本編 ーfirstー
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「ちょっといいかな」
本を読んでいると声がかかり、何か光るものが目の前を通り過ぎた。
首元を温もりがかすめ、ひやりとした感覚。
慧がペンダントをつけたことを知る。
「慧さん……?」
彼は満足げにほほ笑んだ。
「一目見て気に入ってね」
鎖が短めであるため、咲からはどんなデザインなのかは分からない。
ただ、触れた指の感触から、それが花の形をしているらしいことは分かった。
クリスマスでもない。
誕生日でもない。
そもそもプレゼントなんてものは互いにあげることなんてしない。
もう2年の付き合いになるが、もらったのは卒業時の花束くらいだ。
何かを贈ると言うことは、それだけ相手を縛ると言うことになる。
知らぬ存ぜぬで過ごしてきている互いの距離を、縮めてしまいかねない。
(それなのに、何を思ってのプレゼントなのだろう?)
疑問は浮かんでくるが、理由なんて考えても考えてもわからなかった。
慧の顔を見上げれば、優しく細められた瞳がある。
それを見て、咲はほうっとため息をついた。
理由なんていらないのだ、と。
その瞳に近づきたくて、手を伸ばして頬に触れる。
「ありがとう……大切にします」
自然と緩む頬。
彼もまた頬に触れ、そして抱きしめてくれた。
嬉しいな、と耳元で声がする。
結局はそれだけなんだ。
この一瞬の笑顔が見たい。
何も生まない刹那主義。
罪悪感が胸を占める。
愛おしい温もりが、同時に胸を締め上げるようだ。
深いことは考えないよう、必死に頭の隅に追いやる。
それが二人の決まりごと。
そうでなければ自分達のこの平和は、存在し得ない。
カミツレのペンダント
本を読んでいると声がかかり、何か光るものが目の前を通り過ぎた。
首元を温もりがかすめ、ひやりとした感覚。
慧がペンダントをつけたことを知る。
「慧さん……?」
彼は満足げにほほ笑んだ。
「一目見て気に入ってね」
鎖が短めであるため、咲からはどんなデザインなのかは分からない。
ただ、触れた指の感触から、それが花の形をしているらしいことは分かった。
クリスマスでもない。
誕生日でもない。
そもそもプレゼントなんてものは互いにあげることなんてしない。
もう2年の付き合いになるが、もらったのは卒業時の花束くらいだ。
何かを贈ると言うことは、それだけ相手を縛ると言うことになる。
知らぬ存ぜぬで過ごしてきている互いの距離を、縮めてしまいかねない。
(それなのに、何を思ってのプレゼントなのだろう?)
疑問は浮かんでくるが、理由なんて考えても考えてもわからなかった。
慧の顔を見上げれば、優しく細められた瞳がある。
それを見て、咲はほうっとため息をついた。
理由なんていらないのだ、と。
その瞳に近づきたくて、手を伸ばして頬に触れる。
「ありがとう……大切にします」
自然と緩む頬。
彼もまた頬に触れ、そして抱きしめてくれた。
嬉しいな、と耳元で声がする。
結局はそれだけなんだ。
この一瞬の笑顔が見たい。
何も生まない刹那主義。
罪悪感が胸を占める。
愛おしい温もりが、同時に胸を締め上げるようだ。
深いことは考えないよう、必死に頭の隅に追いやる。
それが二人の決まりごと。
そうでなければ自分達のこの平和は、存在し得ない。
カミツレのペンダント