本編 ーsecondー
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「本日から特殊部隊配属となりました、山本です」
「同じく空太刀です」
「よろしくお願いします」
私や手塚以来の新入隊員に、特殊部隊の面々はわぁっと喝采を送る。
「あの頃は、彼女がうちに入るなんて思ってもみなかったが、今となってはどこかしっくりくるものだな」
堂上の呟きに小牧も頷く。
ランドセルを背負った頃から何度か見かけているからだろう。
なんとも感慨深いものがある。
堂上としては、自分が図書大の初めての研修で図書カードを作った利用者である咲には、不思議と目がいくし、彼女の人間性やその過去を知れば尚更だった。
同じ制服に身を包み、銃を構え、背中を預けるような関係になる事は、嬉しくも不安で、心配だが誇らしい。
「あの咲が特殊部隊初めての後輩かぁ……よしっ!」
拳をつくってやる気を漲らせる郁。
堂上は感慨深いのは自分だけではないことに、人知れず微かに目尻を下げた。
それから改めて表情を引き締め部下を見る。
「ほぉ、ではこれからの行動に期待しよう」
「あ、はい!
気をつけます!」
慌てたように敬礼する郁に、トム笑いが響いた。
「ま、可愛がってくれるのはいいが余計な手出しはするなよ」
進藤が郁と堂上の間を通って咲と山本のところに行く。
2人ともどこか硬い笑みを浮かべながらも、知り合いが上司となることに安堵しているようだ。
そしてその上司のご機嫌なことと言ったらーー
堂上が呆れたようにため息をついた。
「こう言っちゃ失礼だが……大層な親バカだな」
入浴も終え、後は自室で読書に耽るのが日課だ。
本を取り出し、スマホをポケットから出して傍に置いて少し考え込む。
随分長い間、慧に会っていない。
季節はいつの間にか春になった。
約束の公園でももう凍える事はないだろう。
それでも連絡を躊躇うのは、彼と最後に話した事がずっと引っかかっているからだ。
彼は様々な事が起きるだろうと言った。
その一つが特殊部隊への異動だったのだろうか。
彼がこれから何を始めるつもりなのか、見当など付くはずもない。
彼は自分とは違って、高い能力を持ち、それを遺憾無く発揮し、信頼され、多くの情報を持ち、それを巧みに利用できる。
自分は彼のようにはなれないと咲には分かっていた。
だからこそ自分は自分が信じた道を進み、自分のできる限りを尽くそうとーーそれでもやはり、自分の無力感に苛まれる。
日野の悪夢の生き残りとして、自分は図書館の為に何ができるのだろうか、と。
特殊部隊に配属されれば、稲嶺の作った機関に所属し、彼の為に戦える。
彼の手足となり、命を懸けて。
そこでふと、稲嶺の言葉を思い出す。
(生きる覚悟ーーか)
命を懸けてと思う自分には、まだないのだろう。
寮の自室の外、街灯の灯り、車のヘッドライト、帰路を急ぐサラリーマン、遠くで電車が駅に入る音がした。
(変わる事なく進みつづけることが、未来を変えるーーか)
潜在能力やペースは違えど、遠くにいる彼は努力家だ。
きっと今でも尚、常に自己研鑽に励んでいるに違いない。
(ならば、私が努力なくして進めるはずがない)
ー大丈夫、君なら前に進めるー
その言葉を信じてーー
配属された日のこと
「同じく空太刀です」
「よろしくお願いします」
私や手塚以来の新入隊員に、特殊部隊の面々はわぁっと喝采を送る。
「あの頃は、彼女がうちに入るなんて思ってもみなかったが、今となってはどこかしっくりくるものだな」
堂上の呟きに小牧も頷く。
ランドセルを背負った頃から何度か見かけているからだろう。
なんとも感慨深いものがある。
堂上としては、自分が図書大の初めての研修で図書カードを作った利用者である咲には、不思議と目がいくし、彼女の人間性やその過去を知れば尚更だった。
同じ制服に身を包み、銃を構え、背中を預けるような関係になる事は、嬉しくも不安で、心配だが誇らしい。
「あの咲が特殊部隊初めての後輩かぁ……よしっ!」
拳をつくってやる気を漲らせる郁。
堂上は感慨深いのは自分だけではないことに、人知れず微かに目尻を下げた。
それから改めて表情を引き締め部下を見る。
「ほぉ、ではこれからの行動に期待しよう」
「あ、はい!
気をつけます!」
慌てたように敬礼する郁に、トム笑いが響いた。
「ま、可愛がってくれるのはいいが余計な手出しはするなよ」
進藤が郁と堂上の間を通って咲と山本のところに行く。
2人ともどこか硬い笑みを浮かべながらも、知り合いが上司となることに安堵しているようだ。
そしてその上司のご機嫌なことと言ったらーー
堂上が呆れたようにため息をついた。
「こう言っちゃ失礼だが……大層な親バカだな」
入浴も終え、後は自室で読書に耽るのが日課だ。
本を取り出し、スマホをポケットから出して傍に置いて少し考え込む。
随分長い間、慧に会っていない。
季節はいつの間にか春になった。
約束の公園でももう凍える事はないだろう。
それでも連絡を躊躇うのは、彼と最後に話した事がずっと引っかかっているからだ。
彼は様々な事が起きるだろうと言った。
その一つが特殊部隊への異動だったのだろうか。
彼がこれから何を始めるつもりなのか、見当など付くはずもない。
彼は自分とは違って、高い能力を持ち、それを遺憾無く発揮し、信頼され、多くの情報を持ち、それを巧みに利用できる。
自分は彼のようにはなれないと咲には分かっていた。
だからこそ自分は自分が信じた道を進み、自分のできる限りを尽くそうとーーそれでもやはり、自分の無力感に苛まれる。
日野の悪夢の生き残りとして、自分は図書館の為に何ができるのだろうか、と。
特殊部隊に配属されれば、稲嶺の作った機関に所属し、彼の為に戦える。
彼の手足となり、命を懸けて。
そこでふと、稲嶺の言葉を思い出す。
(生きる覚悟ーーか)
命を懸けてと思う自分には、まだないのだろう。
寮の自室の外、街灯の灯り、車のヘッドライト、帰路を急ぐサラリーマン、遠くで電車が駅に入る音がした。
(変わる事なく進みつづけることが、未来を変えるーーか)
潜在能力やペースは違えど、遠くにいる彼は努力家だ。
きっと今でも尚、常に自己研鑽に励んでいるに違いない。
(ならば、私が努力なくして進めるはずがない)
ー大丈夫、君なら前に進めるー
その言葉を信じてーー
配属された日のこと