それから
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互いに睨むように見つめ続ける。
男は小牧と山本、咲は慧に動きを奪われたまま。
「でも」
先に口を開いたのは咲だった。
「例え相対する立場で親を亡くし、私達を仇だと思っていたとしても、私は貴方を殺したくない。」
射抜くような瞳に男は息を飲んだ。
一瞬、自分と同じだと思った彼女は、全くの別人だった。
激情を秘める瞳は同じでも、その瞳が写し、感じてきたものは全く違っていた。
「私は、必死に憎しみに耐えた人を知っている。
私はその人の意志を継ぐと決めた。」
真っ直ぐと、折れることのない思いが突き刺さる。
それは自分や今は亡き両親を傷つけた銃弾よりも、痛い。
何よりも心が痛い。
男はぎりりと歯をならした。
「やつらなんて勝手だ!
あいつらが思想のために好き勝手したから父親は死んだ!
父親だけじゃない!
みんな苦しんで死んでいったんだ!
思想のため?
ふざけるな!
人の命をなんだと思っている!」
咲は首を振った。
「私はそれでもここを守ると決めた。
両親が命をかけたこの図書館を、私も命をかけて守ると。
誰もが抑圧されることなく全ての本を愛する日が来るためなら、私は死んでも構わない。
両親の死は、無駄にはしない。」
彼女の言葉に嘘偽りがないことは、先程までの行動で明らかで、その志の高さは誰にも劣らないだろう。
「ふざけたことを言うな!
なんでわからないんだ!
何を教え込まれたのか知らないが、お前も同じ、所詮は上のやつらの駒なんだぞ!
血も涙も流さないやつらの!」
男の血走った目が、慧を睨み付ける。
「人の痛みなど分からないそいつらの!!」
慧は表情ひとつ変えずに男を冷たく見下ろしていた。
男の目に、じわりと涙が浮かぶ。
「目を覚ませ!!!」
絞り出されるような叫びは、ひどく悲しい。
「山本。」
小牧が呆然としている山本に声をかけ、男を連れていくのを手伝うように合図した。
立たされる男から、咲は目をそらすことはない。
「確かに駒かもしれない。」
一歩間違っていれば、咲も彼と同じ道を歩んでいたことだろう。
孤独に、人を傷つけることを目的とした人生を。
それだけのために生きる人生を。
(彼は私だ。
もう一人の、私。)
彼の心の内を思うと、ひどく悲しい。
その苦しみが分からぬはずがない。
体の内に沸々と、冷えぬ怒りを抱くのは、咲も同じなのだ。
(違うけれど同じで、同じだけれど違う。)
咲は俯いた。
その唇は震えていた。
肩を支える慧の手が、ぎゅっと強くなる。
彼らは決して、血も涙もない人達ではない。
稲嶺も慧も、人一倍優しく、人一倍強く、そして人一倍賢いから、血も涙も流さぬ人となったのだ。
そんな優しい人だから、その人達がいるから、その人達が守るから、この図書館が何よりも大切なのだ。
細く息を吐き出した後、咲は再び男を見た。
真っ直ぐと、見た。
「私は無情にならねばならない人達とは違って、血も涙も流せるから。
だから、だから必ず、叶える。
私たちのような、悲しい子どもがいなくなるように。
幸せを抱えて図書館(ここ)に集えるように。」
男はしばらくしてから俯いて、そうか、とかすれる声で呟いた。
「父よりも1日長く生きた。
もう何も、思い残すことはない。」
その言葉が、咲の心に妙に刺さった。
涙を流してはいけない人達の苦しみを知っているから
男は小牧と山本、咲は慧に動きを奪われたまま。
「でも」
先に口を開いたのは咲だった。
「例え相対する立場で親を亡くし、私達を仇だと思っていたとしても、私は貴方を殺したくない。」
射抜くような瞳に男は息を飲んだ。
一瞬、自分と同じだと思った彼女は、全くの別人だった。
激情を秘める瞳は同じでも、その瞳が写し、感じてきたものは全く違っていた。
「私は、必死に憎しみに耐えた人を知っている。
私はその人の意志を継ぐと決めた。」
真っ直ぐと、折れることのない思いが突き刺さる。
それは自分や今は亡き両親を傷つけた銃弾よりも、痛い。
何よりも心が痛い。
男はぎりりと歯をならした。
「やつらなんて勝手だ!
あいつらが思想のために好き勝手したから父親は死んだ!
父親だけじゃない!
みんな苦しんで死んでいったんだ!
思想のため?
ふざけるな!
人の命をなんだと思っている!」
咲は首を振った。
「私はそれでもここを守ると決めた。
両親が命をかけたこの図書館を、私も命をかけて守ると。
誰もが抑圧されることなく全ての本を愛する日が来るためなら、私は死んでも構わない。
両親の死は、無駄にはしない。」
彼女の言葉に嘘偽りがないことは、先程までの行動で明らかで、その志の高さは誰にも劣らないだろう。
「ふざけたことを言うな!
なんでわからないんだ!
何を教え込まれたのか知らないが、お前も同じ、所詮は上のやつらの駒なんだぞ!
血も涙も流さないやつらの!」
男の血走った目が、慧を睨み付ける。
「人の痛みなど分からないそいつらの!!」
慧は表情ひとつ変えずに男を冷たく見下ろしていた。
男の目に、じわりと涙が浮かぶ。
「目を覚ませ!!!」
絞り出されるような叫びは、ひどく悲しい。
「山本。」
小牧が呆然としている山本に声をかけ、男を連れていくのを手伝うように合図した。
立たされる男から、咲は目をそらすことはない。
「確かに駒かもしれない。」
一歩間違っていれば、咲も彼と同じ道を歩んでいたことだろう。
孤独に、人を傷つけることを目的とした人生を。
それだけのために生きる人生を。
(彼は私だ。
もう一人の、私。)
彼の心の内を思うと、ひどく悲しい。
その苦しみが分からぬはずがない。
体の内に沸々と、冷えぬ怒りを抱くのは、咲も同じなのだ。
(違うけれど同じで、同じだけれど違う。)
咲は俯いた。
その唇は震えていた。
肩を支える慧の手が、ぎゅっと強くなる。
彼らは決して、血も涙もない人達ではない。
稲嶺も慧も、人一倍優しく、人一倍強く、そして人一倍賢いから、血も涙も流さぬ人となったのだ。
そんな優しい人だから、その人達がいるから、その人達が守るから、この図書館が何よりも大切なのだ。
細く息を吐き出した後、咲は再び男を見た。
真っ直ぐと、見た。
「私は無情にならねばならない人達とは違って、血も涙も流せるから。
だから、だから必ず、叶える。
私たちのような、悲しい子どもがいなくなるように。
幸せを抱えて図書館(ここ)に集えるように。」
男はしばらくしてから俯いて、そうか、とかすれる声で呟いた。
「父よりも1日長く生きた。
もう何も、思い残すことはない。」
その言葉が、咲の心に妙に刺さった。
涙を流してはいけない人達の苦しみを知っているから
