本編 ーzeroー
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『ありがとう』
梅雨も明けて綺麗に晴れた図書館の中庭で、咲が差し出したのは、そんな小さなメモがページの間から顔をのぞかせている、「レインツリーの国」だった。
そのメモを引っ張り出す。
『懐かしかった。
でも、また何年もたって読みなおすと全然違った物語に感じて不思議。
やっぱりいお話だね』
続いていたその言葉に、毬江は笑顔を向け、咲に向かって頷いた。
毬江は自分が特に好きな場面について携帯に打ち込み、咲もそれについて感想をまた携帯に打った。
本のことになると、咲は饒舌になることは、この前知った。
饒舌、と言っても、普通に会話をする程度のことなのだけれど。
今まで小牧相手にしかできなかったことだけど、
同年代の女の子の方が感覚が近いこともあって、
彼とはまた違った楽しさがあった。
『またお勧め教えてね』
そう伝えると微笑みを見せる咲に、きっとこの時間が楽しいのだろうと思い、毬江もやはり嬉しくなった。
『私も読み終わったの』
思い出したようにカバンから借りていた詩集を取り出す。
さっき自分が返してもらった時のように、彼女とこの詩集について話せるんだと思うと、ワクワクした。
『私の知り合いの人がね、図書館で働いているの。
その人もこの本を知っていて、作者は図書館の人だたんだってね。
先輩に勧められたんだって。
今でもたくさんの隊士の人が読んでいるみたい。
強い言葉を持っている人だよねって言ってたよ』
一気に携帯にそう打ち込んでから顔をあげて、毬江ははっと息をのむ。
毬江はその時の咲の顔を、一生忘れることはないだろう。
「ありがとう」
彼女の唇はそう言って弧を描いた。
彼女は笑顔だった。
どの本を見るときよりも、ずっと嬉しそうだった。
「ありがとう。
ありがとう。
本当に……ありが……とう」
こんなお礼を聞いたのは、初めてだった。
心がこもるって、こういうことなんだって、肌で感じた。
「とても……とっても嬉しい」
目元が潤んでいるのが見えているけれど、気のせいだということにしよう。
そう思ったのもつかの間で、いつの間にか彼女は顔を伏せて、両手で覆っていた。
忘れられない、ずっと
梅雨も明けて綺麗に晴れた図書館の中庭で、咲が差し出したのは、そんな小さなメモがページの間から顔をのぞかせている、「レインツリーの国」だった。
そのメモを引っ張り出す。
『懐かしかった。
でも、また何年もたって読みなおすと全然違った物語に感じて不思議。
やっぱりいお話だね』
続いていたその言葉に、毬江は笑顔を向け、咲に向かって頷いた。
毬江は自分が特に好きな場面について携帯に打ち込み、咲もそれについて感想をまた携帯に打った。
本のことになると、咲は饒舌になることは、この前知った。
饒舌、と言っても、普通に会話をする程度のことなのだけれど。
今まで小牧相手にしかできなかったことだけど、
同年代の女の子の方が感覚が近いこともあって、
彼とはまた違った楽しさがあった。
『またお勧め教えてね』
そう伝えると微笑みを見せる咲に、きっとこの時間が楽しいのだろうと思い、毬江もやはり嬉しくなった。
『私も読み終わったの』
思い出したようにカバンから借りていた詩集を取り出す。
さっき自分が返してもらった時のように、彼女とこの詩集について話せるんだと思うと、ワクワクした。
『私の知り合いの人がね、図書館で働いているの。
その人もこの本を知っていて、作者は図書館の人だたんだってね。
先輩に勧められたんだって。
今でもたくさんの隊士の人が読んでいるみたい。
強い言葉を持っている人だよねって言ってたよ』
一気に携帯にそう打ち込んでから顔をあげて、毬江ははっと息をのむ。
毬江はその時の咲の顔を、一生忘れることはないだろう。
「ありがとう」
彼女の唇はそう言って弧を描いた。
彼女は笑顔だった。
どの本を見るときよりも、ずっと嬉しそうだった。
「ありがとう。
ありがとう。
本当に……ありが……とう」
こんなお礼を聞いたのは、初めてだった。
心がこもるって、こういうことなんだって、肌で感じた。
「とても……とっても嬉しい」
目元が潤んでいるのが見えているけれど、気のせいだということにしよう。
そう思ったのもつかの間で、いつの間にか彼女は顔を伏せて、両手で覆っていた。
忘れられない、ずっと