リクエストー大人の階段ー
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「ねぇあんた。」
柴崎が乾燥を待つ咲に声をかけた。
にやりとした笑顔が様になりすぎていて怖い。
「あれ、どうしたの?」
咲はふいっと乾燥機に目を移した。
「あれ、とは。」
「とぼけない。」
「とぼけているわけではないのですが。」
「あんたの表情読み取れないほど、あたし鈍くないけど。」
どうやら逃げられないらしいと、咲は柴崎を恐る恐る見る。
「私の見立て、正しかったかしら?」
咲の頬にかぁっと赤が差し、ばっと顔を背ける。
「あら?
もしかして予想以上の好感触!?」
女子トークモードの柴崎に、咲はたじろぐ。
「違っ!」
反応してしまってからまずいと思う。
このままでは柴崎の思うツボだ。
「何が違うのかしら?」
妖艶な微笑みは狩人のごとし。
彼女がネタを見つけて放すはずがないのだ。
「笠原みたいなオチは辞めてよ?」
郁にどんなオチがあったのか咲には見当がつかないが、何やら柴崎にはずいぶん笑える話だったらしい。
思い出しただけで頬が微かに上がっている。
「気に入ってもらえた?
次の参考に聞かせなさいよ。」
ー大人な咲、見てみたいな。ー
耳元の囁きが、蘇る。
やわらかな吐息までも。
それだけで耳まで赤くなった。
「い、言えるわけないじゃないですか!」
ー大人って、どんな?ー
優しいのはいつも通りなのに、意地悪な囁きが、耳に吹き込まれた。
優しく髪を梳かれ、彼が触れているのは髪のはずなのに、手の熱が伝わってきた。
恥ずかしくて、震えてしまって、そんな子どもな自分がまた恥ずかしくて。
「言えないようなことになったの?
ん?
お姉さんに吐いちゃいなさい。」
「そんなことはっ!!」
「じゃあ教えなさいよ。」
にやにや笑いが止まらない柴崎によってどんどんドツボに嵌っていく。
大きな手が二の腕を辿って、頬に添えられた。
見上げた先で、いつの間にか慧は眼鏡をはずしていた。
逆光になって咲を見下ろす姿は、手塚をかばった日にも見た。
でもその時とは全く違う。
余裕の笑みは妙に色っぽくて、そう思えばまた動悸が速くなって。
近づいてくる顔にできるだけ強く目を閉じて、そして・・・
ピーッピーッピーッ
咲は我に返って乾燥機から洗濯物を取り出す。
「お、お先でしたッ!!!」
ばっと頭を下げるとその拍子に靴下を落とし、それを慌てて拾って、洗濯室から一目散に駆け出した。
「まーったく、可愛いんだから。」
まだしばらくかかりそうな洗濯機に肘をついて、柴崎は目を細めた。
「どう?
なかなかのチョイスだったでしょう?」
そう言えば電話の向こうで、男は笑った。
ー君は思いのほか分かっていないようだ。ー
予想外の言葉に柴崎は眉をひそめる。
自分の見立ては、はずれていないはずだ。
色と言いフリルの度合いといい、的確に当てていたはずなのに。
ー少年とは違うさ。ー
光のことを言っているのだろうか、とぼんやり思う。
普段は知的に見せてはいるが、直情的なところがある。
(若干興味あるかも。)
「あら、そうなの?」
ーそうさ。ー
でもこの相手に深追いするつもりはない。
確かめるなら自分で確かめるだけだし、手塚相手にそんなことをするつもりはない、と柴崎は思っている。
「でも据え膳食わぬはなんとやらっていうわよ。」
ーそれは相手次第だろう。ー
咲に色気がないという意味だろうか。
確かに大人の色気という意味ではいささか物足りないかもしれない。
だが、返ってきた言葉に、柴崎は溜息をついた。
ーあの子の楽しみ方は一番良く知っているつもりさ。ー
「惚気は結構。」
ー君だって楽しんでいるくせに。ー
「それは否定できないわ。」
ーちゃんと宿題できるかな・・・。ー
ずいぶんと楽しげな声に、プツリと通話終了ボタンを押した。
一段目
柴崎が乾燥を待つ咲に声をかけた。
にやりとした笑顔が様になりすぎていて怖い。
「あれ、どうしたの?」
咲はふいっと乾燥機に目を移した。
「あれ、とは。」
「とぼけない。」
「とぼけているわけではないのですが。」
「あんたの表情読み取れないほど、あたし鈍くないけど。」
どうやら逃げられないらしいと、咲は柴崎を恐る恐る見る。
「私の見立て、正しかったかしら?」
咲の頬にかぁっと赤が差し、ばっと顔を背ける。
「あら?
