それから
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「次は外さねぇぞ」
男がもう一度構える。
自分を撃てとは言ったものの、この男から参加者を守れるのは自分しかいない。
もし動けなくなった隙に参加者に銃を向けられることを考えると、そう易々と撃たれるわけにもいかない。
「咲さん!」
千鶴の悲鳴のような声が聞こえた。
男がニヤリと笑う。
なぜ笑ったのかが分からぬ咲ではない。
「止めなさい」
咲が銃を構える。
「俺を撃てばいい」
男は咲の言葉を繰り返し、嘲った。
そして参加者の方へと歩み寄る。
千鶴を庇うように立つ郁を睨み付けた。
郁も怯むことなく男を睨む。
「どけ」
「誰が」
舌打ちをすると郁の米神に銃を押し当てた。
そして両手を拘束すると咲の方に歩み寄る。
「彼女を放せ」
「お前が撃てば自由にしてやる。
撃つのはどこでもいいんだぞ?
だが俺が撃てばこいつは死ぬ」
ぐりっと押し付けられる銃口に郁は思わず目を閉じた。
それを見た咲は微かに顔を歪めた。
咲達は守られ、守っているのだ。
銃を使われず、使わないことで、良化委員と己達の命を。
今では銃器の持ち出しでさえ隊長の許可がいる。
発砲など言わずもがなだ。
それを破れば何をされるか。
世間から何を言われるか。
「目的は銃規制?」
「黙れ!早く撃て!」
この新しい掟を作るために奔走した人を知っている。
その苦労を知っている。
咲が撃つということは、その掟に逆らうということ。
自ら逆らい、他人を傷つけるということ。
それは、慧の思いを踏みにじることになる。
だが掟に逆らわなければ、目の前の大切な先輩の命はどうなる?
ごりごりと郁の米神に銃口が押し付けられる。
泣きそうに歪められる郁の顔。
県展以来のやり取りに咲は困惑する。
それでも。
「早く!
殺されてもいいのか?」
咲は乾いた唇を舐め、口を開いた。
「手を……手を、あげて……ください」
「咲さんっ!」
千鶴がまた叫ぶ。
そんな彼女の肩を、麻子が顔を歪めながら押さえていた。
郁が震えながらそろそろと手をあげる。
咲が撃った。
悲鳴が沸き起こる。
銃弾は部屋の壁に穴を空けたのだ。
咲から郁と男を挟んで反対側に参加者たちがいる。
近くに弾が飛んできたのだから当然の反応だ。
郁は挙げていた手をへなへなと降ろした。
「……時間稼ぎをしようだなんて考えるな」
男は血走った目で咲を睨み付けた。
「的は何人でもいるんだ。
こいつを殺して」
「やめて!」
男が本気で郁を撃とうとする気配に叫ぶ。
「……わかったなら早く撃て!」
廊下から足音が聞こえた。
集まった職員の息を飲む音が聞こえる。
「何をしとるんだ!」
堂上の罵声に咲の肩が震える。
「見たらわかるだろ。
図書館の職員が妊婦を撃つんだよ」
男が嘲った。
「今までと同じだ、自己保身のために人を殺す!」
堂上が走り出す。
「動けば撃つ!」
郁に押し付けられた銃に、堂上は足を止めた。
「指くわえて見てるんだな!
さぁ撃て!」
堂上の視線が咲に刺さる。
「手を……」
か細い声で、咲は再び言う。
「おい、」
堂上が戸惑ったようにそれだけ言った。
「手を、あげて……」
お願いだから
