本編 ーfirstー
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「司令、おはようございます」
「おはよう、早いんだね」
咲は足元のプランターに目を落とした。
それはボランティア団体が管理する花だ。
新入隊員の多くも半ば強制的に参加させられる水遣りであるがーー
「ええ。
好きなんです」
彼女の呟きの穏やかさに、稲嶺は笑みを零した。
植えられた色とりどりのパンジーやビオラに、彼女が撒いた水がきらきらと光を反射する。
もうすぐ問題をはらむ資料の輸送があり、物騒な話も出ている。
目の前の彼女はその任務にはついておらず、告別式の方の警備にあたっている。
それを知った時に心のどこかで僅かに安堵した自分に気付き、覚悟が足りないと頭を掻いたものだ。
制服もずいぶん馴染んできたように見える。
班の山本君ともうまくやっているようだし、報告では狙撃の腕が新入隊員の中でもずば抜けていると聞く。
自分たちの大切なものを奪った狙撃の腕がいいのも、どこか複雑な思いかもしれない、と微かな心配が頭を掠めたのも記憶に新しい。
いつかは彼女を死地に送る命令を出さなければならないだろう。
躊躇いは、彼女への侮辱になるだろう。
だが同時にそれは、伴侶を失った老人にとって長年成長を見守ってきた孫のような存在への、当然の愛情でもあった。
「たまにはこうして早く来るのもいいものだね」
爽やかな晴れ間に、ぽつりとつぶやく。
失った右足で踏ん張って作ってきたこの図書館。
そこにようやく足を踏み入れた、新しい風。
「また来てもいいかな?」
じょうろのさきから溢れる水が、きらきら光る。
お待ちしています
「おはよう、早いんだね」
咲は足元のプランターに目を落とした。
それはボランティア団体が管理する花だ。
新入隊員の多くも半ば強制的に参加させられる水遣りであるがーー
「ええ。
好きなんです」
彼女の呟きの穏やかさに、稲嶺は笑みを零した。
植えられた色とりどりのパンジーやビオラに、彼女が撒いた水がきらきらと光を反射する。
もうすぐ問題をはらむ資料の輸送があり、物騒な話も出ている。
目の前の彼女はその任務にはついておらず、告別式の方の警備にあたっている。
それを知った時に心のどこかで僅かに安堵した自分に気付き、覚悟が足りないと頭を掻いたものだ。
制服もずいぶん馴染んできたように見える。
班の山本君ともうまくやっているようだし、報告では狙撃の腕が新入隊員の中でもずば抜けていると聞く。
自分たちの大切なものを奪った狙撃の腕がいいのも、どこか複雑な思いかもしれない、と微かな心配が頭を掠めたのも記憶に新しい。
いつかは彼女を死地に送る命令を出さなければならないだろう。
躊躇いは、彼女への侮辱になるだろう。
だが同時にそれは、伴侶を失った老人にとって長年成長を見守ってきた孫のような存在への、当然の愛情でもあった。
「たまにはこうして早く来るのもいいものだね」
爽やかな晴れ間に、ぽつりとつぶやく。
失った右足で踏ん張って作ってきたこの図書館。
そこにようやく足を踏み入れた、新しい風。
「また来てもいいかな?」
じょうろのさきから溢れる水が、きらきら光る。
お待ちしています