もしかして予想以上の好感触!?」
女子トークモードの柴崎に、咲はたじろぐ。
「違っ!」
反応してしまってからまずいと思う。
このままでは柴崎の思うツボだ。
「何が違うのかしら?」
妖艶な微笑みは狩人のごとし。
彼女がネタを見つけて放すはずがないのだ。
「笠原みたいなオチは辞めてよ?」
郁にどんなオチがあったのか咲には見当がつかないが、何やら柴崎にはずいぶん笑える話だったらしい。
思い出しただけで頬が微かに上がっている。
「気に入ってもらえた?
次の参考に聞かせなさいよ。」
ー大人な咲、見てみたいな。ー
耳元の囁きが、蘇る。
やわらかな吐息までも。
それだけで耳まで赤くなった。
「い、言えるわけないじゃないですか!」
ー大人って、どんな?ー
優しいのはいつも通りなのに、意地悪な囁きが、耳に吹き込まれた。
優しく髪を梳かれ、彼が触れているのは髪のはずなのに、手の熱が伝わってきた。
恥ずかしくて、震えてしまって、そんな子どもな自分がまた恥ずかしくて。
「言えないようなことになったの?
ん?
お姉さんに吐いちゃいなさい。」
「そんなことはっ!!」
「じゃあ教えなさいよ。」
にやにや笑いが止まらない柴崎によってどんどんドツボに嵌っていく。
大きな手が二の腕を辿って、頬に添えられた。
見上げた先で、いつの間にか慧は眼鏡をはずしていた。
逆光になって咲を見下ろす姿は、手塚をかばった日にも見た。
でもその時とは全く違う。
余裕の笑みは妙に色っぽくて、そう思えばまた動悸が速くなって。
近づいてくる顔にできるだけ強く目を閉じて、そして・・・
ピーッピーッピーッ
咲は我に返って乾燥機から洗濯物を取り出す。
「お、お先でしたッ!!!」
ばっと頭を下げるとその拍子に靴下を落とし、それを慌てて拾って、洗濯室から一目散に駆け出した。
「まーったく、可愛いんだから。」
まだしばらくかかりそうな洗濯機に肘をついて、柴崎は目を細めた。
「どう?
なかなかのチョイスだったでしょう?」
そう言えば電話の向こうで、男は笑った。
ー君は思いのほか分かっていないようだ。ー
予想外の言葉に柴崎は眉をひそめる。
自分の見立ては、はずれていないはずだ。
色と言いフリルの度合いといい、的確に当てていたはずなのに。
ー少年とは違うさ。ー
光のことを言っているのだろうか、とぼんやり思う。
普段は知的に見せてはいるが、直情的なところがある。
(若干興味あるかも。)
「あら、そうなの?」
ーそうさ。ー
でもこの相手に深追いするつもりはない。
確かめるなら自分で確かめるだけだし、手塚相手にそんなことをするつもりはない、と柴崎は思っている。
「でも据え膳食わぬはなんとやらっていうわよ。」
ーそれは相手次第だろう。ー
咲に色気がないという意味だろうか。
確かに大人の色気という意味ではいささか物足りないかもしれない。
だが、返ってきた言葉に、柴崎は溜息をついた。
ーあの子の楽しみ方は一番良く知っているつもりさ。ー
「惚気は結構。」
ー君だって楽しんでいるくせに。ー
「それは否定できないわ。」
ーちゃんと宿題できるかな・・・。ー
ずいぶんと楽しげな声に、プツリと通話終了ボタンを押した。
一段目