リクエストーifシリーズー
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不思議と怒りはなかった。
それはその2人が、お似合いだと思ったからかもしれない。
「バッカみてぇ。」
山本は呟いてから空を見上げた。
夜の公園には、人影はない。
ベンチに並ぶビールの缶と、自分だけを、明るい月が照らしている。
「手塚一士、かぁ・・・。」
勝ち目はどのくらいあるのだろう。
容姿端麗で、才気にあふれ、人望も厚い、尊敬する先輩と、自分。
明日には咲も職務に戻ってくると聞いた。
今夜、リセットしなければばならない。
「はぁー。」
「ずいぶん荒れているね。」
不意にかけられた声に驚く。
「驚かせたかな、すまない。」
穏やかな微笑みをたたえた、自分よりもいくらか年上に見える眼鏡の男だった。
「俺も隣で一杯、いいかな。」
「あ・・・どうぞ。」
空き缶を避けて座る場所を作る。
男は座ると手にしていたビールのプルタブをあけた。
「仕事でトラブルでもあったのか?」
答えられずにいると、男は察したのか、それ以上詮索しなかった。
「お互い大変だな。」
大人だ。
こんな大人だったら、手塚一士にも負けないだろう。
そう思うと小さな自分が情けなくなった。
「そう自暴自棄になるな。
いい男が台無しだぞ。」
「誰が・・・。」
男は優しく微笑んだ。
その目元が誰かに似ているような気がするが、誰かは思い出せない。
山本は大きく息を吐きだした。
だが胸のつかえはとれてはくれない。
「好きだった女が先輩と付き合っていたんです。」
気づけば口に出していた。
男は黙って聞いている。
「彼女の一番近くに居るのは俺だと思っていたのに・・・。」
男はふっと笑った。
「距離はいろんな物差しで測れるから。
その子にとって、お前は間違いなく、近くに居る仲間、なのだろう。」
その言葉はひどくしっくりくるもので、だからこそ辛い。
あと一歩で届きそうな距離に彼女はいるのだ。
誰よりも近いのは俺だ。
誰でもない。
手塚一士と話しているところなど、見ることさえ少ないと言うのに。
(隠していたのか・・・。)
「だがどうして付き合っていると分かったんだ?
彼女に言われたのか?」
その問いかけに俺は首をふる。
「見舞いに行った病室で抱き合っているのを見たんです。」
そう言うと男性は驚いたように目を見開いた。
それから眉間にしわを寄せて、少し考え、
「・・・それだけか?」
と言った。
「そうっすけど」
「何かの事故と言うこともあるだろう。」
「え?
だって抱き合うんですよ。」
「さぁ、どうかな。」
男はもう一缶開けたのか立ち上がる。
おかわりのつもりはないらしい。
「門限までには帰れよ。」
ひらりと振られた手に、なぜ彼は俺が門限のある場所、例えば図書館隊の寮に住んでいると気づいたんだろう、と思う。
でも追いかけるには酒がまわりすぎて面倒だった。
「変な奴。」
「あの、すみません。」
不意にかけられた声に振り返ると、空太刀がいた。
「体は大丈夫なのか。」
「はい。
先日はお騒がせして申し訳ありませんでした。」
深く頭を下げる。
そして、その手の中にある携帯を俺に差し出した。
「あの、電話、です。」
「・・・は?」
何を言っているのかよくわからない。
困ったような彼女の瞳に、俺は携帯を耳に当てた。
『光。』
響いてきた声に俺は眉をしかめる。
通話終了ボタンに指が無意識に伸びていた。
『切るな、切るとお前は弁解の余地を失うことになるぞ。』
いったい誰が誰に何のことを言っているのか、と聞きたくなるような言葉に、指を止める。
「・・・何のことだ。」
『お前、彼女と付き合っているのか。』
凄味の利いた声に、予想外の言葉に、携帯を取り落としそうになる。
いったいどこからどう情報が漏れたのだろうか。
携帯の持ち主を見ると、不思議そうな顔をしている。
何の電話かは知らないのかもしれない。
「んなわけないだろ!
