それから
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堂上は隣を見る。
今日のバディは咲で、それもどこか機嫌が良いように見える。
堂上はといえば、まさか自分が大学時代の研修で図書カードを初めて作った相手と組む日が来るとは、である。
(こいつはそんなこと覚えちゃいないだろうけど。)
横顔はすっかり少女から大人の女性になり、堂上よりも僅かに身長も高くなったものの、あの頃のままの伏し目がちの目元に思わず小さく微笑んだ。
ランドセルを背負った孤独な少女は、本を傍らに、本を守るために、強くなった。
笑顔を浮かべるようになり、大切な仲間と出会った。
図書館という、堂上たちが守る世界の中で。
同じく図書館を守る一員として。
あの小さな女の子が立派な大人になっているのだから、自分もずいぶん年を取ったものだと思う。
(あの日からかれこれ20年近く経つのか。)
彼女となぜバディを組んでいるかと言えばもちろん、彼女が堂上と同じ進藤班のメンバーだからに他ならない。
この驚きを隠せない班編成が組まれたのは、つい3日前のことだった。
「空太刀?」
「は?
何でお前っ」
思わず声を出したのは山本と進藤だった。
朝礼時、目を瞬かせる面々の前で咲は頭を下げた。
「本日付で特殊部隊に異動になりました。
三正の空太刀です。
よろしくお願いいたします。」
涼やかなその様子に、一同開いた口が塞がらなかった。
「そんなわけで、空太刀が戻ってきちまった。
班はそうだなぁ・・・
進藤のとこでいいだろ。」
進藤率いる進藤班は、副班長の宮島、小牧、堂上の4人班だった。
玄田の判断は狙撃の関係で咲と組んだことの多い進藤や小牧がいることからの配属だろう。
「本日の連絡は以上。」
玄田が朝礼を閉めると、咲は班員の元へと向かう。
もともと親しかった3人はなんとも言えない顔をしていた。
別の班の山本と手塚はと言えば、横目でその様子をうかがっている。
「本日からよろしくお願」
「何で戻ってきた!?」
咲の言葉が終わらぬうちに、痺れを切らして口を開いたのは進藤だった。
「なんでと言われましても・・・
情報部はやはり向かないかと思いまして。」
「はぁ!?」
「まぁまぁ、落ち着いてください。」
「これが落ち着いていられるか!」
「これが噂の進藤パパか。」
「黙れ宮島!」
やはり涼しい顔の咲に青筋をたてる進藤をなだめる小牧。
面白そうにからかう宮島は進藤の同期だ。
進藤班で進藤と宮島の軽口の応酬は常に行われていることだった。
進藤は深い溜め息をついた。
「こうなったら仕方ねぇ・・・。
だがあんな馬鹿な真似は二度とするんじゃねぇぞ!」
あんな、というのはもちろん先日の自分の頭を撃とうとした行為のことだ。
未だに命の駆け引きをする可能性もある特殊部隊に戻ってくる以上、同じような状況にたたされることもないとは言い切れない。
咲はただ苦笑を浮かべていて、進藤に返事!と怒鳴られ、それに従い、はいはい、と頷いた。
(確かにそうだ。
空太刀が自分の命を投げ出すなど許せん。
・・・だがこいつがもし、郁を撃っていたら?)
もしかしたら、自分は一生、咲に対してやりきれない思いを抱え続けていたかもしれない、と思う。
例えそれが、イベントの参加者の命を救うためにーもちろん郁の命も救うためにー郁の手を撃ったとしてもだ。
「なんでしょうか?」
視線を感じ、訝しげに見つめてくる咲に、堂上は少し考えてから口を開く。
あの件以来、二人で話す時間など今までなかったのだ。
「なんだ、その・・・あれだ・・・。」
堂上は頭を掻いた。
礼を言うのはおかしな話だ。
郁を撃たぬ代わりに恋人を撃つことを迫られ、結局自分に銃口を向けたのだから。
だからと言って謝罪をするのも彼女は望まないだろう。
なにか言わなければならないとわかってはいるものの、堂上も堂上で、郁が助かることを一番に望んでしまっただけに、言葉を選びづらかった。
堂上はどうしようもなく、視線をそらした。
「あいつが・・・絶対に元気な子を無事に産むと言っていた。」
結局、出てきたのはそんな言葉だった。
そんな言葉しか出てこなかった。
ちらりと咲を盗み見ると、キョトンとしてから微笑んだ。
「楽しみですね。
・・・とても、とても。」
「・・・ああ。」
咲は再び視線を前に戻した。
今日どこか機嫌が良いのは、バディが堂上だからだ。
図書カードを作ってくれた彼の隣に立てることが、シンプルに嬉しかった。
(堂上一正は私に図書カードを作ったことなんて覚えてはいないだろうけれど。)
あの日、咲の目の前にいたのは王子様ではなく図書隊員の卵だった。
無愛想で、それでいて心優しいお兄さん。
カードはラミネートのものからハードタイプに変わった。
彼がくれた赤色の図書カードケースは、すっかり草臥れてしまった。
でもどちらも、今でも引出しの中に大切に仕舞っている。
ひっそりと
今日のバディは咲で、それもどこか機嫌が良いように見える。
堂上はといえば、まさか自分が大学時代の研修で図書カードを初めて作った相手と組む日が来るとは、である。
(こいつはそんなこと覚えちゃいないだろうけど。)
横顔はすっかり少女から大人の女性になり、堂上よりも僅かに身長も高くなったものの、あの頃のままの伏し目がちの目元に思わず小さく微笑んだ。
ランドセルを背負った孤独な少女は、本を傍らに、本を守るために、強くなった。
笑顔を浮かべるようになり、大切な仲間と出会った。
図書館という、堂上たちが守る世界の中で。
同じく図書館を守る一員として。
あの小さな女の子が立派な大人になっているのだから、自分もずいぶん年を取ったものだと思う。
(あの日からかれこれ20年近く経つのか。)
彼女となぜバディを組んでいるかと言えばもちろん、彼女が堂上と同じ進藤班のメンバーだからに他ならない。
この驚きを隠せない班編成が組まれたのは、つい3日前のことだった。
「空太刀?」
「は?
