それから
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「咲さん!」
久しぶりに見る上司の妻は、表情が明るくなっていた。
「お久しぶりです。」
身重な彼女に歩み寄る。
「咲さんに言われたあと、夫と話し合ったんです。
ちゃんと、はぐらかさないで最後まで話し合ってって言って」
頬を染めて照れたように笑う。
「ちゃんと話さなきゃダメですね。
話したら解決することだってたくさんあるのに」
咲は頷いた。
「良かったです。
お二人が辛い思いをされなくて」
「ありがとうございます」
二人は前のように並んで図書館に向かう。
「そういえば、前話していた危険に飛び込んだお友達は、その後どうなったんですか?」
「もちろん無事でしたよ。
何年か前に結婚されました」
絵にかいたような美しい結婚式を思い出し、咲は微笑む。
「素敵」
「まるで恋愛小説みたいな素敵でドキドキのお話です」
二人が美男美女だから尚更か。
手塚夫妻も堂上夫妻もみんなそうだな、と思う。
どきどきはらはらの物語の末、見事ゴールインだ。
(素敵なハッピーエンド)
そんな咲の考えを読んだかのように千鶴が口を開く。
「恋愛小説はそこでおしまいだろうけれど、きっとこれからもっといろんなことがありますよ」
驚いて隣を見ると千鶴はにこりと笑う。
「結婚するまでって、それがとても大きなゴールに見えるけれど、結婚してみるとそこから新しいいろんなことが始まるんです。
全くの新しい物語が」
自分にはどちらも縁遠そうだと思ったのが顔に出たのだろうか。
「咲さん!
私、咲さんのお陰でうまくいったんですから、私にだってできることがあればいつでも相談してくださいね」
その思いは嬉しいが、だからと言ってなにかどうなるわけでもない。
「ありがとうございます」
咲は当たり障りなく笑顔を返した。
心に引っ掛かっている彼がいる限り、次はないと思っているし、引っ掛かっている彼と何かあることだってあり得ないと分かっていた。
お互い仕事が忙しく、他人の目もあるため、仕事以外での会話は皆無だ。
普通なら別れるか悩むところなのだろうが、そもそもそんな話をする相手でもない。
なぜなら咲と彼はただ付き合っているわけではないからだ。
図書館を守ると言う共通の目的があって、
図書館を何よりも愛する心があって、
そのためにどんな苦労も厭わないし、
命でさえ投げ出す覚悟でいる。
その強い覚悟が二人を繋いでいるように感じていた。
(本がなければ出会うことすらなかった。
図書館がなければきっと赤の他人だ)
だからそもそもの話、結婚どころではない。
図書館をどう守っていくのか、それこそが目下課題だ。
だから話すらできない慧に怒りはなかった。
図書館のためなのだから。
だからもし慧が図書館のために誰かと親しくなったり、関係を作ると言うなら咲も間違いなく応援する。
彼は副館長なのだ、彼の行動の効果は計り知れない。
そう咲の方とて、慧と同じ。
(副館長は、彼をおいて他にいない。
図書館を変えられるのは、彼だけだ)
「あれから手紙、見かけませんね」
山戸がポツリと言った。
「ないに越したことはないが……逆に気味悪いな」
土方の言葉に頷く。
「ただのいたずらだったんでしょうか」
山戸の言葉に咲は書類から目をあげた。
「……私にはそうは思えません」
二人の視線が咲に向けられる。
「理由は」
実際に銃規制がされてから時間がたった。
「5年です。
規制されてから5年。
犯人はなぜ、5年も待ったのでしょうか」
「なぜだ?」
土方の問いかけに、咲は首を振る。
「分かりません。」
でも、と言葉を続けた。
「きっと何か、理由があると思うんです。
殺してやりたいという思いを、5年も堪える理由が」
彼女の表情を見た二人は言葉をなくした。
お前もそれほどの何かを
