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「っ!」
図書館で虎のような大きな図書隊員と鉢合わせした時、咲はひとつ思い出したことがあって、思わず声をあげそうになった。
慌てて書棚に逃げ込む。
(そうだ、あの人、ここにきていた人だ。
あの虎と話していた人)
親しげに話していたから、気の置けない間柄なのだろう。
「玄田一正、週刊新世相の折口さんが来られましたよ、この前の件だそうです」
どじょーさんが虎に話しかけている。
そして咲は。
(しゅうかんしんせそう)
新しい言葉を覚えた。
「またか。
この作業が終わったら向かうと伝えてくれ」
咲は検索用パソコンのところに行き、いろいろとキーワードを試してみる。
そして、お目当てのものを見つけた。
「そう言えば玄田一正がさっき、小さい子供にぶつかりかけてな。
たぶん一正の視線からじゃ見えなかったんだろう。
子どもの方が目を見開いて驚いていて、かわいそうなくらいだった」
夕食を食べながら、堂上が小牧にそう言って笑った。
「で、どじょーさんはどうしたの?」
子どもの話題になると必ずこの名前で呼ばれ、堂上は眉をひそめる。
「どじょーじゃない!
どうもこうもない。
すぐに書棚に隠れて行ったからな」
小牧はそれがおかしいのかくすくすと笑った。
「一声くらいかけてあげればよかったのに」
それこら、そういえば、と小牧は言葉を続けた。
「あの子、よく来てるよね」
「ぶつかりかけたのもあいつだ」
「そうなんだ」
図書大学校のOJTは学年が進むと当然増えてくる。
2年生になり、防衛部と一緒に見回りを行う事も増え、彼女が図書館によく来ていることを知るまでに時間はかからなかった。
「本当に、声かけてあげればいいのに」
「……相手は子どもだ、忘れているだろう」
「それでもさ、いいじゃないか。
初めて図書カードを作ってあげた子だろ」
「おいその初恋相手みたいな表現やめろ」
そのツッコミが小牧のツボに入ったのか、お腹を抑えて必死に笑いを堪えている。
堂上は呆れたような視線を送り、定食を食べ進める。
しばらくしてようやく落ち着いた小牧は涙を拭きながら水を飲んだ。
「でもほら、子どもの成長なんて、あっという間だよ。
気づけば隣に立って、一緒に仕事していたりしてね」
「その頃には俺達は、それこそ玄田一正くらいか?」
「なるほど。
その頃になれば歳の差も気にならないだろうね」
「いい加減そのネタから離れろ」