本編 ーsecondー
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「一刀両断レビューね」
柴崎は知っている風だった。
「誰が書いているんでしょうか」
「砂山っていう、手塚のルームメイト。
ひどいよね」
「あいつなんかキャラ変わってきたのよねぇ。
なんか図書館問題の研究会に入ってかららしいんだけど……
図書館未来企画、だったかな?」
「……そうですか」
ほんの一瞬できた間を、柴崎は見逃さなかった。
それは彼女が未来企画を知っていることを意味する。
「なんかほら、オススメの本とか紹介するならその反対もありなんじゃないかとか言う話らしいんだよね。
テストケースらしいんだけど、何か私嫌」
口を尖らせる笠原に咲はひとつ頷く。
「企画としては面白いかもしれませんが、好きな本が批評されるのは単純に嫌ですよね」
「そうそう!
砂川もなんかその勉強会に行き始めてから感じ悪くてさー」
僅かに考え込む様子を見せる咲を柴崎は横目で観察する。
咲はそんな視線に気付いたのか何気ない顔をして柴崎を見た。
視線がかちあう。
そんな2人に気づきもしない笠原だったが、返事がないことに気づいて2人を見た。
「ちょっと聞いてる?!」
「聞いてるわよ、その話3回目だけどね」
「柴崎ー!」
咲は頭を巡らす。
互いに、疑いあっていることは薄々気づいていた。
このまま黙ったままでは疑いが深くなるばかりだ。
何か言い訳をしなければーー
「未来企画と言えば、確か手塚慧一正が会長でしたよね」
「よく知ってるわね」
「入隊試験の際に勉強しました。
まさかと思いますが、手塚一士の……」
「当たり、お兄さんよ。
ちなみにお父さんは図書館協会会長」
「それは複雑ですね」
「え、どういうこと?」
「あんたはまだわかんなくていいわ」
呆れ顔で首を振る柴崎に、無事疑いの矛先はそらされただろうかと一息つく。
彼は何をしようとしているのだろう。
全ては愛する図書館のため……その為に、稲嶺に殉じることを心に決めた自分とは、異なる道へ進む。
互いに大切にしたいことは同じはずなのに、その道が180度違うなんておかしな話だと、胸が掴まれる気がした。
つい考え込む咲の横顔を、柴崎はやはりじっと観察していた。
小さなほつれ