本編 ーsecondー
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「お疲れ様です」
周りが周りの反応だけに、何一つ変わらぬ咲のあいさつに、笠原は若干の戸惑いと共に感激した。
「……お疲れ、咲」
入隊前からの付き合いになる彼女。
高卒での入隊はなかなか難しく、彼女はその中でも首席で入学した。
そんじゃそこら一士よりもできのいい二士だった。
上官からの顔面認識率も高く、同時期に入隊した一士と二士、どちらからも殊に有名だった。
今年の春からは特殊部隊の配属になり、進藤班で狙撃の腕を更に磨いているらしい。
昇任試験を受験し、合格すればもう自分たちと同格になる。
ー追いつかれるのも時間の問題よー
柴崎の言葉に内心焦ったのは秘密だ。
二人は周りの視線を集めながら廊下を進む。
そんな視線を一切気にしていないような咲に、
笠原は彼女と同じ年で同じ振る舞いはできなかったであろうと感心した。
「今から夕食?」
「はい、笠原一士もですか?」
「うん、まぁね。」
「ご一緒してもいいですか?」
彼女は誰かと共に行動することはあまりない。
ましてや自分から人を誘うなんて。
どこかマイペースな人間であるということは、同期の誰もが認めていた。
だから少し周りから浮きつつも、実力が確かであるからいじめられることもなく、あの子は少し変わっているから、で通っているようだった。
なにより彼女は興味がないのだ。
誰かに評価されることに。
ただ、図書館が守れれば、彼女はそれ以上のものは求めない。
そんな彼女は、時折廊下で笠原と柴崎を見かけると一緒にご飯を食べたり、風呂に入ったりすることがあった。
下手に同期といるよりも落ち着くのだろう。
でも、それでも。
「あ、あたし柴崎と待ち合わせしてるし……」
嘘だ。
柴崎がいるなら、こんな部屋から出ることをためらって、勇気を振り絞って扉をあけるのに時間がかかるはずもない。
ただ5つも年下の女の子を巻き込みたくなかった。
いくら誰かとつるむことのない彼女でも、苦しい状況になるであろうことは容易に想像できるから。
「御迷惑でしょうか?
昨日食堂でデザートのおまけ券が当たったんで、
せっかくだからどうかなって」
少しだけ困ったような顔をしてそんなことを言われては。
「そんなことない!
あの、その、ありがとう」
柴崎ならばすぐに分かっただろうが、咲自身が笠原なりの気遣いに気付いたのかどうかを判断することはできない。
でも一緒に食堂に行ってくれるのは本当にありがたいことだった。
全ては彼女の、罪悪感故であったから。
「毬江も含め、いつもお世話になっていますから」
二人はトレイを持って席に着く。
会話は二人が共通で読んだことのある本の話から、堂上の愚痴まで、いつも幅広い。
話ができるから、年下であることをときどき忘れてしまうくらいだ。
それでも。
「咲って、甘いもの好きだよね」
笠原の声に、日替わりデザートのプリンから顔を上げる咲。
普段の涼しげなポーカーフェイスが崩れ、年相応の幼さをたたえていた。
「だって……」
恥ずかしげに小さくなる姿に思わず微笑む。
時折見せる、こんな顔がたまらなくかわいい。
手の届く範囲に座っていたら頭を撫でたいくらいだが、生憎向かい合わせに座っているため、手が届かないので我慢する。
最後の一口を食べて、満足そうに笑う笠原を不思議そうに眺める咲。
「このままお風呂行きましょうか」
彼女は今年の入隊する女性の数が奇数の上、女性の二士は彼女だけだったこともあり、今は二人部屋にひとりで生活している。
だから自分のように誘いあって食事や風呂に行く友達は、いない。
それもあってか、良く食事後そのまま笠原や柴崎と共に風呂に行くことも多い。
「そうだね」
年下の気遣いに甘えてしまうのは少し問題はあるだろうとは思うが、
ここはまた別だ、とも思う。
彼女は部下じゃなくて友達でいいじゃないかと柴崎に言ったのは、自分だ。
「んじゃいこうか」