何でお前っ」
思わず声を出したのは山本と進藤だった。
朝礼時、目を瞬かせる面々の前で咲は頭を下げた。
「本日付で特殊部隊に異動になりました。
三正の空太刀です。
よろしくお願いいたします。」
涼やかなその様子に、一同開いた口が塞がらなかった。
「そんなわけで、空太刀が戻ってきちまった。
班はそうだなぁ・・・
進藤のとこでいいだろ。」
進藤率いる進藤班は、副班長の宮島、小牧、堂上の4人班だった。
玄田の判断は狙撃の関係で咲と組んだことの多い進藤や小牧がいることからの配属だろう。
「本日の連絡は以上。」
玄田が朝礼を閉めると、咲は班員の元へと向かう。
もともと親しかった3人はなんとも言えない顔をしていた。
別の班の山本と手塚はと言えば、横目でその様子をうかがっている。
「本日からよろしくお願」
「何で戻ってきた!?」
咲の言葉が終わらぬうちに、痺れを切らして口を開いたのは進藤だった。
「なんでと言われましても・・・
情報部はやはり向かないかと思いまして。」
「はぁ!?」
「まぁまぁ、落ち着いてください。」
「これが落ち着いていられるか!」
「これが噂の進藤パパか。」
「黙れ宮島!」
やはり涼しい顔の咲に青筋をたてる進藤をなだめる小牧。
面白そうにからかう宮島は進藤の同期だ。
進藤班で進藤と宮島の軽口の応酬は常に行われていることだった。
進藤は深い溜め息をついた。
「こうなったら仕方ねぇ・・・。
だがあんな馬鹿な真似は二度とするんじゃねぇぞ!」
あんな、というのはもちろん先日の自分の頭を撃とうとした行為のことだ。
未だに命の駆け引きをする可能性もある特殊部隊に戻ってくる以上、同じような状況にたたされることもないとは言い切れない。
咲はただ苦笑を浮かべていて、進藤に返事!と怒鳴られ、それに従い、はいはい、と頷いた。
(確かにそうだ。
空太刀が自分の命を投げ出すなど許せん。
・・・だがこいつがもし、郁を撃っていたら?)
もしかしたら、自分は一生、咲に対してやりきれない思いを抱え続けていたかもしれない、と思う。
例えそれが、イベントの参加者の命を救うためにーもちろん郁の命も救うためにー郁の手を撃ったとしてもだ。
「なんでしょうか?」
視線を感じ、訝しげに見つめてくる咲に、堂上は少し考えてから口を開く。
あの件以来、二人で話す時間など今までなかったのだ。
「なんだ、その・・・あれだ・・・。」
堂上は頭を掻いた。
礼を言うのはおかしな話だ。
郁を撃たぬ代わりに恋人を撃つことを迫られ、結局自分に銃口を向けたのだから。
だからと言って謝罪をするのも彼女は望まないだろう。
なにか言わなければならないとわかってはいるものの、堂上も堂上で、郁が助かることを一番に望んでしまっただけに、言葉を選びづらかった。
堂上はどうしようもなく、視線をそらした。
「あいつが・・・絶対に元気な子を無事に産むと言っていた。」
結局、出てきたのはそんな言葉だった。
そんな言葉しか出てこなかった。
ちらりと咲を盗み見ると、キョトンとしてから微笑んだ。
「楽しみですね。
・・・とても、とても。」
「・・・ああ。」
咲は再び視線を前に戻した。
今日どこか機嫌が良いのは、バディが堂上だからだ。
図書カードを作ってくれた彼の隣に立てることが、シンプルに嬉しかった。
(堂上一正は私に図書カードを作ったことなんて覚えてはいないだろうけれど。)
あの日、咲の目の前にいたのは王子様ではなく図書隊員の卵だった。
無愛想で、それでいて心優しいお兄さん。
カードはラミネートのものからハードタイプに変わった。
彼がくれた赤色の図書カードケースは、すっかり草臥れてしまった。
でもどちらも、今でも引出しの中に大切に仕舞っている。
ひっそりと
