リクエストーifシリーズー
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「手塚と空太刀はここに待機。」
訓練でバディを組むことはよくあった。
狙撃組の新人2人をセットにすると、上官も動きやすいのかもしれない。
「了解。」
「了解。」
笠原と組むよりも、空太刀との方が動きやすい。
もちろん、俺ももう、笠原がダメだとは思ってはいない。
学ぶべきところがたくさんあることも、良くよく分かっている。
ただ、空太刀は馬鹿なことしないし、無茶もない。
理論もきちんと踏まえ、上官の言うことを正しく聞き取り、期待していた以上を返す。
こちらの意図を良くくみ取ってくれるし、呼吸もよく合う。
5つも下だと言うことを忘れてしまうほど。
笠原が嫌だと言うわけではない。
ただ、ただ。
(こいつが同期だったら、どんなに楽だったか・・・。)
過去の様々な失態を思い返す。
もちろん、俺が助けたのと同じだけではないが、笠原に助けられたこともある。
単純にこんな同期と働ける山本がうらやましい。
ただ、それだけだ。
ちらりと隣に座り、銃を手に持つ空太刀を見下ろす。
心持ち、いつもより覇気がないように見えるのは、なぜだろうか。
人には人の事情があるだろうから、それほどの深入りは良くない。
夜更かしして毬江ちゃんとメールしていたのかもしれないし、本を読んでいたのかもしれない。
足を引っ張っているわけでもないのだから、そんな些細なことは声をかけるべきではないだろう。
それに空太刀に限って体調管理不足で迷惑をかけることなどないはずだ。
遠くから戦闘音が近づいてくる。
もちろん訓練だから模擬だ。
『手塚、空太刀、応援頼む!』
無線から声が飛び込んできた。
「了解!」
返事をすると空太刀を見る。
「応援だ。
後に続け。」
鋭い目が、ヘルメットの下から俺を見上げた。
「了解。」
短い返事に、やはり空太刀に限って覇気がないはずがなかった、と思う。
銃を抱え、走り出る。
空太刀もそれを追って立つ気配があったが。
バタッ
音に振り返ると、空太刀がうつぶせに倒れている。
「おいっ!」
転んだのか、と思ったが、何やら様子がおかしい。
仰向けにすると、ぐらりと首が揺れた。
まるで意識がない。
そう、意識がないのだ。
「空太刀!!」
肩を叩いても反応がない。
苦しそうな呼吸と、赤い顔に額に触れると、ひどい熱だ。
手塚は迷ったが、幸い今回は訓練と言うことで、無線を取った。
「空太刀が高熱で意識を失いました。」
『はぁ?
ったくあの馬鹿。』
無線の向こうで進藤が呆れた声を出した。
「医務室に届け次第、戻ります。」
『頼んだぞ。』
無線を切ると、手塚は一応もう一度、咲の頬を軽く叩く。
「おい、空太刀、空太刀!」
やはり反応はない。
仕方ないので銃を置き、背中とひざ裏に手を回し、持ち上げる。
腕の中にしっくりとくる体。
背丈は笠原よりも少し小さいくらいで、女にしては高い。
しかし体重の方はずいぶんと軽いように思う。
(ちゃんと食ってるのか?)
そんなことを考えながら医務室に行くと、先生は思ったよりも慌てていた。
どうやら高熱と、熱中症とを併発しているらしい。
「おい、もういいぞ。」
先生の声に、はっと我に帰る。
目の前で空太刀は訓練着を順に脱がされていくところだった。
熱中症なのだ、当たり前だろう。
俺は慌てて医務室から出て、訓練へと戻った。
頬が赤いのは暑さのせいに決まっていると、言い聞かせて。
もし、倒れてしまったら