人違いだ!」
『ほぉ・・・。
誰が誰を間違えたんだ?』
手塚は舌打ちをする。
「悪い、ちょっと借りるぞ。」
空太刀に断ると、どうぞどうぞ、と頷いたので、そのまま倉庫の裏へ回る。
「熱出したあいつが、俺の声をお前だと間違えたんだ。
クソ馬鹿兄貴ッ。」
小声でそう訴えると、一瞬の空白の後。
『くっ・・・あはははは!』
盛大な笑い声が聞こえ、無性に腹が立ったから切ってやった。
それから、小さな心遣いが呼んだ一連の誤解に、ため息をついた。
(いったいどこから漏れたんだ・・・。)
倉庫裏から出て、さっき分かれたところまで行くと、空太刀が待っていた。
「悪いな。」
返すと、彼女は首を振った。
「いいえ。
・・・慧さんの電話、たまには出てあげてくださいね。」
起きた時、彼女は俺に抱きついたことなどすっかり忘れていた。
だから電話の意味もよくわからなかったのだろう。
ただ、俺が兄貴からの電話に出ないから、何としてでも話したいことがあって、彼女にかけてきた、くらいにしか考えていないに違いない。
「・・・もう一生出ない。」
「えっ!?」
もし、電話が鳴ったら
それはその2人が、お似合いだと思ったからかもしれない。
「バッカみてぇ。」
山本は呟いてから空を見上げた。
夜の公園には、人影はない。
ベンチに並ぶビールの缶と、自分だけを、明るい月が照らしている。
「手塚一士、かぁ・・・。」
勝ち目はどのくらいあるのだろう。
容姿端麗で、才気にあふれ、人望も厚い、尊敬する先輩と、自分。
明日には咲も職務に戻ってくると聞いた。
今夜、リセットしなければばならない。
「はぁー。」
「ずいぶん荒れているね。」
不意にかけられた声に驚く。
「驚かせたかな、すまない。」
穏やかな微笑みをたたえた、自分よりもいくらか年上に見える眼鏡の男だった。
「俺も隣で一杯、いいかな。」
「あ・・・どうぞ。」
空き缶を避けて座る場所を作る。
男は座ると手にしていたビールのプルタブをあけた。
「仕事でトラブルでもあったのか?」
答えられずにいると、男は察したのか、それ以上詮索しなかった。
「お互い大変だな。」
大人だ。
こんな大人だったら、手塚一士にも負けないだろう。
そう思うと小さな自分が情けなくなった。
「そう自暴自棄になるな。
いい男が台無しだぞ。」
「誰が・・・。」
男は優しく微笑んだ。
その目元が誰かに似ているような気がするが、誰かは思い出せない。
山本は大きく息を吐きだした。
だが胸のつかえはとれてはくれない。
「好きだった女が先輩と付き合っていたんです。」
気づけば口に出していた。
男は黙って聞いている。
「彼女の一番近くに居るのは俺だと思っていたのに・・・。」
男はふっと笑った。
「距離はいろんな物差しで測れるから。
その子にとって、お前は間違いなく、近くに居る仲間、なのだろう。」
その言葉はひどくしっくりくるもので、だからこそ辛い。
あと一歩で届きそうな距離に彼女はいるのだ。
誰よりも近いのは俺だ。
誰でもない。
手塚一士と話しているところなど、見ることさえ少ないと言うのに。
(隠していたのか・・・。)
「だがどうして付き合っていると分かったんだ?
彼女に言われたのか?」
その問いかけに俺は首をふる。
「見舞いに行った病室で抱き合っているのを見たんです。」
そう言うと男性は驚いたように目を見開いた。
それから眉間にしわを寄せて、少し考え、
「・・・それだけか?」
と言った。
「そうっすけど」
「何かの事故と言うこともあるだろう。」
「え?
だって抱き合うんですよ。」
「さぁ、どうかな。」
男はもう一缶開けたのか立ち上がる。
おかわりのつもりはないらしい。
「門限までには帰れよ。」
ひらりと振られた手に、なぜ彼は俺が門限のある場所、例えば図書館隊の寮に住んでいると気づいたんだろう、と思う。
でも追いかけるには酒がまわりすぎて面倒だった。
「変な奴。」
「あの、すみません。」
不意にかけられた声に振り返ると、空太刀がいた。
「体は大丈夫なのか。」
「はい。
先日はお騒がせして申し訳ありませんでした。」
深く頭を下げる。
そして、その手の中にある携帯を俺に差し出した。
「あの、電話、です。」
「・・・は?」
何を言っているのかよくわからない。
困ったような彼女の瞳に、俺は携帯を耳に当てた。
『光。』
響いてきた声に俺は眉をしかめる。
通話終了ボタンに指が無意識に伸びていた。
『切るな、切るとお前は弁解の余地を失うことになるぞ。』
いったい誰が誰に何のことを言っているのか、と聞きたくなるような言葉に、指を止める。
「・・・何のことだ。」
『お前、彼女と付き合っているのか。』
凄味の利いた声に、予想外の言葉に、携帯を取り落としそうになる。
いったいどこからどう情報が漏れたのだろうか。
携帯の持ち主を見ると、不思議そうな顔をしている。
何の電話かは知らないのかもしれない。
「んなわけないだろ!
人違いだ!」
『ほぉ・・・。
誰が誰を間違えたんだ?』
手塚は舌打ちをする。
「悪い、ちょっと借りるぞ。」
空太刀に断ると、どうぞどうぞ、と頷いたので、そのまま倉庫の裏へ回る。
「熱出したあいつが、俺の声をお前だと間違えたんだ。
クソ馬鹿兄貴ッ。」
小声でそう訴えると、一瞬の空白の後。
『くっ・・・あはははは!』
盛大な笑い声が聞こえ、無性に腹が立ったから切ってやった。
それから、小さな心遣いが呼んだ一連の誤解に、ため息をついた。
(いったいどこから漏れたんだ・・・。)
倉庫裏から出て、さっき分かれたところまで行くと、空太刀が待っていた。
「悪いな。」
返すと、彼女は首を振った。
「いいえ。
・・・慧さんの電話、たまには出てあげてくださいね。」
起きた時、彼女は俺に抱きついたことなどすっかり忘れていた。
だから電話の意味もよくわからなかったのだろう。
ただ、俺が兄貴からの電話に出ないから、何としてでも話したいことがあって、彼女にかけてきた、くらいにしか考えていないに違いない。
「・・・もう一生出ない。」
「えっ!?」
もし、電話が鳴ったら