本編 ーfirstー
名前変換
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肩にかかった重みに隣を見る。
「……慧さん」
名前を呼んでしまってから、慌てて口を閉じた。
しかし起きる気配はない。
本を膝の上で開いたまま、彼は夢を見ているようだった。
よほど疲れていたのだろう。
さすがに成人男性の体は重いが、今はその重みも、体温もひどく心地よい。
大きな彼の手に触れた。
温かい、大きな手。
前も思ったけれど、この手に大切に触れられる本は本当に幸せだと思う。
不意に感じた動きに見上げれば、慧の目が覚めてしまったようだ。
あくびをかみ殺して咲を見下ろす。
そして咲のとろんとした表情を見て一言。
「一緒に昼寝、するか」
東屋のベンチの端は柱に接しているから安定することができる。
彼はそこまでずるずるとさがるともぞもぞと丁度いい場所を探して深く座った。
それからおいで、と咲に手を伸ばす。
ゆるゆると、その手に近づけば抱き寄せられ、ほうっと耳元でため息がする。
温かい温もり、腕の重み、慧の呼吸音。
2人のこの関係の為に伏せられた多くの矛盾。
どこまでも穏やかな、昼下がりはそれを隠す眠りに誘う。
おやすみなさい