リクエストーifシリーズー
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「一度目を覚ましたんだ。
すぐに寝てしまったんだが・・・。」
佐々木先生の言葉に、そうですか、と返し、ベットを覗く。
別の患者が来たのか、佐々木先生は俺だけを残して向こうに行ってしまった。
「大丈夫か。」
返事はないだろうと思っていた。
なのに、彼女は目を開けた。
ぼんやりとした瞳が、ぼんやりと手塚を捕えた。
そして、その唇が、驚きの言葉を紡ぐ。
「慧、さん・・・」
気づいた時には細い腕が首に回っていた。
咄嗟に体を離そうとして、すんでで堪えた。
抱き上げた時の細さを思い出したからだ。
俺の力でつき放せば、こいつは折れるかもしれない、と。
そう言えば、こいつはド近眼だった、と思いだす。
一度目を覚ましたと聞いたから、コンタクトは外したのだろう。
向こうで部屋のドアが開く音がした。
そう言えば、笠原も様子を見に来たいと言っていたな、と思いだす。
首筋に、ぽたりと、しずくが触れた。
俺は手をさまよわせた挙句、片手を肩に回し、もう片手でその頭を撫でた。
昔、大切な誰かが、小さな俺をそうしてあやしたように。
「今は、寝ろ。」
そう言うと不思議と彼女の体から力が抜けて行った。
カーテンが開く音がしたが、今首を動かせないので諦める。
ここで起きられて、人違いだと思うのは、この子にはあまりに居たたまれないだろうから。
寝息を確認してから、腕をはがす。
案外すぐにはがれたそれは、あどけない、でも寂しげな顔によく似た弱さだった。
布団に入れてから、ようやく俺は振り返る。
そして何故だか予想以上に多い人数に、自分の顔がひきつるのが分かる。
「あ、いやね、ほら・・・
夕食行くついでにと思って柴崎と2人で来たんだけど、中に入ったら小牧教官と山本がいてね。」
目をそらして早口に言うのは笠原。
そう、こいつだけのはずだったのだ。
言いくるめれば、なんとかなる、笠原だけのはずだった。
それなのに。
「珍しく山本が捻挫したのを連れてきたんだ。
毬江ちゃんに聞かれた時のために、一応様子を見ようと思っただけ。
まさか手塚が来ているとは知らなかったよ。」
淡く笑うのは小牧二正だ。
「ま、お邪魔みたいだから、行きましょ。」
にやりと笑う柴崎の言葉に、3人が俺に背を向ける。
カーテンが閉まる音を聞いて、俺は我に返った。
慌てて追いかけるも、カーテンから出ると、3人の姿はない。
ぱたりと静かに医務室のドアが閉まっただけだった。
「どうかしたかい?」
不思議そうな顔で聞いてくる佐々木先生に、俺は首を振るしかなかった。
もし、いろいろ間違われてしまったら