本編 ーfirstー
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「もう一年経つんだな」
山本と咲が2人揃って呼び出された。
この時期だからもしかしたら人事異動に関する打診だろうか、などと少し思ったりする。
「あっという間だったね」
「なー。
慣れるのに必死だったのに、いつの間にか訓練や仕事に追われて必死になったてさ」
「山本も慣れるのに必死だった時期があったの?」
「“も“っつーことは、お前も必死だった時期があったんだな」
いつもなんでもそつなくこなすと思っていたのはお互い様だったのかもしれない。
顔を見合わせて思わず笑う。
「また俺たちみたいな新入隊士が入ってくるのな」
「それもなんか不思議。
ーーまだ何も出来てやしないのに」
俯いて口早に発された言葉に、山本は隣を見る。
彼女は自分の事を卑下しすぎると思っていた。
自己肯定感を高めるような機会にあまり恵まれなかったのだろう。
「そんなことねぇだろ。
射撃の腕だってあれだけ良くて、この前は防衛戦の作戦だって採用されてたし」
「基礎能力が足りないんだ。
鍛錬しても、山本にはやっぱり追いつけない」
「おいおい、お前女だろ。
体格差もこれだけあって、何言ってんだ」
「……どうしたら良いんだろう。
もっと役に立ちたいのに」
澄んだ黒い瞳が、辛そうに前を見つめている。
視線の先に誰がいるんだろう。
郁だろうか、それとも進藤だろうか。
それともまた別の、憧れの誰かなのだろうか。
少なくとも自分で無い事だけは、山本にも分かっていた。
それがまるで胸に穴が空いたように虚しい。
「俺が補うよ」
気付けばそう言っていて、黒い瞳は驚いた様に山本を見上げた。
「お前の体力や力の面は俺が補ってやる。
だからお前は、射撃とここな」
頭をこつんと突くと、一瞬目を見開いてから俯き、どこか嬉しそうに目を瞬かせた。
その姿に、山本も嬉しそうに笑う。
開け放たれた窓から吹き込む風が、咲の髪をいたずらに解していく。
穏やかな昼下がり、指定された部長室をノックすると入るように指示があった。
ドアを開けると中にはあまりお見えすることのない、防衛部長が何やら書類に判子を押していた。
その前には図書特殊部隊隊長の三等図書監玄田 竜助がおり、2人は何やら楽しげに話しているらしい。
来客中とは知らなかった山本と咲は慌てて敬礼した。
「お、生きがいいのが来たな」
「あまりいじめるなよ。
少し待ってくれ……よし」
書類を整えてクリップで止めてから玄田に手渡し、部長は2人の前にやってきた。
「空太刀に山本、君達の活躍は聞き及んでいるよ」
「ありがとうございます」
「呼んだのは他でもない。
特殊部隊から2名増員を望まれてな。
それも若いのがいいという注文まで付いていた。
そこで2人特殊隊に配属しようと思う」
ま、せいぜい死なないように頑張れよ。
そう付け足して、にやりと笑って肩を叩かれた。
「返事は?」
どすの利いた玄田声が、ポカンとする2人に飛んできた。
「はい!
精一杯頑張ります!」
「よろしくお願いいたします!」
山本と咲は胸を張って敬礼した。
にやりと笑う玄田。
防衛部に配属されて2度目の春がやってきた。
人事異動
山本と咲が2人揃って呼び出された。
この時期だからもしかしたら人事異動に関する打診だろうか、などと少し思ったりする。
「あっという間だったね」
「なー。
慣れるのに必死だったのに、いつの間にか訓練や仕事に追われて必死になったてさ」
「山本も慣れるのに必死だった時期があったの?」
「“も“っつーことは、お前も必死だった時期があったんだな」
いつもなんでもそつなくこなすと思っていたのはお互い様だったのかもしれない。
顔を見合わせて思わず笑う。
「また俺たちみたいな新入隊士が入ってくるのな」
「それもなんか不思議。
ーーまだ何も出来てやしないのに」
俯いて口早に発された言葉に、山本は隣を見る。
彼女は自分の事を卑下しすぎると思っていた。
自己肯定感を高めるような機会にあまり恵まれなかったのだろう。
「そんなことねぇだろ。
射撃の腕だってあれだけ良くて、この前は防衛戦の作戦だって採用されてたし」
「基礎能力が足りないんだ。
鍛錬しても、山本にはやっぱり追いつけない」
「おいおい、お前女だろ。
体格差もこれだけあって、何言ってんだ」
「……どうしたら良いんだろう。
もっと役に立ちたいのに」
澄んだ黒い瞳が、辛そうに前を見つめている。
視線の先に誰がいるんだろう。
郁だろうか、それとも進藤だろうか。
それともまた別の、憧れの誰かなのだろうか。
少なくとも自分で無い事だけは、山本にも分かっていた。
それがまるで胸に穴が空いたように虚しい。
「俺が補うよ」
気付けばそう言っていて、黒い瞳は驚いた様に山本を見上げた。
「お前の体力や力の面は俺が補ってやる。
だからお前は、射撃とここな」
頭をこつんと突くと、一瞬目を見開いてから俯き、どこか嬉しそうに目を瞬かせた。
その姿に、山本も嬉しそうに笑う。
開け放たれた窓から吹き込む風が、咲の髪をいたずらに解していく。
穏やかな昼下がり、指定された部長室をノックすると入るように指示があった。
ドアを開けると中にはあまりお見えすることのない、防衛部長が何やら書類に判子を押していた。
その前には図書特殊部隊隊長の三等図書監玄田 竜助がおり、2人は何やら楽しげに話しているらしい。
来客中とは知らなかった山本と咲は慌てて敬礼した。
「お、生きがいいのが来たな」
「あまりいじめるなよ。
少し待ってくれ……よし」
書類を整えてクリップで止めてから玄田に手渡し、部長は2人の前にやってきた。
「空太刀に山本、君達の活躍は聞き及んでいるよ」
「ありがとうございます」
「呼んだのは他でもない。
特殊部隊から2名増員を望まれてな。
それも若いのがいいという注文まで付いていた。
そこで2人特殊隊に配属しようと思う」
ま、せいぜい死なないように頑張れよ。
そう付け足して、にやりと笑って肩を叩かれた。
「返事は?」
どすの利いた玄田声が、ポカンとする2人に飛んできた。
「はい!
精一杯頑張ります!」
「よろしくお願いいたします!」
山本と咲は胸を張って敬礼した。
にやりと笑う玄田。
防衛部に配属されて2度目の春がやってきた。
人事異動