと、笠原もうけたいわゆる洗礼を、彼女も受けたのだろう。
5つも年上の自分が、嫌がらせに腹を立てていたことが、少し恥ずかしくなった。
(でも、腹が立つもの!)
「こういうのは、気にしたら負けです」
その強い横顔は、何の感情も見せない。
笠原はむしろ、そのほうが気がかりだった。
「感情に押し流されて、冷静さを欠けば、相手の思う壺」
彼女が冷静さを欠いたことといえば、毬江の痴漢事件の時だ。
それから、この前の昇級試験前の異様な落ち込み。
(それ以外でも、腹が立つことも、悲しいこともあるはずなのに…)
「ねぇ、咲」
この子はいつも冷静で、感情に押し流されることなんて滅多にない。
「はい?」
「嫌なことがあったら、いつでもお姉さんが守ってあげるからね!」
どん、と胸を叩けば、すこしポカンとして、それから彼女は、小さく笑った。
食事もお風呂も業務部が先。
防衛部の地位が一番低く、殊に特殊部隊となればそれは歴然。
しかも、今までの防衛部への嫌がらせもひどくなっていると聞く。
(独りで乗り越えてやるんだから)
広い食堂。
笠原の周りには、誰もいない。
独りだ。
元から特殊部隊は咲が入るまで女は1人。
男ばかりの中に1人でいるのは慣れていた。
慣れていたのだ。
(絶対、独りで乗り越えて見せる)
不意に隣の椅子が引かれ、もの思いにふけっていた笠原は驚く。
手に持っていた水の入ったコップを相手の方に倒してしまい、慌てて立ち上がった。
「あっごめん!
……って、どうして!!」
その顔を見て、思わず自分の声が明るくなる。
「笠原士長がもの思いにふけるなんて、らしくありませんね」
「咲!」
「布巾、もらってきます」
笑顔に抱きつきたくなるのを抑え、ひとつ頷いた。
「なんで?」
机を拭き終えて一息ついたところで、笠原が尋ねた。
「要請を受けたんです。
留守番だったはずのうちの班も」
小声で咲が肩を窄めながら返事をする。
「食べ終わったらいろいろ教えてください。
ここ、よく分からないこと多くて」
笠原はこの子にも被害が及ぶのかと、眉間にしわを寄せながら、頷いた。
話は部屋に帰ってからだと、2人は急いで食事を取る。
「2人に増えたのね、暑苦しいわ」
後の方の席から聞こえてくる悪口に、笠原は拳を握りしめる。
「堂上二正よりマシですけどね」
小声で咲が笠原に耳打ちをし、その言葉に笠原は思わず笑ってしまった。
茨木にきてから笑ったのなんて久しぶりな気がして、らしくないな、と思ってしまう。
(元気だけが取り柄みたいなものだもの)
食事を片づけて部屋に戻ると、荷物が増えている。
「私と相部屋なんです、すみません」
困ったような咲に、笠原は首をぶんぶんと振って、抱きついた。
「嬉しいよ咲!」
「防衛部の方たちにとっては、ちょっと痛手かもしれませんけれど。
2人に増えると嫌がらせがエスカレートしそうですし」
苦笑して見せる。
「それにしても、なんて言うか……
今時中学生でももう少しましじゃないかと思いますよ。
子供っぽい」
ため息をつく姿は、未成年とは思えない。
持ってきた荷物を着々と解体していく。
この口ぶりからだと、笠原もうけたいわゆる洗礼を、彼女も受けたのだろう。
5つも年上の自分が、嫌がらせに腹を立てていたことが、少し恥ずかしくなった。
(でも、腹が立つもの!)
「こういうのは、気にしたら負けです」
その強い横顔は、何の感情も見せない。
笠原はむしろ、そのほうが気がかりだった。
「感情に押し流されて、冷静さを欠けば、相手の思う壺」
彼女が冷静さを欠いたことといえば、毬江の痴漢事件の時だ。
それから、この前の昇級試験前の異様な落ち込み。
(それ以外でも、腹が立つことも、悲しいこともあるはずなのに…)
「ねぇ、咲」
この子はいつも冷静で、感情に押し流されることなんて滅多にない。
「はい?」
「嫌なことがあったら、いつでもお姉さんが守ってあげるからね!」
どん、と胸を叩けば、すこしポカンとして、それから彼女は、小さく笑った。
