本編 ーfirstー
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「咲!今からお昼?」
廊下でばったり会った郁に、咲は、はい、とうなずいた。
「んじゃ一緒に食べよ!
柴崎とも約束してるの。」
明るく元気な先輩の誘いを断る理由もなく、また、はい、と頷いてついていく。
高校時代は毬江とは付き合いがあったものの、他のクラスメイトとは特に会話らしい会話もしなかった。
だからだろうか。
図書館隊に入ってからというもの、毎日が人との関わりの中にあるのが、どこか心地よい疲労を与えてくれている。
途中で柴崎と落ち合う。
お疲れ様ですと挨拶して頭を下げると、相手もお疲れ様と穏やかに微笑んだ。
そのまま食堂に向かい、メニューを覗く。
限定30食のふわとろたまごのオムライスがまだあればこれにしようと決めて列に並ぶ。
無事購入に至り、3人で席に着いた。
郁と柴崎が隣、咲ほ柴崎の正面だ。
「……ったく今日なんて堂上教官がさぁ」
郁の言葉に柴崎が苦笑を洩らす。
図書特殊部隊は選りすぐりのエリートが大変というのだ、自分にとっては、はるか遠い存在だろう。
なにせ咲は郁のように実技が強くはない。
真っ先に危険に飛び込む分、図書特殊部隊には実技の能力の高さが必要だ。
座学ができても、ダメ。
そう思う度、心が沈む。
特殊部隊の存在は、知らず知らずのうちに咲憧れの対象となっていた。
稲嶺が築き上げたその最重要組織に入れたら、どんなに嬉しいだろうか。
図書館を守るため最前線に立てたならーー命さえ惜しくはないのに、と。
そんな薄暗い尊き願いを思う度、咲はこれまで以上に業務や訓練に励んできた。
でもその一方で、郁はそんな暗さを感じさせない。
危険と隣り合わせの現場で、こんなにも力いっぱい躍動する。
それがあまりに眩しい。
「今日も堂上教官の話」
咲の小さな呟きが聞こえなかったのか、郁が首をかしげる。
こんなにも可愛らしく、初々しく誰かを想う人が銃を握り最前線に立つのだと思うと、どこかモヤモヤした。
「毎日毎日、飽きもせず。
お二人は本当に仲がいいですね」
早口につぶやかれたその言葉に、郁がだんっと机をたたいて立ち上がった。
「誰があんなチビと仲がいいって?!」
そういうところ、と指摘するのは心の中だけにしておく。
ふと手塚慧を想った。
思っていることを全て言うことも、互いのことを聞くことも、些細を話すこともない。
互いの日常を伏せ、上辺だけで接するのに、互いの根幹が似ている気がして離れられない。
柴崎は咲をチラリと見る。
怒る郁に反応する事もなく、視線さえ微妙に郁からずれていて、何を思っているのだろうかと。
咲の過去に既に気づいている柴崎は、郁の良さはもしかしたらこの子には眩し過ぎるのかもしれないと思った。
そしてその眩しさは時に薬になり、時に毒になるとも。
「ほう、それは誰のことだ笠原。
食堂だ、もう少し静かにしたらどうだ?」
「堂上……教官……」
青筋を立てる堂上と、それを見て、まずい、と顔をひきつらせる笠原。
歳は上の二人なのに、そのやり取りが本当におかしくて、温かくて、初々しくて、咲は微かに目を細め、そして、俯いて食事を再開した。
目の前の幸せから目を背ける様だと気付いたのは、柴崎だけだった。
眩しき憧れ
廊下でばったり会った郁に、咲は、はい、とうなずいた。
「んじゃ一緒に食べよ!
柴崎とも約束してるの。」
明るく元気な先輩の誘いを断る理由もなく、また、はい、と頷いてついていく。
高校時代は毬江とは付き合いがあったものの、他のクラスメイトとは特に会話らしい会話もしなかった。
だからだろうか。
図書館隊に入ってからというもの、毎日が人との関わりの中にあるのが、どこか心地よい疲労を与えてくれている。
途中で柴崎と落ち合う。
お疲れ様ですと挨拶して頭を下げると、相手もお疲れ様と穏やかに微笑んだ。
そのまま食堂に向かい、メニューを覗く。
限定30食のふわとろたまごのオムライスがまだあればこれにしようと決めて列に並ぶ。
無事購入に至り、3人で席に着いた。
郁と柴崎が隣、咲ほ柴崎の正面だ。
「……ったく今日なんて堂上教官がさぁ」
郁の言葉に柴崎が苦笑を洩らす。
図書特殊部隊は選りすぐりのエリートが大変というのだ、自分にとっては、はるか遠い存在だろう。
なにせ咲は郁のように実技が強くはない。
真っ先に危険に飛び込む分、図書特殊部隊には実技の能力の高さが必要だ。
座学ができても、ダメ。
そう思う度、心が沈む。
特殊部隊の存在は、知らず知らずのうちに咲憧れの対象となっていた。
稲嶺が築き上げたその最重要組織に入れたら、どんなに嬉しいだろうか。
図書館を守るため最前線に立てたならーー命さえ惜しくはないのに、と。
そんな薄暗い尊き願いを思う度、咲はこれまで以上に業務や訓練に励んできた。
でもその一方で、郁はそんな暗さを感じさせない。
危険と隣り合わせの現場で、こんなにも力いっぱい躍動する。
それがあまりに眩しい。
「今日も堂上教官の話」
咲の小さな呟きが聞こえなかったのか、郁が首をかしげる。
こんなにも可愛らしく、初々しく誰かを想う人が銃を握り最前線に立つのだと思うと、どこかモヤモヤした。
「毎日毎日、飽きもせず。
お二人は本当に仲がいいですね」
早口につぶやかれたその言葉に、郁がだんっと机をたたいて立ち上がった。
「誰があんなチビと仲がいいって?!」
そういうところ、と指摘するのは心の中だけにしておく。
ふと手塚慧を想った。
思っていることを全て言うことも、互いのことを聞くことも、些細を話すこともない。
互いの日常を伏せ、上辺だけで接するのに、互いの根幹が似ている気がして離れられない。
柴崎は咲をチラリと見る。
怒る郁に反応する事もなく、視線さえ微妙に郁からずれていて、何を思っているのだろうかと。
咲の過去に既に気づいている柴崎は、郁の良さはもしかしたらこの子には眩し過ぎるのかもしれないと思った。
そしてその眩しさは時に薬になり、時に毒になるとも。
「ほう、それは誰のことだ笠原。
食堂だ、もう少し静かにしたらどうだ?」
「堂上……教官……」
青筋を立てる堂上と、それを見て、まずい、と顔をひきつらせる笠原。
歳は上の二人なのに、そのやり取りが本当におかしくて、温かくて、初々しくて、咲は微かに目を細め、そして、俯いて食事を再開した。
目の前の幸せから目を背ける様だと気付いたのは、柴崎だけだった。
眩しき憧れ