本編 ーsecondー
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「受けるんだってな、昇級試験」
不意にかけられた声に、咲は振り返る。
「手塚一士……」
手塚の手元には彼に似合わぬ数冊の絵本。
「読み聞かせの本か?」
咲の手元にも数冊の絵本。
「はい。
少し迷っていて」
困り顔の咲に、手塚も自然と笑みがこぼれる。
「俺もだ」
隣に座って絵本を見る。
気落ちしている彼女のことを知っていたし、自身の兄のせいである事は気づいていた。
最近持ち直しつつある事も、遠目に気付いていた。
彼女と兄の関係がどうなったのか、立ち直ったのは仲直りしたからなのか、それとも別の形にたどり着いたからか気にならないわけではないが、聞けるはずもない。
自分はただ、彼女と兄の関係については誰にも言わないと決めていた。
それが誰の為かと聞かれたら、自分の為にと答えただろう。
関係が崩れた兄の心根の優しさははきっと遠い日のそのままで、暗い過去に捕らわれた後輩の心を解かすだろうし、彼女の繊細な心遣いは強がりな兄を救うだろう。
たとえ別れたとしても、彼らの出会いは彼らにとって、何にも変え難いものであったに違いない。
「名作に行くか、新作に行くか……
他の受験者とはかぶりたくはないしな」
咲も釣られて微笑む。
「でも、手塚一士には強力な先生がおられるではないですか」
手塚はぎくりと肩を揺らす。
「何故それを」
「先日お話し会の様子を拝見させていただきました」
「どこから……」
恥ずかしそうな様子に、咲は小さく笑った。
調子が戻ってきていることに人知れず安堵する。
「流石、柴崎一士はお上手ですね」
「全く。
あれを悪女というのだ」
「あら、誰のこと?」
手塚がまたぎくりと肩を揺らす。
「名コンビ」
咲は2人を眺めて呟く。
「褒め言葉になってないわ」
「それは失礼いたしました」
静かに立ち上がって、絵本をしまう。
「決めたのか?」
咲は俯き加減に一冊の本を抱えた。
「はい」
その優しい手つきは、まだ仲の良かった頃の兄と良く似ていた。
不意にかけられた声に、咲は振り返る。
「手塚一士……」
手塚の手元には彼に似合わぬ数冊の絵本。
「読み聞かせの本か?」
咲の手元にも数冊の絵本。
「はい。
少し迷っていて」
困り顔の咲に、手塚も自然と笑みがこぼれる。
「俺もだ」
隣に座って絵本を見る。
気落ちしている彼女のことを知っていたし、自身の兄のせいである事は気づいていた。
最近持ち直しつつある事も、遠目に気付いていた。
彼女と兄の関係がどうなったのか、立ち直ったのは仲直りしたからなのか、それとも別の形にたどり着いたからか気にならないわけではないが、聞けるはずもない。
自分はただ、彼女と兄の関係については誰にも言わないと決めていた。
それが誰の為かと聞かれたら、自分の為にと答えただろう。
関係が崩れた兄の心根の優しさははきっと遠い日のそのままで、暗い過去に捕らわれた後輩の心を解かすだろうし、彼女の繊細な心遣いは強がりな兄を救うだろう。
たとえ別れたとしても、彼らの出会いは彼らにとって、何にも変え難いものであったに違いない。
「名作に行くか、新作に行くか……
他の受験者とはかぶりたくはないしな」
咲も釣られて微笑む。
「でも、手塚一士には強力な先生がおられるではないですか」
手塚はぎくりと肩を揺らす。
「何故それを」
「先日お話し会の様子を拝見させていただきました」
「どこから……」
恥ずかしそうな様子に、咲は小さく笑った。
調子が戻ってきていることに人知れず安堵する。
「流石、柴崎一士はお上手ですね」
「全く。
あれを悪女というのだ」
「あら、誰のこと?」
手塚がまたぎくりと肩を揺らす。
「名コンビ」
咲は2人を眺めて呟く。
「褒め言葉になってないわ」
「それは失礼いたしました」
静かに立ち上がって、絵本をしまう。
「決めたのか?」
咲は俯き加減に一冊の本を抱えた。
「はい」
その優しい手つきは、まだ仲の良かった頃の兄と良く似ていた。
