リクエストー大人の階段ー
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『情報屋』と称される柴崎は、大人の女性と言うにふさわしい。
慧欲しがるほどの頭の切れと、誰もが振り返る美貌。
案外あけすけな感じがいい味をだしている。
仲間思いで、ときどき危うそうに見えるのがまた魅力。
(文句なしの大人の女性だ。)
『熱血バカ』と称される郁は、言葉の通りの人で、そこがかわいいと思う。
おっちょこちょいなところや真っ直ぐなところがたまらない。
そんなかわいさの中で、ときどき見せるお姉さんの顔はぐっと大人っぽく見える。
着替えているときなんか、滴る汗が妙に色っぽく見えて、目を背けたことだってある。
(・・・案外大人だ。)
『小牧教官のお姫様』と言われる毬江は、自慢の友達だ。
白い肌に栗色の巻髪の、お人形さんのような容姿に控えめな性格。
柴崎とはまたタイプは違うが、こちらも誰もが振り返る美貌の持ち主だ。
最近は料理の腕も上げ、奥様度も急上昇中。
(一歳しか変わらないはずなのに・・・。)
咲は書棚の前で肩を落とした。
彼はこの前会った時、ソファに押し倒した咲の耳に吹き込んだのだ。
ー今度会う時に、俺を落としてご覧。ー
ほぼ強制的な響きのある囁きに、真赤になって、これ以上ないというほど焦って。
ーそん・・・な!ー
でも彼は余裕の表情でふっと笑った。
吐息が耳にかかって、咲はぐっと目を閉じる。
ー宿題だよ。
その賢い頭で考えて。
・・・楽しみだ。ー
鼻先が首筋に埋もれる。
ぬくもりに咲は淡く声を上げた。
恥ずかしくてたまらなくて、眩暈がした。
大人の女性のいろは
彼を落とす女の魅力
セクシーな女
この系列に直すべき本、『ドキっとさせる女のしぐさ』。
咲はそれを書棚に直しかけて、あたりを見回し、恐る恐るそれを開いた。
『彼の隣りに座る時、腕を組む時に、胸のやわらかさや二の腕の質感を伝えるように、そっと彼に押し当ててみましょう。』
(こ、こういうのは美人な柴崎士長が手塚士長にすると・・・)
ちらりと想像しただけで、想像の中の手塚とともに顔が熱くなる。
慌ててページをめくった。
『「これ、外してくれる?」
と、彼にあなたのつけているネックレスを外してもらいましょう。
あらわになるあなたの首筋、耳の後ろから香るほのかな香り、後ろ抱っこのポジション。』
(こういうのは、笠原士長が堂上二正に・・・)
恥ずかしそうに振り返りながら言う郁に、堂上はきっと驚くだろうが、必死に仏頂面を保とうとするに違いない。
(それから・・・)
更に顔が熱くなり、ブンブンと振ってページをめくる。
ー彼の肌から手を離す時は、余韻を残すようにゆっくり離します。
これだけで、タッチの色気が増すんです。ー
(毬江が小牧さんに・・・ってもうだめ!!!)
パタン
と本を閉じてしまって、咲は自分が立てたその音に驚き、慌てて本を書棚にしまう。
そして逃げるように他の書棚へと移った。
(私はこういうタイプじゃない・・・。
そもそも相手が強敵すぎる。)
一回り以上年上、才色兼備に権力まである慧が、今までどれ程の女性と付き合ってきたのか。
どんなにレベルの高い女性と付き合ってきたのか。
考えるまでもないだろう。
それだけでもショックなのに、宿題と来たものだ。
柴崎ならどうするだろう・・・
郁なら・・・?
毬江なら・・・?
考えるだけでやはり溜息が出てしまって、咲は足早にその書棚の前を立ち去った。
そんな咲の背中を眺めていた長身の影が、書棚に落ちる。
(・・・空太刀のやつ、兄貴となにか・・・?)
そんな頑なな少年の指が、咲の読んでいた本の背表紙を滑る。
(柴崎には相談したのだろうか・・・
ちょっと聞いてみた方がいいだろうか・・・
・・・いや、それはお節介か。)
『ドキっとさせる女のしぐさ』という本をじっと見つめて考え込んでいる手塚の姿は、思わず小声で隣の友達に教えたくなるほど奇妙なのだが、本人の気づくところではない。
バディだった郁に見つけられて、死ぬほど恥ずかしい思いをするまで、あと少し。
二段目