本編前
名前変換
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図書館の検索で名前をかける。
(あった、竹内かよこ)
最近咲がはまっている作家だ。
まだ新人で作品数は少ない。
だからこそ、見つけた時の嬉しさがある。
「……その人」
不意に後から声をかけられて驚いて振り返る。
図書隊の制服に身を包んだ、男性だった。
そしてその人は先日、本を守ろうとして怪我をした咲を助け、医務室まで運んでかれた人だった。
それに気づいたのは緒方もだった。
「あっ」
思わず驚きの声を出してしまったことに気づいて、慌ててしゃがんで小声で尋ねた。
「もう傷はいいのか」
咲はひとつ頷いて、瘡蓋がもうほとんど剥がれて跡が残るばかりになった膝をちょいっと見せた。
跡もじきに目立たなくなっていくだろう。
「よかった、あの時はありがとう」
咲は恥ずかしくなって首を振った。
「竹内先生を知っているのかい?」
咲はこくりと頷いた。
「それ、探していたのか?」
画面に映し出されたのは、緒方が狩った、あの竹内かよこの処女作品がのる雑誌だった。
「処女作はこれだと知って、読んでみたかったんです。
でも学校になくて」
ふわっと花がほころぶように、小さな笑顔を浮かべた咲に、緒方は転職して本当に良かったと思った。
それにしてもこんな小さい子が処女作なんていう難しい言葉を知っているとはと、舌を巻く。
「来週、新刊がでるから、とっておいてやろうか?」
そう問いかけると、黒い目がきらきら輝く。
「お兄さんも、竹内先生が好きなんですか?」
突然の質問に、質問の意味は分かっているのに、緒方は狼狽える。
(なにをいまさら、)
そう心で言い聞かせ、精一杯の愛想のいい顔をして見せた。
「そうだよ」
意味