はい、と言ってついてくる彼女に、心の中でありがとうと言った。
かわいい子
周りが周りの反応だけに、何一つ変わらぬ咲のあいさつに、笠原は若干の戸惑いと共に感激した。
「……お疲れ、咲」
入隊前からの付き合いになる彼女。
高卒での入隊はなかなか難しく、彼女はその中でも首席で入学した。
そんじゃそこら一士よりもできのいい二士だった。
上官からの顔面認識率も高く、同時期に入隊した一士と二士、どちらからも殊に有名だった。
今年の春からは特殊部隊の配属になり、進藤班で狙撃の腕を更に磨いているらしい。
昇任試験を受験し、合格すればもう自分たちと同格になる。
ー追いつかれるのも時間の問題よー
柴崎の言葉に内心焦ったのは秘密だ。
二人は周りの視線を集めながら廊下を進む。
そんな視線を一切気にしていないような咲に、
笠原は彼女と同じ年で同じ振る舞いはできなかったであろうと感心した。
「今から夕食?」
「はい、笠原一士もですか?」
「うん、まぁね。」
「ご一緒してもいいですか?」
彼女は誰かと共に行動することはあまりない。
ましてや自分から人を誘うなんて。
どこかマイペースな人間であるということは、同期の誰もが認めていた。
だから少し周りから浮きつつも、実力が確かであるからいじめられることもなく、あの子は少し変わっているから、で通っているようだった。
なにより彼女は興味がないのだ。
誰かに評価されることに。
ただ、図書館が守れれば、彼女はそれ以上のものは求めない。
そんな彼女は、時折廊下で笠原と柴崎を見かけると一緒にご飯を食べたり、風呂に入ったりすることがあった。
下手に同期といるよりも落ち着くのだろう。
でも、それでも。
「あ、あたし柴崎と待ち合わせしてるし……」
嘘だ。
柴崎がいるなら、こんな部屋から出ることをためらって、勇気を振り絞って扉をあけるのに時間がかかるはずもない。
ただ5つも年下の女の子を巻き込みたくなかった。
いくら誰かとつるむことのない彼女でも、苦しい状況になるであろうことは容易に想像できるから。
「御迷惑でしょうか?
昨日食堂でデザートのおまけ券が当たったんで、
せっかくだからどうかなって」
少しだけ困ったような顔をしてそんなことを言われては。
「そんなことない!
あの、その、ありがとう」
柴崎ならばすぐに分かっただろうが、咲自身が笠原なりの気遣いに気付いたのかどうかを判断することはできない。
でも一緒に食堂に行ってくれるのは本当にありがたいことだった。
全ては彼女の、罪悪感故であったから。
「毬江も含め、いつもお世話になっていますから」
二人はトレイを持って席に着く。
会話は二人が共通で読んだことのある本の話から、堂上の愚痴まで、いつも幅広い。
話ができるから、年下であることをときどき忘れてしまうくらいだ。
それでも。
「咲って、甘いもの好きだよね」
笠原の声に、日替わりデザートのプリンから顔を上げる咲。
普段の涼しげなポーカーフェイスが崩れ、年相応の幼さをたたえていた。
「だって……」
恥ずかしげに小さくなる姿に思わず微笑む。
時折見せる、こんな顔がたまらなくかわいい。
手の届く範囲に座っていたら頭を撫でたいくらいだが、生憎向かい合わせに座っているため、手が届かないので我慢する。
最後の一口を食べて、満足そうに笑う笠原を不思議そうに眺める咲。
「このままお風呂行きましょうか」
彼女は今年の入隊する女性の数が奇数の上、女性の二士は彼女だけだったこともあり、今は二人部屋にひとりで生活している。
だから自分のように誘いあって食事や風呂に行く友達は、いない。
それもあってか、良く食事後そのまま笠原や柴崎と共に風呂に行くことも多い。
「そうだね」
年下の気遣いに甘えてしまうのは少し問題はあるだろうとは思うが、
ここはまた別だ、とも思う。
彼女は部下じゃなくて友達でいいじゃないかと柴崎に言ったのは、自分だ。
「んじゃいこうか」
はい、と言ってついてくる彼女に、心の中でありがとうと言った。
かわいい子