本編前
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「おじさん、本がよれてるよ」
男はあまりに驚いたために、肩が跳ね上がった。
誰もいないことを確認して本を漁っていたというのに、
声をかけてきたランドセルの少女は、本を隠すために急いで詰め込んでいる旅行鞄の中を覗き込んで、丁寧に入れ直している。
(まずい、まず過ぎる――)
こんなときどうするかなんて考えていなかった。
とりあえず、目立たないように逃げるのが一番だろう。
「……あ、ありがとう。
この本、やっぱりいらないから、返すの手伝ってくれないかい?」
どもりながらもなんとかそう言う。
咄嗟にしては上手いこと言った。
手伝ってもらっている間に逃げればいいのだ。
「わかった」
少女は旅行鞄から本を取り出して、近くの机の上に並べ始めた。
(書庫にガキって……迷子か?)
ちらりと少女の手元を見ると、本はきちんと番号順に並べられている。
(……じゃねぇみたいだな)
男はとりあえず遠くの棚に直すふりをして書庫を出た。
「その本どうしたの?」
つい先日カードを作ってあげた少女が、地下書庫の、それも上の方の書棚に本を直そうとしていて、それが彼女には不釣り合いなタイトルだったので、小牧は思わず声をかけてしまった。
少女は梯子の上で驚いたように小牧を見、小さく首を振って、危なっかしく本を棚にしまった。
「忘れ物」
彼女はそう言って、小牧にくるりと背中を向けてさっさと歩いて行ってしまった。
その近くに置かれた少女には不釣り合いな大きな黒色の旅行鞄と、並べられた本。
嫌な予感に、実習中担当してくれている指導教官に確認をすると、すぐに防犯カメラの映像確認を求められた。
「偶然かなぁ……」
どじょー、というニックネームが浸透しつつある堂上も、首をかしげる。
「だが何ともなくて良かったな」
子どもが良化委員と接触して事件になったりでもしたら、目も当てられない。
「そうだね。
もし意図してあんなことをしたなら、二度とあんなことしないように注意してあげないと」
「ずいぶん心配してるな」
「ん?
ああ、近所にも同じ年ごろの子がいて、つい、ね」
ちびっこ図書館隊員