本編 ーzeroー
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一体このメールはどこまで広がっているのだろう。
いつかあの人たちに届くのだろうか。
それは幼いころに置いてきた"感情"というものを呼び覚ましそうで、
どこか怖い。
それでも。
「ーー送信完了」
書き続けるのは、本当は呼び覚ましたいからなのかもしれない。
遠い昔に両親が互いを愛し合っていたように、自分も心を委ねてもいいと思える人たちに出会いたいと、そう思っているのかもしれない。
いやでも、と、首を横に振る。
やはりそれは怖い。
途方に泣き暮れるような無意味なことなんてしたくはない。
結局堂々巡り。
(臆病者なんだ、私は。
両親の様には、なれない)
溜息をついて、胸のわだかまりを吐き出そうとするけれど、やはりいつも通り無意味な気がした。
画面に出たポップアウトを消して、パソコンを閉じる。
そろそろお風呂を入れなければ。
「笠原、この前見せた話の続き、来てるわよ。
転送しといたから。」
風呂上がりに柴崎にそう声をかけられ、郁は部屋にかえって早速パソコンを開けた。
小さな女の子にぴったりの本を探すために駆け回る新人男性隊員の話だった。
前回の登場人物が脇役として登場していて、話が広がっていく感覚が楽しくもある。
口下手で、でも真面目で、大人の対応はうまくできるのに、小さな女の子ひとりにはうまく対応しきれない。
本人は必死だろうが、周りの上司や年配の利用者は、その様子を温かく見つめている。
最後にお礼を言われるシーンでは、郁もほっと心が休まった。
「この展開好きー」
「うまく広い年代層を狙って書いてあるわね。
作者が気になるわ」
「柴崎も捕まえられてないの?」
「これはどうもうまく情報入らないのよ」
彼女の手に入らないなんて相当だな、と思う。
「作者の人、大丈夫なのかな」
「ま、個人のメールの範囲のことだから、作者に特に問題はないでしょ。
こんなのにまでピリピリしていたら、良化委員会の力が落ちてきていることを示しているようなもんだし。
上手く抜け穴狙った感じね」
柴崎が褒めるなんて珍しい。
郁にとっては自分たちの仕事をこうして認めてくれる人がいて、それが文字になっていることが、何よりも感慨深かった。
思いを作る人、思いを受け取る人
いつかあの人たちに届くのだろうか。
それは幼いころに置いてきた"感情"というものを呼び覚ましそうで、
どこか怖い。
それでも。
「ーー送信完了」
書き続けるのは、本当は呼び覚ましたいからなのかもしれない。
遠い昔に両親が互いを愛し合っていたように、自分も心を委ねてもいいと思える人たちに出会いたいと、そう思っているのかもしれない。
いやでも、と、首を横に振る。
やはりそれは怖い。
途方に泣き暮れるような無意味なことなんてしたくはない。
結局堂々巡り。
(臆病者なんだ、私は。
両親の様には、なれない)
溜息をついて、胸のわだかまりを吐き出そうとするけれど、やはりいつも通り無意味な気がした。
画面に出たポップアウトを消して、パソコンを閉じる。
そろそろお風呂を入れなければ。
「笠原、この前見せた話の続き、来てるわよ。
転送しといたから。」
風呂上がりに柴崎にそう声をかけられ、郁は部屋にかえって早速パソコンを開けた。
小さな女の子にぴったりの本を探すために駆け回る新人男性隊員の話だった。
前回の登場人物が脇役として登場していて、話が広がっていく感覚が楽しくもある。
口下手で、でも真面目で、大人の対応はうまくできるのに、小さな女の子ひとりにはうまく対応しきれない。
本人は必死だろうが、周りの上司や年配の利用者は、その様子を温かく見つめている。
最後にお礼を言われるシーンでは、郁もほっと心が休まった。
「この展開好きー」
「うまく広い年代層を狙って書いてあるわね。
作者が気になるわ」
「柴崎も捕まえられてないの?」
「これはどうもうまく情報入らないのよ」
彼女の手に入らないなんて相当だな、と思う。
「作者の人、大丈夫なのかな」
「ま、個人のメールの範囲のことだから、作者に特に問題はないでしょ。
こんなのにまでピリピリしていたら、良化委員会の力が落ちてきていることを示しているようなもんだし。
上手く抜け穴狙った感じね」
柴崎が褒めるなんて珍しい。
郁にとっては自分たちの仕事をこうして認めてくれる人がいて、それが文字になっていることが、何よりも感慨深かった。
思いを作る人、思いを受け取る人